1-21 やっぱり現場が一番重要な情報源
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ガサガサと茂みが揺れ動く、確実に何かが居る。何が出てきてもいいように、私とキハナは警戒して構える。けどただ揺れるだけで、なかなか姿を見せない、こちらから確認するかと思案していると、ふと違和感を覚える、それにいち早く気付いたのはキハナだった。
「伏せて!」
キハナのその警告に、反射的に体が動いた。近くに居るファウナちゃんを抱えて伏せる。その次の瞬間、頭の上を何かが通った。
急いで視線を上げ、その横切った何かを確認する、それはここに来る時に見たのと同じ、野犬だった。その野犬が地面に着地すると、そのまま茂みを掻き分け、奥へと入って行く。
「本当にいたぁ」
その姿を見てキハナが声を上げるが、もしかして信じていなかったのか。
それはそうと、今の動きは確実にこっちを奥へと誘っている? もしかしてウグルジオに向かった三人は、この野犬につり出された? まぁ確かにルート上で野犬に襲われたのなら、後々に続く避難民を守るために倒しておく方がいいと考えるだろう。
「ねぇ、どうするの?」
そう、問題は私たちがどうするかだ、正直言ってこの情報だけで十分に目的を果たせている。しかしいま誘導されている先は、おそらくウグルジオに向かった三人が殺された場所、もしかしたら私が今一番欲しい情報が得られるかもしれない。
「ねぇ、アンネお姉ちゃん」
ファウナちゃんが私の裾を掴み、不安そうに言う。
さすがに罠と分かっている場所に、今向かう必要は無いか。
「戻ろう」
そう、今はこの情報だけで十分として一度戻ろう。
「でもただの野犬だよ、二匹程度なら倒しておいた方がいいじゃない?」
この子、本当にアホの子だ。
「下手したら、20匹近い野犬に囲まれるとしても?」
「え? あ……」
忘れていたのか、私確かに言ったよね? ここに来るまでに野犬の群れに襲われたって、その野犬が人為的で今は潜伏している可能性があるって。
「じゃぁ戻るよ」
「ええ、そうね」
私が改めて言うと、今度は賛成してくれた。けど戻ろうとすると、帰り道の茂みから野犬が道を塞ぐように現れた、その数三匹。しかしそれだけではなく、周りからガサガサとまだ音が聞こえてくる。
これは囲まれている?
そう判断すると同時に、私とキハナが剣を抜いて構える。
「キハナ、後ろお願い」
「分かった」
短い応答で、私とキハナはファウナちゃんを挟んで前後をそれぞれ警戒する。
「これ、どうするの?」
キハナの言葉に少し考える、正直今の状況で四方から襲われたら、ファウナちゃんを守る事は難しい、だったら。
「退路作るから、少しの間ファウナちゃんをお願い」
一点強行突破、これしかない。
「分かった」
キハナの返答を聞くと、目の前の三匹に対して切り掛かる。私のその行動に反応し三匹は身構え、こちらの剣が届くより前に中央の一匹が襲い掛かってくる。
私はその後ろで、続けて襲い掛かろうとする他の二匹を確認しながら、最初に襲い掛かってきた野犬の首を切りつける。
両断する必要は無い、そこまで引き付けると次に間に合わなくなる。だから三分の一程度を切る。これだけで十分に行動不能になるし、出血で死ぬだろう。私は直ぐに右に踏み込むと、一拍遅れて襲い掛かってきた二匹の内、一匹の首を突き刺す。
もう片方の野犬は今の攻防ですれ違った為、そのままだとファウナちゃん達に襲い掛かるだろう。なので突き刺さった剣を抜くと同時に振り返り、追いかけようとするが、どうやら困惑して立ち止まっていた。その隙を突いて私は最後の野犬の首を切り落とした。
「っひぃ」
ファウナちゃんが小さい悲鳴を上げる。まぁ回復魔法が使えるとは言っても、元々は単なる孤児なのだから仕方がない。
