【声劇台本】雨女の雨森さん・晴れ男の晴々君
この台本は、単話が複数個繋がったような内容になっています。
それぞれの単話の繋ぎはキャラが「雨女の雨森さん」のように、タイトルコールしています。
ご了承下さい。
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■以下役表(♂2:♀2)
♂晴々〇:
♀雨森・生徒A△:
♂雨森父・生徒C◇:
♀N・生徒B×:
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■キャラクター紹介
・晴々 太陽♂
学校1の生粋の晴れ男。
自分の行動に絶対の自信を持っており、自分でも晴れ男であることを自負し、誇りに思っている。
・雨森 影美♀
学校1の生粋の雨女。
冷たい物言いが多いが、自分自身でも冷たい自覚はあるらしく、それを気にしている。
晴々とは隣の席同士。
・生徒A ♀
見守り隊の一人、生徒Bと友達。
晴々と雨森の関係をいつも見守っている。
明るく優しい、元気な子。
・生徒B ♀
見守り隊の一人、生徒Aと友達。
生徒Aの行動に刺激を受けて、一緒に見守っている。
・生徒C ♂
晴々の友達、いつも軽口を叩きあう仲。
晴々とは隣の席同士。
・雨森父 ♂
冷たく、厳しい物言いをする、雨森の父、その真意はいかに。
・N ♀
基本モノローグ多めなため、たまに喋る程度だが、締める時にしめてくれる。
〇晴々「雨女の雨森さん」
〇晴々(俺は、晴れ男の晴々、俺がいる場所は絶対晴れると評判だった。だがしかし、この学校に来てからはその評判も消えつつある。それもそのはず)
△雨森「…」
〇晴々(この寡黙な女、生粋の雨女雨森によって晴れが阻止されるからだ。
別に俺自体は雨は嫌いではないのだが、どうしても晴れ男としてのプライドが許さない)
〇晴々「雨森さん」
△雨森「…なにか?」
〇晴々「今日は俺、負けないから」
△雨森「…ああ、まぁ、どうせ私が勝つでしょうけど」
〇晴々(こいつ、余裕ぶりやがってぇ、このテストのあと後悔しろよぉ?)
◇生徒C「またつっかかってんのか?飽きないねー?」
〇晴々「当然だ、見とけよ!?絶対勝ってやるから!」
◇生徒C「ふーん、まぁ頑張れー」
×N(その日は、ずっと雨が続いた)
〇晴々「くそがぁぁぁっ!!!」
〇晴々「雨女の雨森さん」
〇晴々(今日こそ勝ってやるからな…雨森っ)
△生徒A「今日も晴々君、雨森さんに熱視線送ってるねー、好きなのかな?」
×生徒B「雨森さん綺麗だもんねー、今度聞いてみようよ!…あ、消しゴムが」
(雨森の机から消しゴムが転がり落ちる)
〇晴々「あ、雨森さん」
△雨森「…ん?」
〇晴々「消しゴム落としてるよ、ほら」
△雨森「…ありがと」微笑む
〇晴々「ああ、ど、どういたしまして」
△雨森「そいえば昨日のテストはどうだったの?」
〇晴々「あー、まぁまぁ、普通、だね」
△雨森「ふふ、これは今回も私の勝ちね」
〇晴々「うるせぇ!勉強だって負けてねぇし!」
×N(その日は、何故か晴れたのだった)
〇晴々「雨女の雨森さん」
△雨森「晴々君」
〇晴々「ん?どうしたの?雨森さん」
△雨森「貴方、私に頻りに話しかけてくるけど、なんで、なのかしら」
〇晴々「なんでって?」
〇晴々(どうしたんだ急に)
△雨森「えっと、だって、私達元々接点無かったじゃない?」
〇晴々「あー、んー、それはなぁ」
△雨森「それは?」
〇晴々「雨森さんをライバルとして見てるからかな」
△雨森「ライバル?…あー…なるほどね?でもこの前のテストは私の圧勝だった気がするけど」
〇晴々「そ、それは関係ないだろ!?」
△雨森「あら、そう?」
〇晴々(なんなんだよ本当に…楽しそうにしやがって)
△雨森「影美」
〇晴々「?」
△雨森「名前で呼んでよ、私も貴方のこと名前で呼ぶから」
〇晴々「別にいいけど、急だな」
△雨森「だって、せっかく仲良くなったんだから、お互い名字呼びってあまりにも他人行儀じゃない?」
〇晴々「まぁ、確かに?じゃあ、太陽、晴々太陽、な」
△雨森「太陽君か、あなたらしいわね」
〇晴々「そうか、まぁ、よろしくな」
×N(その日も、何故か晴れたのであった)
