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「ダンバ。あなたの祖父を助けたことがあります」


「あ!」


 ネクターシャの言葉に、ダンバは眼を()いた。


棘谷(とげだに)の底で」


「知ってる!」


 ダンバは聖女を(さえぎ)った。


「祖父ちゃんを助けた女は、お前だったのか!」


 が、蛮族の若者は首を傾げた。


「お前、何歳だ? 祖父ちゃんが助けられたのは、ずいぶん前だぞ?」


「ダンバ! 不敬(ふけい)すぎるぞ!」


 ネクターシャは、再びケルビンを手で制した。


 彼女が「アハハ!」と笑う。


「私は見た目が若いのです。美容には、気を使っていますからね」


 聖女の屈託(くったく)のない笑顔に、テント内の人々はホッコリするのだった。




 敵砦の裏手の丘に、ネクターシャはユニコーンに乗ってやって来た。


 ダンバと、その手勢の一部(いちぶ)が同行している。


 祖父と聖女の話を聞いた彼は一転(いってん)、別働隊を志願したのだ。


「祖父ちゃんが言ってた不思議な女の(ちから)を、この眼で確かめてやる」


 ネクターシャは、彼との共闘を快諾(かいだく)した。


 丘沿いに砦を攻撃できるルートは、険しく狭い。


 別働隊は途中から徒歩で、目的地を目指した。


 到着すると、陽の下に敵砦が見渡せる。


 こちら側には予想通り、敵兵はあまり配置されていない。


「これなら楽勝だな」


 ダンバが、ニヤッと笑う。


 確かに30人とはいえ、蛮族の兵は強い。


 敵を混乱させるには充分だろう。


 だが、しかし。


「あれを」


 ネクターシャが指す先には、3mはあろうかというトロールが1匹居た。


「闇から助力を得ています。普通の攻撃では倒せないでしょう」


 ダンバは頷いた。


 正面を攻めるケルビンの軍から、攻撃開始の狼煙(のろし)が上がる。


 彼らにはダンバの副官率いる残りの蛮族たちが編入されていた。


 ネクターシャは銀の弓を構え、背中の矢筒(やづつ)から取った矢をつがえた。


 空を狙う。


「おい! どこを狙っている!」


 声を抑えたダンバの指摘に、彼女は矢の発射で答えた。


 天に飛んだ矢は先端を下に落ち、無数の光に分かれ、雨の如く敵に降り(そそ)いだ。


 ダークエルフたちが、悲鳴と共に倒れる。


 生き残った者が、こちらを見上げた。


「かかれ!」


 雄叫びをあげ、ダンバと蛮族たちが斜面を滑り下りる。


 ネクターシャも続いた。


 ダークエルフの弓矢が放たれる前に、聖女の矢が敵を倒す。


 すさまじい速さと精度であった。


 砦に侵入したダンバたちが手斧を振るい、縦横無尽(じゅうおうむじん)に暴れる。


 砦内から駆けつけた新手のダークエルフも、ネクターシャの弓術で無力化された。


 ダンバの前に、トロールが立ち塞がる。


「おおぉぉぉー!」


 咆哮(ほうこう)と共に、蛮族の若者は巨躯(きょく)の敵に襲いかかった。


 素早く的確な斬撃が怪物の手足を裂くが、瞬く間に再生してしまう。


 トロールの鋭い爪をかわしたダンバの肩に、また現れたダークエルフの放った矢が刺さった。


 バランスを崩したところに、怪物の両爪が届くと思われた刹那(せつな)


 ネクターシャが1度に2本、弓につがえた矢が同時に放たれ、1本はダークエルフの喉に、もう1本はトロールの胸を(とら)えた。


 闇のエルフは倒れ、トロールは呻く。


 体内で輝く矢の聖なる(ちから)で、怪物は両膝を突いた。


 ダンバはここぞとばかりにトロールを攻撃し、ネクターシャもその(あいだ)に2の矢、3の矢を射ち込んだ。


 再生できなくなった怪物は、とうとう倒れ、動かなくなった。


 ダンバとアイコンタクトしたネクターシャは、(あと)を蛮族たちに任せ、砦内を下に向かう。


 敵が設置した、悪の(みなもと)を絶たねばならない。


 地下の1室に、それはあった。


 部屋の中央に、人の頭大の闇球が浮かんでいる。


 悪の生物は天敵の到来(とうらい)を敏感に察知した。


 触手の如く闇が伸び、ネクターシャに向かってくる。


 迅雷(じんらい)の弓術が、それを全て射ち抜き、消滅させた。


 無限に補充される矢を続け(ざま)に放ち、闇球を完膚(かんぷ)なきまでに貫く。


 悪の源は四散し、この次元から完全に消えた。


「よし」


 ネクターシャは頷くと、階段を戻った。


 すでに砦内はケルビンとダンバの軍に制圧されていた。


 城主と蛮族の若者が、聖女の元に駆けつける。


「聖女様!」


「上手くいったようですね」


「はい。トロールには手こずりましたが、突然、弱り始めたので何とかなりました」


「闇の(ちから)を失ったのです」


「なるほど、それで」


「祖父ちゃんだけでなく、オレも助けられたな」


 ダンバが右手の人差し指を横にして、鼻の下を(こす)る。


 そうすると、まるで少年のようだった。


「私は、いつもあなたたちを見守っています」


 ネクターシャが慈愛に満ちた微笑みを2人に向ける。


「これからも各々の役割を果たしてください」


 ケルビンとダンバは、大きく頷いた。


 聖女は軽く手を振り、砦を(あと)にする。


 彼女を待っていたユニコーンに乗り、地平線へと走りだす。


 夕陽に照らされながら、一角獣を駆る聖女の姿は、まるで1枚の絵画のように美しかった。


(ミリンダル、ラファンタ、ペプシア、セブンナ、エネーポン、スコールオと合流しましょう。敵は大規模な攻撃を画策しているに違いない)


 ネクターシャは美しい姉妹たちの元へと急ぐのだった。




 おわり






























 







 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)


 大感謝でございます\(^o^)/

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