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朝5時30分の目覚ましが鳴る。

シーン

悠生「今日も、あいつはいないのか。もう、あいつは現れないのか・・・」



午前8時20分出社

いつものようにタイムカードを打つ。

?「申し訳ありませんでした。」

悠生「わっ!!びっくりした。」

背後からいきなり声を掛けられ驚いた。

声の主は幸だった。

悠生「怒ろうと思ったけど、先に謝られたら怒れないわ。休む時は俺にも連絡よこせな。」

幸「はい、すいませんでした。」

悠生「風邪は、もういいのか?」

幸「はい、すっかり良くなりました。」

幸が思っていたより元気だった事に、安堵以外の何かを感じた事に気が付いたが、平然を装う事に徹した。


幸「何か不思議な体験をしたんですよ。」

悠生「ほお?」

幸「お昼の時に話しますね。たぶん今日は休憩する時間は無いんで。」



やはり幸は仕事が速い。

いけないとは分かっているのに、村上さんと比べてしまう。

別に、村上さんの仕事が遅いわけではない。この女の仕事が速過ぎるだけだ。

もし、彼女が居なくなったら、とても2人では出来る仕事量ではない。本当に感謝すべきは彼女の存在なのかもしれない。

だが、決してそれは言葉には出さない。

会社というのは、微妙な関係のバランスの中に成り立っていて、それを変えてしまう事はリスクを伴う事もある。

単純に彼女が調子に乗ると、仕事がやりにくくなるという事に尽きるのだが。



今日もまた昼を迎え食後の一時

幸「とても不思議な体験をしたんですよ。」

悠生「うん。」

幸「一昨日悠さんと別れた後ぐらいから、少し熱っぽかったんです。」

悠生「うん。」

幸「家に帰るまで、誰かに跡をつけられてる感じがしたんですよ。」

悠生「変な男か?」

幸「いえ、それが女子高生なんです。」

悠生「ええ?」

幸「まあ気にしないで家に帰ったんですけど、やっぱり熱があって、その日はシャワーだけ済ませて布団に入ったんです。」

悠生「うん。」

幸「夜中に少し熱が辛くて目が覚めたんです。そしたら、部屋の隅にさっきの女子高生が居たんです。」

悠生「おい大丈夫か?」

幸「まあ聞いてください。で、その女子高生がとても心配そうな顔でこちらを見ているんです。私も起き上がろうとしたんですけど、金縛りにあっちゃって。で、その女子高生が近づいてきたんです。」

悠生「おいおい。」

幸「で、次の瞬間に彼女が私のおでこに手を当てたんです。その手がもの凄くひんやりしていて気持ちが良かったんです。で、その女子高生が小さい声で何か言ってるんです。

よおく聞いたら「心配しないで大丈夫だから」って言ってるんです。とても優しい声でした。」

悠生「う・・うん。」

幸「その後も何度か目が覚めたんですが、やっぱりその子は居て「大丈夫だから」と言って、私のおでこに冷たい手を当ててくれてたんです。で、夜が明けて今日の朝までそばに居てくれて、今日の朝には熱が下がっていました。その女の子は最後に「お礼はお兄ちゃんにしてあげて」と言って消えてしまいました。」


幸「そのお兄ちゃんって誰なんですかねえ?」

悠生「・・・さあ・・・?」

幸「あの子、可愛かったから、お兄ちゃんはイケメンかなあ?」

悠生「・・・さ、さあ、どうだろうね?」

その女子高生が誰なのかは察しがついたが・・・言うのはやめておこう・・・




その日の夜


ピロリロンピロリロン

光志「はい、もしもし。」

?「光ちゃんかい?」

光志「えっ誰?」

?「悠生君の彼女です。」

光志「幸ちゃんか?」

幸「よくわかったね!」

光志「何?飲みにでも行くの?」

幸「いやいやいや、私には彼氏がいますので。」

光志「そのくだりは、もういいから、用件は?」

幸「ちっ。」

光志「あっ、今舌打ちしやがったな。」

幸「髪を切ってほしいんだけど。」

光志「いつ?」

幸「明日なんだけど、夜って何時までやってる?」

光志「女性のお客さんだし、時間外なら午後8時までにお店に来てくれれば。」

幸「じゃあ、明日の8時までに行くね。」

光志「うん、わかった。ずいぶん急だね。」

幸「土曜日、悠さんとデートなんだ。」

光志「おおおっ!!!」

幸「まあ、嘘なんだけどね。」

光志「どっちだよ?」

幸「土曜日に悠さんと、お世話になった先輩のお墓参りに行くんだ。」

光志「へ~。」

幸「髪切って、正装で行こうと思って。」

光志「えらいじゃん。」

幸「まあ、君より3つ年上だから。」

光志「君はいちいち鼻に付く事を言うね。」

幸「それがチャームポイントだからね。」

光志「はいはい。じゃあ明日の午後8時までにお店に来て下さい。」

幸「じゃあ、頼みますね。」

光志「はいよ、それじゃおやすみ。」


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