〇晴々「雨女の雨森さん」
△雨森「晴れ男の晴々君」
△雨森(私はいつでも一人ぼっちだった、それどころか、話しかけてくれる人もいなかった)
〇晴々「雨森さん」
△雨森「…なにか?」
△雨森(隣の席の男子、この晴々君を除いて)
〇晴々「今日は俺、負けないから」
△雨森(あまりに脈絡が無さすぎて分かりにくいが、きっとテストの事でしょう)
△雨森「…ああ、まぁ、どうせ私が勝つでしょうけど」
△雨森(晴々君はむっとしながら、そっぽ向いてしまった、嫌われたでしょうか、別に良いのだけど)
〇晴々「くそがぁぁぁっ!!!」
△雨森(帰りの学校入り口で天にむかって叫んでる晴々君を横目に見ながら傘を忘れた私はずぶ濡れになりながら帰るのだった)
△雨森「晴れ男の晴々君」
△雨森(昨日あんな態度をとったからか、こっちを見てるものの中々話しかけてこない、悪いことをしてしまったかしら)
〇晴々「雨森さん」
△雨森「…ん?」
△雨森(話しかけてきた、一体どうしたのかしら)
〇晴々「消しゴム落としてるよ、ほら」
△雨森(消しゴムを落としてしまっていたらしい、気付かなかった)
△雨森「…ありがと」微笑む
〇晴々「ああ、ど、どういたしまして」
△雨森(どうやら嫌われていたわけではなかったようね、良かった)
△雨森「そいえば昨日のテストはどうだったの?」
〇晴々「あー、まぁまぁ、普通、だね」
△雨森「ふふ、これは今回も私の勝ちね」
〇晴々「うるせぇ!勉強だって負けてねぇし!」
△雨森(なんだか、今日はとっても良い気分だわ)
△雨森「晴れ男の晴々君」
△雨森(そいえば、なんで晴々君は私と話してくれるのかしら、誰からも好かれない、こんな私に)
△雨森「晴々君」
〇晴々「ん?どうしたの?雨森さん」
△雨森「貴方、私に頻りに話しかけてくるけど、なんで、なのかしら」
△雨森(思わず聞いてしまったけど、変に思われていないかしら、大丈夫、よね?)
〇晴々「なんでって?」
△雨森(ああ、やっぱり変に思われてる!ど、どうしましょう、上手く説明しないと…)
△雨森「えっと、だって、私達元々接点無かったじゃない?」
〇晴々「あー、んー、それはなぁ」
△雨森( ごくり)
△雨森「それは?」
〇晴々「雨森さんをライバルとして見てるからかな」
△雨森(え?)
△雨森「ライバル?」
△雨森(やっぱり…テストの事かしらね…?)
△雨森「…あー…なるほどね?でもこの前のテストは私の圧勝だった気がするけど」
〇晴々「そ、それは関係ないだろ!?」
△雨森「あら、そう?」
△雨森(そっか、そんな単純なことだったんだ、晴々君は、純粋な気持ちで私に話しかけてくれてたんだ)
△雨森「影美」
〇晴々「?」
△雨森「名前で呼んでよ、私も貴方のこと名前で呼ぶから」
〇晴々「別にいいけど、急だな」
△雨森(勢いで言ってしまったけれど、理由を考えてなかったわ、えーっと)
△雨森「だって、せっかく仲良くなったんだから、お互い名字呼びってあまりにも他人行儀じゃない?」
〇晴々「まぁ、確かに?じゃあ、太陽、晴々太陽、な」
△雨森(太陽、私とは真逆の、素敵な光)
△雨森「太陽君か、あなたらしいわね」
〇晴々「そうか、まぁ、よろしくな」
△雨森(今日、私雨森影美は晴々君とお友達になりました)
△雨森「晴れ男の太陽君」
〇晴々「雨女の影美」
〇晴々(ふふ、最近勝率がいいぞ、今日も勝ってやる!)
△生徒A「あれ、今日雨森さんいないね」
〇晴々(ん?)
×生徒B「本当だ、どうしたんだろ」
〇晴々(確かに、いつもなら、俺よりも早く学校に着いてるはずだ)
〇晴々「なぁ、雨森さん知らない?」
◇生徒C「知らないな、先生に聞いて来ようか?」
〇晴々「ああ、いや、それなら自分で聞くから良いよ」
◇生徒C「遠慮するなよ、お前、普段宿題手伝ってくれるから聞いてきてやる、これで貸し借りなしだ」
〇晴々「相変わらず強引な奴」
◇生徒C「へへ、商売上手って言ってくれよ。先生ー、雨森さんって今日休みなんですか?…あー、そうなんですね。了解です、わかりましたー」
◇生徒C「晴々ー、今日は雨森さん休みだってさー」
〇晴々「そっか、ありがとう」
〇晴々(影美のやつ、今日は休みなのか、まぁいい、勝負はお預けだ、待ってろよ!影美!)
