エピローグ
負けてもハッピーエンド!
「タケルさんって意外と器用なのです。前のも確か自分で作ったのですよね?」
俺作のミニスカサンタの衣裳を女の子に配るとクルミちゃんがこんな感想を述べた。
「俺は筋肉バカって思われるのが嫌なんだよ。依頼されて衣裳作る事もあるんだぜ」
「すごいのです」
「着替えはあたしん家でやってね」
十二月二十三日。生徒会メンバーでクリスマスパーティーをした。本来はクリスマスなのだから二十四日か二十五日にやるべきなのだろうがリサが猛反対したため、この日となったのだ。
リサとの決闘からさほど時間が経っていない為、俺の傷は完全に癒えていなかったが浮かれられるぐらいには回復していた。
怪我をしているからと言う訳ではないが家の広さ的に台所と茶の間を行き来するのが三人にも達すると俺は手伝いをする事が出来ず、なんとも手持無沙汰って奴になってしまう。やはり俺は動き回ってる方が性に合うらしい。
「会長、チラッとだけでいいんでパンツ見せてくれませんか?」
「私は別に構わんが……」
「マジッすか! ……ブッ」
「そういうのダメって言ったでしょ?」
会長の足元に身を投げ出して下から覗きこもうとするとリサに踏みつけられる。まあ、俺としてもこうなる事は予想済みだった訳だ。ただ、いつもと違うのはリサの表情に余裕があると言うか、さほど不機嫌そうではないと言う所だった。こんな所で『ああ、俺達はつき合い始めたんだな』なんて事を実感させられてしまう。
「車田 リサ。これはどこに置けばいいですか?」
「あー、それは後で出すからまだ持ってかないでいいよ」
「解りました」
会場となった我が家はそれらしい装飾が施されていて五人のミニスカサンタさんが好き勝手にやっている最中なのである。言うまでもないが俺はトナカイの全身タイツ(首輪付き)である。俺は『パンツでも見えないかな』って寝っ転がってそれを眺める。
「しかし、リサ君はすごいもんだな」
「でしょ? 俺があそこまでやった理由解ってくれますよね?」
やはり、リサは人類とは別の生き物のようだ。既にってか、決闘の次の日には俺から受けた傷は完全に癒えてしまったのだ。
「私もリサ君と一戦交えてみたいものだよ」
「ボクもー」
「あたし、嫌よ。タケルとだって、ああしないと納得しなさそうだったから、仕方なくやっただけだし。そもそも格闘とか嫌いなのよ」
「ふむ、キミはつれないな」
「ジングルベール♪ ジングルベール♪」
マコトが楽しそうに歌っているのを聞いていると俺にはある疑問が浮かぶのであった。
「ところでパーティーって言っても普段と衣裳以外変わらないような気がするんですが何かイベント考えてあるんですか?」
「いや、何も」
「……えっと、プレゼント交換ぐらいは……」
「いや、それもない」
実にそっけない会長の返事だ。
「それじゃあ、いつもの豪華版じゃないですか!」
まあ、だらだら駄弁るのも嫌いじゃないが、何と言うかやはり折角のパーティーなんだから何かイベントが欲しいっていうか……。
「まあ、いいでしょ。お料理食べてケーキ食べて、少し豪華な晩餐だけでも」
そう言ってリサが料理を運んでくる。あれからというもの彼女の機嫌はすこぶる良好なのだ。
「ねー、もう食べていいー?」
「並べ終わるまで待つのです」
尻尾をパタパタさせながらねだるマコトをそう言ってクルミちゃんが宥める。
「会長は支度に参加しないんですか?」
「キミは女は家事に専念すべき、と考える輩なのか?」
彼女がこういう回りくどい言い方をする時はいつも決まっていた。
「……なるほど単にめんどくさいからやらないって事ですね」
「うむ、そうとも言うな」彼女がシレッとした顔で答える。
「ねー、ボクには聞かないの?」
「いや、マコトは包丁とか持たせたら何か危なそうだろ」
