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大阪出張編 -8-

月曜日になり、俺は朝一番で本社に電話し、社長にカルロスから紹介された仕事の事を相談した。

社長は、できる事なら請けたいと言い、本社からデザインの仕事ができる社員を5名派遣すると約束してくれた。

1年弱でほとんどの仕事は覚えたが・・・俺にこの仕事ができるだろうか。

仕事がデカ過ぎる・・・


その日は、あまり仕事に身が入らなかった。

女将に相談してみよう。



仕事の帰り、そのまま居酒屋樹へ行ってみた。

女将「いらっしゃい。」

悠生「こんばんは。」

女将「・・・カウンターへおいで。」

店内に客は疎らだった。

女将「ビールにする?」

悠生「いや。」

女将「なんか疲れてるみたいやな・・・精が付く料理作ったるな。」

悠生「うん、ありがとう。」



女将「はいどうぞ。」

少し待っていると、うな丼とうなぎの肝が出てきた。

悠生「おっ!うまそう。」

お腹がすいていた事もあり、思いっきりがっついた。


女将「仕事の事を相談しに来たんか?この前、カルロスさんと話してるの聞こえてしもうたわ。」

悠生「うん。」

女将「次の仕事に手を付けたら何年掛かる?」

悠生「1年・・・長ければ3年から5年・・・」


女将「・・・悠ちゃんが大阪に来て、もうすぐ1年やね。」

悠生「うん。あと1ヶ月で1年になる。」

女将「早いもんやね・・・」

悠生「うん。」

女将「でもな、待っている人には、その1年が何倍にも感じるんやで。」

悠生「・・・でも西村所長と約束したから・・・」

女将「ほな幸ちゃんとの約束はええんか?幸ちゃんとの約束の方が先でしょうが。女は物やないんやで。心かてすぐに流されてしまう・・・」

悠生「・・・・」


女将「今日、何でうなぎ出したか解るか?」

悠生「・・・いや。」

女将「あんたに引導を渡すためや。」

悠生」「えっ!?」

女将「うなぎは関東では切腹に通じるから背開きにするらしいけど、関西は腹開きや。」

悠生「・・・・」

女将「この先、悠ちゃんが大阪で所長を続けても、絶対どこかで文化の違いでうまくいかなくなる時が来る。大阪での交渉には、東京もんは向かんのよ。古い考えの奴らは東京もんを嫌っとる奴も多いんよ。」

悠生「・・・・」

女将「悠ちゃんは本当によくやった。誰もがそれを認めてる。でも、人間は引き際も大事なんよ。後は大阪の子に所長を任せて、東京に帰った方がええんと違うかな?」

悠生「女将・・・ありがとう。」

女将「悠ちゃんの頑張る姿見てたら・・・年甲斐もなく惚れてしもうたんよ。惚れた男には幸せになってもらいたい・・・」

悠生「・・・・」


女将「後の大阪支所が心配なんやろ?」

悠生「・・・うん。西村所長・・・いや、せめて田丸さんが戻って来てくれれば・・・」

女将「これは、悠ちゃんが大阪に来る前の話なんやけどな。美樹ちゃんに「私はお父さんの後を継いで所長になれますか?」って聞かれた事があるんよ。その時の美樹ちゃんを見させてもらったけど、とても所長の器ではなかったわ・・・」

悠生「・・・うん。」

女将「それを伝えたら、美樹ちゃんは急いで東京に電話して・・・それで、悠ちゃんが大阪に来る事になったんよ。」

悠生「うん。」

女将「でもな、人の運命って不思議なもので・・・今の美樹ちゃんには十分な所長の器が見えるんよ。」

悠生「・・・田丸さんに会ったのか?」

女将「・・・・出ておいで。」

調理場の奥ののれんをくぐって田丸さんが現れた。

悠生「おまえ・・・良かった・・・」

田丸「ごめんなさい・・・」

女将「最後に悠ちゃんに会った日の事を、ずっと後悔してたんやて。」

田丸「どうしても気持ちを抑える事が出来なくて・・・マンションを引き払って、半年間海外に留学していました。何も言わず飛び出して、所長や会社に多大な迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

悠生「いや、俺の方こそ、あんな態度を取った挙げ句、何も聞いてあげられず寝込んでしまって申し訳なかった。どうか許してほしい。」

女将「この前、初めて西村さんの所に見舞いに行ったけど、大分元気そうに見えたわ。悠ちゃんの次の所長の事なんだけど、私が見る限りでは、美樹ちゃんがやっても、一真って子がやっても大丈夫だと思うわ。だから悠ちゃんが自信もって次の子を任命してやり。」

悠生「ああ。」


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