×N(その日は晴れたのだった)
〇晴々「雨女の影美」
×N(それから、雨森さんは一向に学校に来なくなってしまった、次の日もその次の日も、太陽が学校を照らしていた、晴々の心は曇っているというのに)
〇晴々「今日もいないのか」
〇晴々(もう一週間だぞ…大丈夫かよ、影美)
△生徒A「最近雨森さん来てないよねー、どうしたんだろ」
×生徒B「なんか、家出したっていう噂聞いたんだけど」
〇晴々「なんだと!」
×N(晴々は思わず立ち上がる)
×生徒B「ど、どうしたの晴々君?」
〇晴々「本当なのか?その話」
×生徒B「う、うん、あくまで噂だけど」
〇晴々「…ちょっと行ってくる」
×生徒B「え、どこ行くの?授業始まっちゃうよ!」
〇晴々「先生には急用だって伝えておいてくれ、俺は雨森を探しに行く」
×生徒B「え、ちょっちょっと!!」
×N(晴々は勢いよく教室を飛び出した)
×生徒B「行っちゃった…」
△生徒A「本当に雨森さんのこと好きなんだね、晴々君」
×生徒B「そうみたいだね」
△生徒A「私達は晴々君が怒られないように言い訳考えよ!」
×生徒B「そうだね!」
×N(そうして、今日の学校は晴れが去り、曇り始める)
〇晴々「雨女の影美」
〇晴々「噂が本当なら一大事だ、もう一週間経ってるんだぞ…?どう過ごしてるんだ…」
×N(晴々は考える、家出した雨森さんがどこに行くか、どうすれば見つけられるか)
〇晴々「…雨の日は元々嫌いじゃなかったが…」
〇晴々「…あいつがいたから、もっと好きになれる、そう思えたんだ」
×N(携帯を取り出し、周辺の天気情報を調べ、雨を探すために晴々は走り出す、太陽が照らし、輝く道を)
〇晴々「雨女の影美」
△雨森「晴れ男の太陽くん」
△雨森(太陽君とお友達になれて嬉しい、明日も楽しくお話したいわ)
◇雨森父「影美、ちょっと良いか?」
△雨森「…?なんでしょう、お父様」
◇雨森父「あの学校に行くのはもうやめて良いぞ」
△雨森「…え?」
◇雨森父「影美にはこれから、学校を移ってもらう、心配なことも多いだろうが、影美なら大丈夫だ。優秀なお前ならそこでもトップを狙えるはずだ」
△雨森「ちょっと待ってお父様!私そんな話…」
◇雨森父「言ってないからな、良いよな?」
△雨森(あまりにも不遜な態度、圧さえ感じる。言い返したい、そう思った。でも私には言い返す事などできなかった)
△雨森「…分かりました、お父様」
△雨森(…そう、これでいいの、私はお父様の敷いたレールに乗っていれば…でも…)
×N(晴々の明るい表情を思い浮かべる)
△雨森(本当にそれでいいの…?)
