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ep.5 氷姫1

 放課後、人気のないトイレの洗面台の鏡を前に涼川凛は考えていた。

(私ってそんなにぶすっとしてるかな?

 まあ、愛想がいいとは言えないし

 めんどくさい人間関係もごめんやし)


 両手の人差し指で口角を上げて笑い顔をつくってみた。

(うわっ、ぎこちない、ジョーカーみたい)


「スマイル作る練習、かわいいやん」


(見られた!)


 ギクッとしてとっさに振り替えると、数日前にどこかで見かけた女子。

 確か、西宮北口の喫茶店で見かけた女子だ。


「涼川さんやんね、いい笑顔つくるには普段からの練習が大事やからね」

 そういって、その女子も自分の口角を上げてわざとらしい笑みをつくった。


「あかん、ぎこちないな~」


「で、私に何か用?」

 涼川は冷静な様子で応じた。


「涼川さんがスマイル作る練習してたからかわいいなって思って応援したくなって、私も練習してみようってなって・・・」


「ふ、ふ~ん、私のこと知ってるん?」


「知ってるよ、二組の涼川さん、私は一組の村中、よろしく~」


「よ、よろしく」

(すごい切り込み方してくる子やな・・・)


「涼川さんって先週末に西北の喫茶店で見かけたけど、何してたん?」


「え、ああ、喫茶店で本読むのが趣味やから、あの時も本読んでたんやけど、村中さんは?」


(どうする?本当のこという?まあ、見られてたしええか・・・)


 村中は周りを見回して誰もいないことを確認してから言った。


「ここだけの話やねんけど、実は、隣の席の坂下君と遊びに行ってて、お互いの距離を確かめているところというかなんというか?」


「付き合うかどうかの瀬戸際的な感じ?」


「あ、端的にまとめるとそうやねんけど、坂下君の気持ちも、私自身の気持ちも今一つ分からなくて悩んでるところなんよね~」


「そんな話をなんで私に?」


「いや、なりゆきというか、知らない人だけに心を許したというか、不思議な乙女心・・・」


 クスッと涼川は笑った。

 てへっと照れ笑いで応じた。


「続き相談したいから、よかったら一緒に帰らへん」


「一緒に?ま、まあ、ええけど、相談に答えられるか分からへんけど・・・」


 校門を出るまでの間、何人もの学生が物珍しそうに二人を見やった。

 おそらく、氷姫が人と歩いているのが珍しいのであろう。



 校門を出て人の視線が無くなってから、村中は今までの経緯を涼川に話した。


「なるほどね。でもそこまでかわいいって言うなら、ほぼ好きとイコールでは?」


「私もそうかなとも思うんやけど、付き合いたいに直結しているとは言い難い感じで」


「なんか複雑やね。でも、結局は二人で一緒にいたい、過ごしたいと思ってるかどうかじゃないん?

 村中さんはどない?」


「坂下君が私と一緒にいたいと思ってくれるなら、それはそれでありかなって思う」


「ふむ、であれば、あとは坂下君次第とういうことになるんちゃう」


「そっか~、そうやね~」


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