「逃げるよ」
私は短くそう言うと、ファウナちゃんの手を引いて走り出す。その後をキハナが追うが、追ってくるのはキハナだけではない、一拍遅れて茂みに隠れていた野犬が追ってくる。
走る速度は野犬の方が早い、暫くしない内に後ろから追ってきた野犬が追いつき、一番後ろを走っているキハナに襲い掛かる。キハナを気に掛ける余裕はないが、その必要もない。
襲い掛かってきた野犬に対し、キハナは振り向き様に右の裏拳で野犬の横っ面を殴る。手甲を付けたその一撃は、襲い掛かってきた野犬を地に沈めるには十分だった。しかし襲い掛かって来たのはその一匹だけではない、もう一匹一拍遅れて襲い掛かってきている。その野犬に対し、振りぬいた右手に持っている短剣で、野犬の首を突く。深々と刺さった短剣を抜き、立ち上がろうとしている一匹目の頭に蹴りを打ち込む。その蹴りによって首があらぬ方向に向いて絶命した。
思った通り、後ろは気にしなくても問題はなさそうだった。私は改めて前方を警戒すると、左右の茂みが揺れる。嫌な予感を覚えた私は、ファウナちゃんを抱えてその場に伏せる。
その次の瞬間、右から野犬が飛び出し、一瞬前まで私の上半身があった場所を横切った。そのまま左の茂みに消えると、すぐにもう一匹の野犬が左の茂みから出てくる。しかし私たちに襲い掛かるより前に、追いついたキハナの蹴りによって吹き飛ばされる。私が立ち上がって体制と整えている間に、キハナは蹴り飛ばした野犬に止めを刺していた。
私は茂みに消えたもう一匹を警戒するが、出てくる様子はない、それどころか囲んでいたはずの他の野犬の気配すら感じなくなっていた。
「どうやら、周りにいた野犬は逃げたようね」
キハナがそう言うって事は、どうやら間違いはなさそうだ。でもなんで逃げて行った? ここに来る途中で襲われた規模から、まだ野犬は居たはずだ。
「とにかく今のうちに戻ろうか」
キハナのその提案に賛成し、私たちは来た道を引き返す。
それにしても今回の野犬の動きには違和感がある、異常に組織だった行動は勿論だけど、不自然な撤退、そして攻撃が失敗した後の硬直。あの時、その先にはファウナちゃんが居た、普通ならそのままファウナちゃんを襲えばいいのに、私への攻撃が失敗したあと、どうすれば良いのか分からない様子だった。
私を攻撃する、その先の行動を考えて居ない、いや、指示されて居なかったのか? そこまで詳細に野犬に指示が出来るのか、出来たとしても、あそこで次の行動が出来なくなったという事は、リアルタイムで指示をされていた訳じゃない、此処に指示を出した個体は居なかった……いや、個体ではなく人か、もう確実に。
「ねぇ、なんで今回襲ってきたんだろう? 私何度か国境付近まで行ったけど、今日初めて襲われたんだよ」
村に戻った所で、キハナがそう訪ねて来る。
まぁ確かにその通りだけど、それに関しては二つほど推測している。
「ネアカガリア側の準備が整った」
一つ目はこれだ、今まで潜伏して襲っていたのが、亡命までの時間稼ぎであるならば、その時間稼ぎの必要が無くなった、その為潜伏する必要が無くなり、より孤立させる為に入ってくる人と出ていく人を襲わせるようになった。
「ちょっと、それって大変じゃない」
その推測を、少ない言葉でキハナに話すと、キハナは慌てて村へと走って行った。おそらくルースさんあたりに報告しに行ったのだろう。
いやでも推測はもう一つあるんだけど、そして実はこっちが本命だったりする。まぁキハナには事前に二つ推測があるとは言ってないけど。
あとこのままルースさんに報告していいのかな? まぁ私は関係ないからいいけど。
読んで頂きありがとうございます。
1-4までの後書きで散々言ってきましたが、
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