×N(雨が振り続けている外を見ながら、雨森さんは、そんなことを考えながら眠る)
△雨森「晴れ男の太陽君」
△雨森「っはぁっ…っはぁっ…っはぁっ…けほっけほっ…」
△雨森(ああ、こんなの…意味なんてないのに…)
×N(雨森さんは雨の中走る、遠くへ遠くへと)
△雨森(走るのって…思いの外疲れるわ…)
×N(そんな事を考えながら、止まり、走りを繰り返す)
△雨森「…どうなるのかなんて分かんない…でも…何もしないで離れ離れになるのは嫌っ…」
×N(声は雨に掻き消される、しかし、その決意はその場に残留した)
△雨森「晴れ男の太陽君」
〇晴々「雨女の影美」
〇晴々「はぁっはぁっ…ああくそ…どこまで走ってるんだ影美のやつ!今も移動してるとか言わねぇよな…?」
×N(すると、空が唐突に曇り始めた)
〇晴々「…?空が…急に、近くにいるのか!?」
×N(晴々は再び走り始める)
〇晴々「…っ!」
×N(晴々は公園で座り俯いている雨森さんを見つけた)
△雨森「……」
〇晴々「影美…?」
△雨森「太陽…くん…?」
×N(ゆっくり晴々を見上げる雨森さん、目の端に流れる物は涙のようにも見える)
△雨森「どうして…」
〇晴々「家出したって噂を聞いたんだ…」
△雨森「そうなんだ…」
〇晴々「そ…んだじゃ…よ…」
△雨森「…え?」
〇晴々「そうなんだじゃねぇよ!どんだけ俺が心配したと思ってんだ!」
△雨森「…ごめんなさい」
×N(雨森さんは再び俯いてしまう)
〇晴々「…何があったんだ」
〇晴々「雨女の影美」
△雨森「晴れ男の太陽君」
△雨森(私は全てを話した、父親に学校を移るように言われたこと、私はそれに逆らえなかったこと、そして、そんな現実を認めたくなかったことを)
〇晴々「なるほど…そんなことが…」
△雨森「あの時は逆らえなかったのだけど…でも…どうしても…本当に…今の学校を諦めたくなくて…それで…それでっ…」
〇晴々「落ち着け、影美」
△雨森「っ…ごめんなさい…」
△雨森(そう私が言うと太陽君は頭を搔き、少し経って腕を組み考え始めた、そうしながらしばらくすると歯を見せながら笑い始めた)
〇晴々「…っし!いっちょ俺が一肌脱ぐか!」
△雨森「え…?」
△雨森(一体何を考えてるのかしら…?)
〇晴々「俺が話をつけてやる」
△雨森「無理よ!」
〇晴々「やってみなきゃ分からない。それに、こんな逃げたって何も変わらないだろ?」
△雨森「でも…」
△雨森(もし…失敗したら…太陽君とは…もう)
〇晴々「失敗はさせないから大丈夫だ」
△雨森(こんなに心配なのに…)
△雨森「…そうね」
〇晴々「おう!」
△雨森(どうして…貴方と一緒なら、大丈夫だって思えるのでしょう)
×N(全てを掻き消してしまうような雨天の中、一筋の光が指す、ああ、世界はこんなにも明るかったのか、そう思える程にいつの間にやら空は晴れ渡っていた)
△雨森「晴れ男の太陽君」
〇晴々「雨女の影美」
ピンポーン
◇雨森父「なんだ」
〇晴々「雨森さんの同級生の晴々と申します、ぜひお話がしたいと思い参りました。」
◇雨森父「私はそんなお喋りをしている場合ではない。娘が帰ってきてないんだからな。」
△雨森「あの、お父様!」
◇雨森父「ああ、影美、いたのか、良かった」
△雨森「えっと…あの…お父…様」
◇雨森父「話は中で聞く、晴々君、だったかな?君も入りたまえ」
〇晴々「はい!ありがとうございます!」
◇雨森父「随分濡れてるようじゃないか、タオルと風呂の用意をしよう」
〇晴々「あ、ありがとうございます!」
〇晴々(意外と話が分かる人か…?)
間
◇雨森父「まず、影美を連れて戻ってきてくれたこと、感謝する」
〇晴々「いえ、僕が勝手にしたことですので、寧ろ迷惑だと思われなくて良かったです」
◇雨森父「…そんな事思う筈もない。…さて、話とはなんだ」
〇晴々「はい、雨森さ…影美さんが転校をするという話を聞かせて頂きました。」
◇雨森父「その通りだ、影美には学校を移ってもらう、それがなんだ?」
〇晴々「取り止めては頂けないでしょうか」
◇雨森父「だめだ」
〇晴々「どうしてでしょうか…?」
◇雨森父「影美にはこの学校に行ってもらわないといけないからだ」
〇晴々「その理由をお聞きしても?」
◇雨森父「…」
〇晴々「雨女の影美」
△雨森「雨女のお父様」
◇雨森父「今日は珍しく晴れているな…」
◇雨森父(呟いた一言が空っぽの部屋に響く)
◇雨森父(先程まで雨だったというのに一体何なのだろうか)
◇雨森父(影美が家を出てしばらく経った、捜索願は出しているが、未だ見つかっていない)
◇雨森父(大丈夫だろうか…)
◇雨森父(思えば、もっと前々から話していればこんな事もなかったのだろう。
とはいえ、影美がここまで反抗を示したのはこれが初めてだ、迂闊だった)
△雨森「影美も、成長しているんだな。…ふぅ」
ピンポーン
◇雨森父(一つ深呼吸をしたあとインターホンが鳴り響く)
◇雨森父(誰だ?)
◇雨森父(カメラに移る人物は知らない人物だった、恐らく学生だろうか)
◇雨森父「なんだ」
〇晴々「雨森さんの同級生の晴々と申します、ぜひお話がしたいと思い参りました。」
◇雨森父(同級生…?影美の…?何故だ…?)
