1-7 最初の戦闘は、ステータスが分からなくてもなんとかなる
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加速する馬車に並走する野犬、今はまだ襲い掛かってこないが、それも時間の問題、いずれは馬車を引く馬の体力が先に無くなって、足が止まった所を襲われる。
馬車を切り離して、馬に乗って逃げる?
却下、私は馬に乗ることは出来ないし、手綱が馬車用、それなら荷物だけを捨てた方が生存率は高い、けど実行前に確認はしないとね。
「後ろの商品捨てるけどいい?」
「後ろのは商品ではなく、村への救援物資なのですが、どうにか出来ませんか?」
救援物資と言われれば躊躇ってしまう、そう言えばさっき自分が犠牲になって他を助けるなんて事はしないと言っていた、なら数匹倒せば逃げていくのでは?
「何匹か倒したい、どうにか出来ない?」
「そうですね、馬車の速度を調整して、1匹から2匹ずつ襲い掛かってくるようにすれば、あとは倒せますか?」
「うん、大丈夫」
未だにステータスは分からないけど、あの野犬を見て2匹程度であれば、倒せるとなぜか確認できる。
私は御者台に立つと、剣を抜いて準備する。
「準備できた、お願い」
「分かりました、お願いしますね」
その言葉の後、馬車の速度が徐々に落ちていく。そして野犬が前に出るとこちらに向かって飛び掛かってくる。
左右にそれぞれ一匹ずつ、右の野犬が早い。
そう判断した瞬間、右の野犬の喉へ剣を突き立てる。ランダルさんが右側にいたから、ランダルさんの上でこの惨状が起こったけど、それは今は気にしない。
突き立てた剣を両手で掴むと、馬車の走る勢いと、野犬の自重で自然と剣が抜ける。それと同時に左側から野犬が迫ってくる気配がする、その気配に向かって振り向きざま剣を振るう。
かなり近づかれた為、柄に近い箇所でしか切り付けられなかった、しかしそのまま剣を引くように切り、なんかと致命傷を与えた。
「ひぃっ!」
ファウナちゃんの小さな悲鳴が聞こえた、心が痛むけど今は堪えてほしい。
二匹目の息が絶えた事を確認して、その死体を外へと蹴りだす。そして周りを確認すると、右側から新に野犬が襲ってきた、剣を下げていた為、そのまま切り付けるとランダルさんも切ってしまう、かと言って剣を上げる余裕も無い、仕方なく襲い掛かってくる野犬の鼻先に向かって、柄頭を突き出しだした。その柄頭は狙い通り鼻先に当たり、野犬は馬車の外へと落ちて行った。
「一度速度を上げて」
「は、はい」
一度仕切り直す、徐々に馬車の速度が上がり、それと同時に野犬が飛び掛かる。しかし速度が上がった為、御者台には届かず、馬車の側面を覆う布に飛び掛かる、だがイヌ科はネコ科と違い、何かにつかまると言う事には長けていない。布に飛びついたとしても直ぐに落ちるはず。
その予想通り、ガリっと引っ搔いた音のあと、何かが地面に落ちる音、その次の瞬間、ガタンと馬車が大きく跳ねた。
これはひいたかな、これで四匹はやったはず、だけど退散する様子はない、初めに聞いた話と違うんだけど⁉
「まだ追いかけてくる」
「これは、ますますへんですね、群れが大きいためなのか、普通なら群れの三割減れば逃げ出すはずなのですが」
それってこの群にはまだ野犬が居るってこと? でも見渡す限りだと…まだ三割削ってないか?
「もう少し削る、もう一回速度落として」
早く何とかしないと、馬の体力の限界もある。
「分かりました、行きますよ」
「っ! まった、上!」
いままで周りの野犬の対処で気付かなかったけど、いつの間にか馬車の左側は見上げるほどの崖があり、その崖の上を数体の野犬が走っていた。
「下の野犬は囮? そんな、ただの野犬がそんな戦術のような事をするなんて」
「この群れのボスは、ずいぶんと頭がいいみたいだね…」
そんな風に感心しているけど、そんな場合ではない、崖の上の野犬が二匹、こちらに向かって飛び掛かってきた。
「っくぅ」
二匹同時、一度に相手は出来ない。
そう判断し、一匹には剣を突き立て、もう一匹は下あごを腕で、下から上に振り上げるようにして防ぐ、下あごをかち上げるようにしたため、噛みつかれることは無かったけど、突進する勢いは殺せず、御者台に押し倒された。
「アンネおねぇちゃん!」
「だい、じょうぶ……」
私は噛みつかれるのを防ぐために、喉元を掴み、近づかせないようにする。しかし喉を掴まれても暴れているため、爪が私の腕や体を引っ掻く。
それをなんかとしようにも、剣は最初の一匹を倒した際、その死体に深く突き刺さったままの状態、だから私は剣に突き刺さった野犬を蹴り飛ばして、野犬から剣を抜く。
そしてようやく自由になった剣で、組みついている野犬の腹部を突き刺す。しばらくして暴れる力が弱くなり、息絶えた様だ。それを確認してその死体も蹴り飛ばす。
剣が抜け、血が降りかかるが、そんな事を気にしている余裕はない。
直ぐに御者台に立ち上がると周りを確認する、すると先ほどまで撤退する様子を見せなかった野犬たちが、馬車から離れていくのが見えた。
「逃げていく?」
「どうやらその様です、さっきの野犬がリーダーだったのでしょうか」
「わからないけど、逃げていくならどっちでもいい」
「そうですね」
安心したのか、馬車の速度をだんだん落として行く。でも一応まだ襲ってくる可能性もあるので、警戒は怠らない。
あれ、そう言えば血を浴びたのに、服に血の跡が付いていない、爪で引っ掻かれた跡も、服にも体にも付いていない、これって……
「どうやらアンネさんの服には、かなり高性能な効果が付与されているようですね」
そうみたいだ…くそう、そんな事ならもう少しまともなデザインにしたのに…深夜テンションの私、本当に恨むよ。
「とりあえず危機は脱したようです、後ろで休んでいて下さい」
「分かった、そうするよ」
体力的にはまだ大丈夫だけど、さすがに気疲れした、でも野犬とは言え殺しても嫌悪感がそこまで無い、せいぜい血が掛かったのが、ちょっと気持ち悪い程度だ。
自分のことながら気味が悪いと頭では思っていても、実際にはそう感じる事が出来ない。ホント、今の状況ってどうなっているんだろう。
小さくため息を吐いて、荷台に座ると、ファウナちゃんが心配そうな顔をして、しがみ付いてきた。
ホント、この子天使だ……
読んで頂きありがとうございます。
前話までの後書きで散々言ってきましたが、
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