「むー、そんな事ないよー」
リサ、カスミさん、クルミちゃんが忙しく準備をする中、手伝おうとすると邪魔扱いをされる俺は正に日曜日にソファーに寝っ転がって邪魔扱いされるお父さんの図であった。要するに何となく居心地が悪いのである。
「じゃあ、始めましょ」
リサがそう言うと皆一斉にシャンメリーの栓を俺の方に向ける。ポンッと小気味のいい音を立てて俺に栓が当たっていく。
……まあ、いいんだけどね。
「「メリークリスマス!」」
ラジカセから流れるクリスマスソングをBGMにしながらの食事。俺が料理に手を伸ばそうとするとマコトがウーッと威嚇をする食事。皆で談笑をしながらの食事。そんな光景。
素直に『いいな』と思った。
パーティーは夜更けまで続いた。そして皆が帰宅すると普段の空気感に戻るのだ。それが何故か妙に物悲しさと言うか空虚さを感じさせる。
リサはキッチンで洗い物をしていて、俺はベランダからボーッと夜空を見上げていた。ポケットには小さな箱が入っていて柄にもなくそれを渡すタイミングを測ってたりしたのだ。
思えばカノジョにプレゼントをするなんて生まれて初めての経験だった。時折、キッチンに視線をやり、その度に鼓動が速くなるのを感じた。
「楽しかったね」
「ああ……」
洗い物が終わるとリサが俺の横に座った。しばらく、お互い無言で夜空を眺めていた。
俺は意を決して彼女の左手を取ると薬指に箱の中身をはめてやる。リサは俺の行為に一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐにパアっと顔を輝かせて手を夜空にかざして嬉しそうにそれを眺めていた。
「首輪の仕返しだ。安物だけどな……」
「……ありがとう」
そんな彼女の幸せそうな表情を見て、顔の温度が急上昇した俺はぶっきらぼうに言葉を吐くとそっぽを向いた。
「雪でも降らないかなー」
生憎と満天の夜空と言う奴だ。月や星々が実に綺麗であった。
リサを見る。とても穏やかな笑顔だった。そして、何かを期待するような瞳をしていた。
「あのね、タケル……」
リサが俺の肩に寄りかかって来た。彼女の体温と心地よい重さが伝わって来る。
リサが期待しているものが解らない程、俺は馬鹿じゃない。しかし、そのタイミングが解らない。もしかすると彼女も同じ事を思っているのかもしれない。
「……他の女の子と話すな、なんて言わないよ。みんなとは普段通りでいいの」
俺は何も返せなかった。いや、言葉はいらないと思った。
そして、見つめ合う二人。
「ちょっとぐらいエッチなのも認めて……アッ」
それ以上は言わせたくなかった。
俺はリサ両肩に手を置くと、真剣な眼差しで彼女を見つめた。そんな俺の仕草に彼女は頬を少し赤らめる。瞳が潤んでいた。
そして、目を閉じるリサ。時計は十二時を回り日付が変わった事を告げていた。そして、俺も目をつむり彼女の顔に自らの顔を近づけていくのである。
鼻と鼻がぶつかり顔を引く俺。気まずそうな俺の顔を見てリサがプッと笑った。しかし、それは俺を笑うのではなく、嬉しそうな、そして、とても幸せそうな笑顔だった。
「本当にこんな俺でもいいのか?」
照れ隠しに鼻頭を掻きながらリサに問う。
「あたしが選んだんだよ?」
「リサ、大好きだ……」
「知ってたよ」
そう言ってニコリと笑うと悪戯っぽい顔を見せて彼女が俺の首に抱きつくように腕を回してきた。そして再び見つめ合う。俺も彼女の首に手を回すと優しく引き寄せる。
もう言葉は必要なかった。
リサが目を閉じた。そして、俺も……。
この日、二人は初めてのキスをした。
『俺猛る!』 END
私の拙い文章に最後までお付き合いいただけた方に感謝いたします。一応プロットはあるので好評のようなら続編を書くかもしれません。その時はまたお付き合いお願いします。




