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朝5時30分の目覚ましが鳴る
いつものように朝ごはんを作る。
・・・シーン
悠生「今日は出てこないのか?」
・・・シーン
悠生「気まぐれな奴だな・・・ご飯とお茶供えておくからな。」
・・・シーン
悠生「じゃあ、行ってきます。」
午前8時15分会社へ到着
女性社員「おはようございます。」
悠生「あっ!おはようございます。」
総務室の前に女性社員が立っていた。
女性社員「今日、佐倉さん風邪で休みの連絡がありましたので、手伝いに伺いました。」
悠生「えっ!!あの野郎俺に連絡よこせよな・・・」
女性社員「営業部村上です。今日1日宜しくお願いいたします。」
秀秋が気を遣ってくれたのか・・・
悠生「こちらこそ、宜しくお願いします。」
午前10時
村上さんが熱心にパソコンに向かっていた。
悠生「少し休憩入れなよ。はいコーヒー。」
村上「痛み入ります。」
悠生「難しい言葉使うね。」
村上「仁藤さん達、いつもこんな膨大な量こなしてるんですか!?」
悠生「今日は少ない方だよ。」
村上「え~!!仁藤さん達、大変ですね。」
悠生「そんなに苦にはならないよ。入力は別に嫌いじゃないし。幸の奴が入力速いから、いつも追いつこうと必死に入力してると、気が付くと慌ただしく1日が終わってる。」
村上「くすっ。」
悠生「どうかした?」
村上「いえ、仁藤さんって気まじめで気難しい感じの人なのかと緊張してました。」
悠生「そんな事ないよ。」
村上「佐倉さんの事を話し出したら、急に優しそうな顔になったから。」
悠生「そうかなあ?」
村上「大丈夫です。私、口堅いんで誰にも言いません。」
悠生「・・・仕事再開しようか。」
村上「はいっ。」ニコニコ
午後12時
悠生「村上さん、お昼は食堂だよね?」
村上「よくわかりましたね!」
悠生「だって弁当らしいものは持ってないもんね。」
村上「そうですよね。お昼代も馬鹿にならないです。」(苦笑)
悠生「弁当2つあるけど食べる?」
村上「えっ、いただいてよろしいんですか?」
悠生「ああいいよ。今日、幸が休みだし。」
村上「佐倉さんの分だったんですね。」
悠生「ああ。」
村上「ありがたく頂戴いたします。」
悠生「そんなにかしこまらなくても・・・」
村上「この卵焼き、めちゃくちゃ美味しいです!!」
悠生「喜んでもらえて嬉しいよ。」
村上「仁藤さん、料理得意なんですね。」
悠生「得意かどうかは疑問だけど、昔、居酒屋の厨房で働いてた事あるから。」
村上「そうだったんですね。その居酒屋さんってまだあるんですか?」
悠生「あるよ。えっと・・・この居酒屋だよ。」
ポケットからライターを取り出す。
村上「今度行ってみます。きっとメニュー美味しいんだろうなあ。」
悠生「ありがとう。」
村上「いえ。」
村上「私も仁藤さんみたいな優しい上司の下で働きたいなあ。」
悠生「秀秋は、悪い奴じゃないんだけど言葉がキツイからなあ・・。」
村上「そうですよね、私がドMだから対応できてるようなものの。」
悠生「・・・大丈夫、俺、口堅いんで誰にも言いませんから。」
村上「すいません。」クスクス
午後の仕事をこなしていき、気が付くと壁時計の針は午後6時を指し示していた。
悠生「村上さん、定時であがってね。」
村上「もう少し手伝いたいんですけど、仁藤さん残業にならないですか?」
ふと思えば、毎日残業だった。でも、然して苦痛を感じてはいなかった。
この仕事は自分にむいているのだと、改めて実感する。
悠生「大丈夫、残った分は明日幸にやらせるから。」
村上「明日休んだら?」
虚を突かれた。明日休まれる可能性など微塵も感じていなかった。
悠生「・・・明後日やらせる。」
村上「わかりました。ここだけまとめたらあがります。」
村上さんは仕事に切りがつき、片付けの準備を始めた。
悠生「今日はとても助かりました。ありがとう。」
村上「いえ、あまりお力になれなくてすいません。」
悠生「いや、そんなことはないよ。ありがとう。」
村上「いえ、こちらこそありがとうございました。久しぶりに楽しく充実した1日でした。」
悠生「そう言ってもらえると嬉しいよ。お疲れ様でした。」
村上「お先に失礼いたします。」
そう言うと村上さんは総務室を後にした。
悠生「まじめな子だな・・・さあ、もうひと踏ん張りするか。」
午後9時30分
悠生「今日はこのぐらいにするか、帰ろう。」
廊下の明かりは薄くなっているが、他の部署からは、まだ光が漏れている。
最近は、あまり遅くまでやらないようにしているが、遅くまで頑張っている社員には頭が下がる。
?「今日は少し遅かったみたいだな。」
不意に背後から声をかけられた。
悠生「おう秀!!今日は悪かったな。おかげで仕事進んだよ。ありがとう。」
秀秋「いや、あの子もいつも俺の下で大変だから、たまには気晴らしさせなきゃって思ってたところだから。」
悠生「また今度、飯奢らせてくれ。」
秀「ああ。それじゃおつかれさまな。」
悠生「おう、おつかれさま。」
秀秋とは困っている時はお互い助け合える。あいつは本当の意味で友人だといえる存在だと実感した。
会社を出て駅へ向かう。まだ、駅周辺は人も多く騒がしい。
改札口を通り、ホームへ向かう。
悠生「あっ。」
間一髪、間に合わず電車は駅を出発した。
悠生「しょうがない、次のを待つか。」
悠生「あいつが居ないと電車待つのも暇だな・・・」
自分の言葉に驚いた。
つい先週までは1人で帰路につき、そんな事を思いもしなかったのに。
たった数日だけなのに・・・
考えていた事を掻き消すように次の電車が到着した。
苛立ちながらも電車に乗り込む。
ガタンゴトンガタンゴトン
不思議と車内では、何を考えるでもなく冷静だった。
いつものように下車する。
まただ!!
不覚にも、あいつが手を振ってくれないと、寂しいなどと考えてしまった・・・
日中はいい。
忙しく、時間は気にする事もなく過ぎていく。
数週間前に妹が現れ、数日前から幸に少し親近感を覚え・・・友人に助けられ・・・
でも、本当は孤独であり1人だ。少し、人の温もりや優しさに触れ、人間らしい感情を思い出しただけ。ただそれだけの事だ。
いつもより早足で自宅に向かう。
悠生「ただいま。」
シーン
誰かいるはずもない。
こんな日は家事を済ませたら早く眠ろう。




