序章:婚約破棄から七日後
異世界配信系ざまぁファンタジー
登場人物
イザベラ・ローゼンマイヤー: 婚約破棄された元伯爵令嬢。隣国B国で配信者「ざま嬢」として活動中。声は小さく、陰湿な愚痴がメインコンテンツ。
バルログ・ローレシア: 隣国B国の第二王子。イザベラの配信の熱狂的な視聴者。コメントネームは「名もなき視聴者A」。
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1. 破棄された部屋と、残された物
イザベラは、かつて暮らしたA国・王都の豪華な別宅で、がらんとした部屋を見渡していた。七日前、王太子オスカーとの婚約は、彼の「お前はレベルが上がらない無能だから」という一言で公衆の面前で破棄された。
だが、イザベラのチートは能力値ではなかった。それは、王都からこっそり持ち出した手のひらサイズの金属板、『異世界配信アプリ「ライブ・ザマァ」』だった。
イザベラ(独白): 「レベルが上がらない?ふふ。上がったところで、貴族社会のゴミみたいなプライドが上がるだけでしょうに。それに、私のスキルはレベルじゃ計れないわ。オスカー様、あなたは私の人生の『コンテンツ』としてレベルアップしていただきます」
隣国B国の端にある、安普請の木造アパート。窓からは市場の騒音が聞こえる。このアパートで、イザベラの第二の人生が始まった。
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2. バルログ殿下の「いいね!」履歴
隣国B国。王宮の私室。バルログ殿下は、豪華な調度品に囲まれながら、夜な夜なイザベラの配信動画を「見て」いたのではない。「読んで」いた。
アプリには自動で「ざまぁ記事」化される機能があり、殿下はそれをタブレットで縦読みしていた。
バルログ殿下(内心): 「(スクロールしながら)…『破棄された日のオスカー様のブリーフは、なぜか右半分だけ黄ばんでいた』…ッハハハ!マジか!マジで?いや、でも…待てよ。この話、3日前の配信で聞いたぞ。時系列が前後してる。このアプリ、記事のパズルが下手くそだな。」
殿下は、イザベラの配信を最初から最後まで追う、コアな視聴者だ。そして、彼はコメントネーム「名もなき視聴者A」として、毎回必ず「いいね!」を押す。その指先に、王族としての威厳は一切ない。
バルログ殿下: 「よし。今日の記事は『婚約時代のオスカー様の足の裏の角質』か。…これもいいね!だ。王族として、この国の人間ドラマを記録しなければならんのだ。そうだ、私は『学術研究』をしているんだ。」
(彼は自分に言い聞かせるが、その目は完全に「推し」を見つめるオタクのそれだった。)
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3. イザベラの『陰湿な愚痴』と、突然の炎上
イザベラの配信開始。今日は『ざまぁの鉄板』として、元婚約者オスカーの「雑すぎる似顔絵」をスケッチブックに描きながら、愚痴を言う回だ。
イザベラ(ボソボソと、カメラ目線で): 「はい、皆様、こんばんは。イザベラです。今日はオスカー様の『耳の穴の形』についてです。見てください、この絵…フフ。耳の穴が、なんか…ねぇ?(スケッチブックをカメラに雑に見せる)なんかこう、『人の話を聞きたくないぞ』っていう、拒否の意思を表してるような形でしょう?きっと、婚約破棄の言葉も、彼の耳の穴を通過してなかったんですよ。」
(コメント欄が流れ出す)
名もなき視聴者A: (速攻で)いいね!
闇の勇者: 耳の穴は草
B国王女推し: ざま嬢、もっと言って!
しかし、ここで不穏なコメントが流れる。
A国騎士団: これは名誉棄損だ!我らが王太子の悪口を!
イザベラは冷静に対応する。
イザベラ: 「あら。名誉棄損ですか?(ボソボソ)これはあくまで、『耳の穴が特徴的な架空のクズ男』の話でございますよ。A国の王太子オスカー様とは無関係です。…それに、A国の方は今、こんな隣国の辺境の配信なんて見てないでしょう?ご心配なく。フフフ。」
(その瞬間、イザベラのチートアプリがエラー音を出す。)
アプリの警告音: ピピピ!警告!視聴者リストに【B国】の王族アカウントが混入しました!
イザベラは動揺しない。
イザベラ: 「え…?(ボソボソ)ええと、『バルログ・ローレシア』…?殿下?…まさか。そんな…隣国の偉い人が、こんな陰湿な配信を…?見ているわけ、ないでしょう?」
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4. 画面越しの緊張と、バルログ殿下の秘密
バルログ殿下は、イザベラが自分の名前を口にした瞬間、慌ててタブレットを床に落とす。
バルログ殿下: 「なっ…!なぜバレた!いや、私のアカウントは『名もなき視聴者A』だぞ!私の本名がなぜ…!そうだ、この配信アプリの『特定力』がチートなんだ!」
彼は慌てて、床に転がったタブレットを拾い上げる。
バルログ殿下: 「いや、いいや。無視だ。王族の威厳を見せろ、バルログ!…しかし、イザベラ嬢のあの怯え方…。かわいい…いや、いけない。王族だぞ、私は!」
(再び、タブレットの画面。イザベラは次のスケッチブックを広げている。)
イザベラ(ボソボソと、バルログ殿下に問いかけるように): 「…さて。気を取り直して。続きです。『隣国のB国の王族が抱える、深刻な悩み』。フフ。あくまで一般論ですよ?…B国の王族は、どうも、『自分の名前が、昔のゲームのボスキャラみたいで、人に言われるのが恥ずかしい』という方がいるらしいんです。これ、結構深刻らしいですよ。」
(その瞬間、バルログ殿下は絶叫する。)
バルログ殿下: 「バ、バルログって、そこを弄るのかよ!チートなのはその情報源だろ!おい、やめろ、イザベラ嬢!その話はデリケートなんだ!やめろ…いいね!(思わずタブレットを連打)」
画面には、イザベラの配信画面に、バルログ殿下の名前を冠したアカウントが『いいね!』を連打する様子が映し出されていた。
イザベラ(画面越しに、バルログ殿下に問いかけるようにボソボソと): 「…ふふ。それにしても、『バルログ』殿下。そんなに気に入っていただけたなら、ぜひスーパーチャットを…お待ちしておりますね。」
(バルログ殿下、タブレットを抱きしめ、天を仰ぐ。)




