プロローグ
え〜処女作の方があまりに筆進まず…
気晴らしに書いた作品です。
見切り発車感満載です。
不定期更新になるか…それとも同時進行に
なるかは分かりません。
それでも暇潰しに読んでやんよ!って方に
オススメです。
ーー203X年USA某所
「くそっ‼何でこんな事にっ‼」
男は悔やんでいるー
自分の浅はかさー
運の無さー
ミリタリーマニアが高じて渡米した男は
一流の理工系大学を優秀な成績で出る事ができた。
在学中には様々な論文が認められ、引く手も
数多であったが男は長年の夢であった軍需産業に
就職を決めた。
永住権も企業が用意してくれた。
彼は夢を叶えたはずだった…
だが赴任して最初の仕事は研究所勤務。
男の希望した銃器開発の部署からは程遠い。
それでも、この研究所に軍の息が掛かっている事が
男がここに留まり続けた理由だった。
彼に与えられた研究ー
〈ブラックホールの生成・制御と兵器への
転用〉
長年足踏み状態だった研究は、彼の加入により
飛躍的な進歩を遂げた。
あと一歩の筈だったー
彼の上司は研究が完成すれば、銃器開発部門への
転属を約束してくれていた。
(どこで間違えたって言うんだ⁈)
彼の声は最早誰の耳にも届かない。
目の前に広がるのは圧倒的な闇。
暴走した超小型ブラックホール。
それはゆっくり、だが確実に音も光も…そして
彼自身を呑み込む。
その穴が閉じた時、かつて〈MJ12〉と呼ばれた
広大な区域には何も残っていなかった。
ーーーー
彼がそこに辿り着いてから、もうどれ程の
月日が流れただろうか…
彼の全てが終わった日…ブラックホールに
呑み込まれた日。
彼は何者かの声を聞いた。
「時空の壁に穴を開けし咎人よーーーー
貴方に罰を与えます」
気が付くと彼は見知らぬ泉にいた。
立っているのではない。
いたーーーのだ。
彼は既に体を失っていた。
彼の意識だけが、そこにあった。
最初の頃は、彼も足掻いていた。
だが、すぐに諦めた。
彼の意識は、どうやっても泉の外には出られない。
そして誰も来ない。
誰も来ないから、人がいるのかさえ分からない。
そこに縛りつけられ一月が過ぎ、彼は出る事を
諦めた。
そこに縛りつけられ一年が過ぎ、彼は助けを
諦めた。
そこに縛りつけられ百年が過ぎ、彼は死を
諦めた。
そして、そこに縛りつけられ千年が過ぎた頃、声が聞こえた。
「咎人よ…その力を受け取るべき者に渡しなさい。
さすれば、貴方の魂は悠久の安らぎを
得るでしょう…」
「…どうすれば良い?…誰に?…いつ?」
彼は必死に、千年振りに言葉を紡ぐ。
「貴方の意識は、この世界とは違う階層にあります。貴方を見つける事が出来るのは、
貴方と同じ世界から来た者、その血を引く者…
時が来れば貴方の前に姿を現すでしょう」
「そうか…ならば待とう…百年でも千年でも…」
その地は〈ジルタニア〉
その泉は〈祝福の泉〉
かつて〈彼〉だった思念の固まりと、
何者かの〈声〉の会合。
この時より千年の後ーー
運命の歯車は動き出すーー