◇雨森父「私はそんなお喋りをしている場合ではない。娘が帰ってきてないんだからな。」
△雨森「あの、お父様!」
◇雨森父(後ろから影美が姿を見せる、その姿を見て私は安堵した)
◇雨森父「ああ、影美、いたのか、良かった」
◇雨森父(この晴々という子が影美を連れ出したのか…?いや、仮にそうだったとして、ここまで雨に当たっているのはおかしい。連れて戻って来てくれた、と考えるのが自然か)
△雨森「えっと…あの…お父…様」
◇雨森父「話は中で聞く、晴々君、だったかな?君も入りたまえ」
〇晴々「はい!ありがとうございます!」
◇雨森父「随分濡れてるようじゃないか、タオルと風呂の用意をしよう」
〇晴々「あ、ありがとうございます!」
間
◇雨森父「…」
◇雨森父(影美は昔はもっと明るい子だった、雨が好きで、外に出てははしゃいでいた)
△雨森「…あの…」
◇雨森父(それが、母親を失ったショックからか、はしゃぐこともなくなってしまった。私には影美には幸せでいてほしい、今の学校が馴染まなそうであれば、無理にでも変えてやるのが親の役目…)
△雨森「あの!お父様!」
◇雨森父「…どうした…」
△雨森「お父様…その…私!今の学校を諦めたくありません!」
◇雨森父「…影美…それは何故だ」
△雨森「私…友達が出来ましたの…いつも明るくて優しいお友達が…一人ぼっちだった私に話しかけてくれた唯一の友達が!ですから…!」
◇雨森父「…」
×N(雨森父は窓を見て、天を見上げる)
◇雨森父(ああ…そうか…だからか…気が付かなかった…もう既に、あの子の光は近くにいたんだな)
△雨森「雨女のお父様」
〇晴々「雨女の影美」
〇晴々「そこまで気張る必要もなかったかもな」
△雨森「…そうね」
〇晴々(結局あの後割とあっさり今の学校に通うことを認められた、もっと説得に掛かると思っていたのだが…)
◇雨森父『晴々君』
〇晴々『なんでしょうか』
◇雨森父『娘を頼んだぞ』
〇晴々(なんていうか…)
〇晴々『はい、もちろんです!』
〇晴々「良い父親だったな」
△雨森「…ええ、そうね」
〇晴々「しかし、まぁ、わざわざ家まで送らなくたって大丈夫だぞ?影美の方が危ないだろ」
△雨森「良いの、お父様も許可してくれたから」
〇晴々「そういう問題じゃないんだがな…」
×N(しばらく静寂が流れる)
〇晴々「あのさ、雨森」
△雨森「何かしら」
〇晴々「…ふぅっ」
×N(しばらく天を見上げ、深呼吸をする、そして雨森に向き合う)
〇晴々「今回は俺の勝ちだな!これからもライバルとして、友達として、仲良くしようぜ!」
△雨森「…ふふっ…はっはっはっはっ…!」
〇晴々「なっなんだよ!急に笑いやがって!」
△雨森「だってっ…うふふっ…これから告白するみたいな感じで言うんですもの!」
〇晴々「んなっ…!なことするわけねぇだろっ!」
△雨森「あら、顔真っ赤よ?」
〇晴々「うっるせぇぇぇぇっ!!!」
×N(そんな晴々の声が天まで響く、雲一つない空の中、どこまでも)
〇晴々「雨女の影美」
△雨森「晴れ男の太陽君」
△雨森(友達として…か…もっとアピールしなきゃ駄目かしら…)
〇晴々「おはよう、影美」
△雨森「あら、おはよう太陽君、今日も私に負けに来たのかしら」
〇晴々「うっせ!お前だって負け越してる癖に」
△雨森「そうだったかしら?」
△生徒A「ねぇ、なんか前よりもふたりとも距離近くないー?」
×生徒B「ねー、絶対好き同士だよー、付き合っちゃえばいいのにー」
△生徒A・×生徒B「ねー」
〇晴々「うっし、今日も絶対負けねぇからな!」
△雨森「臨むところよ」
〇晴々「言ったなぁ!?後悔すんなよな!」
△雨森「しないわ、私が勝つもの」
〇晴々「言うじゃねぇかぁ!絶対勝ーつ!」
×N(きっと二人の少しすれ違った争いは、これからも続くのでしょう。これは、雨女の雨森さんと晴れ男の晴々の学校生活を描いたごくごく普通の物語だ)