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大阪出張編 -10-

出発前夜

荷物を引越し屋のトラックに積み込むと部屋には何も無くなり寂しくなってしまった。


女将のお店に挨拶に行こう。


午後10時 居酒屋樹到着

女将「いらっしゃい・・・」

悠生「こんばんは・・・」


女将「なんとなく来るんじゃないかと思ってたわ。」

悠生「明日、東京へ帰ります。女将には本当にお世話になりました。」


女将「ええんよ・・・それに。」

悠生「?」


女将「少し、昔話でもしようか・・・」

悠生「うん。」


女将「大阪で生まれた女と東京で生まれた男が東京で出会ったお話・・・」

悠生「うん。」

女将「二人は運命で結ばれた二人だったんよ。お互いに惹かれあった二人が恋に落ちたのは一瞬だった。二人は愛し合い、結婚をお互いの両親に報告した。」

悠生「うん。」

女将「両方の親とも大反対だった。」

悠生「・・・何で?」

女将「女は大阪では由緒ある料亭の1人娘、男は東京で有名な寿司屋の1人息子・・・その二人が結ばれるという事は、どちらかの店は後継ぎが居なくなる。」

悠生「他の人が後を継いだらダメなの?」


女将「・・・私もそう思った・・・でもダメみたいなんよね。」

悠生「・・・」

女将「ある日、女はその男の前から消えた・・・」

悠生「・・・何で?」

女将「自分の愛した人が苦しむのを見たくなかったんやろね。」

悠生「・・・」


女将「結局、お互い強情で自分の家を継ぐ事はなかった。」

悠生「何で・・・」

女将「お互いに相手を傷付けてしまった事を悔み続けたんよ。」

悠生「・・・」


女将「それと、別れた後に女は知ったんよ・・・その男の子供を身ごもっていた事を・・・」

悠生「・・・」

女将「最後の反抗だったんよ、女は家族に行方を告げず消えた・・・」

悠生「なんか悲しい話だね・・・」


女将「男は東京で、女は大阪でお互い飲食という世界で生き続ける道を選んだ。」

悠生「うん。」

女将「懺悔の気持ちからか、女はそのお店に愛した男の名前を付け一生を共にした。」

悠生「・・・」

女将「男も同じ気持ちからか、一生お互いが一緒に居られるようにお互いの名前を繋げ店の名前にした。」


悠生「偶然なんだけどさ、俺似たような話をしてくれた人を知ってる。」

女将「・・・・・やっぱり」

悠生「もしかして・・・このお店は・・・女将は・・・」

女将「運命で結ばれていても、本人達の意思で運命は変わってしまうんよ。だから、悠ちゃんは幸ちゃんを絶対に離したらあかんよ。」

悠生「・・・うん・・・」


女将「話は終わり。」

悠生「えっ!!」

女将「明日は朝早いんやろ、今日はそれ飲んだらお帰り・・・」

悠生「うん・・・」

女将「東京に帰っても、何かあったらいつでも相談にのるから連絡よこしなさいよ。」

悠生「ありがとう・・・」


その日は軽く飲み、女将に別れを告げた。

母親が他界してから、母性を感じた事などなかったが、このお店にはそれがあった・・・

大阪を離れることに強い寂しさを感じた。


大阪に来た時にはこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった・・・


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