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Episode 20. 宇宙開闢(補足②)

 物質世界における「質量・重さ」とは一体どのような概念なのか、考えたことはあるだろうか?両者は似ているようで全く異なる素粒子の性質的概念として区別される。


 質量は「物質ごとに定められた不変の物質量に関する情報」を指す概念とされる。マクロな世界ではその表現で問題ないが、ミクロな世界においては若干表現を改める必要があるだろう。何故なら、素粒子は通常の物質ではなく超ひもがダークエネルギーを獲得して固有の振動パターンを表現することで現実世界に顕現する実体のないエネルギー体だからだ。


 この場合、質量という概念は、素粒子が有する固有のエネルギー量と同義として位置付けることができる。


 質量が物理学的エネルギーと相互変換可能であるという考えは、アインシュタインが提唱した質量とエネルギーの等価性原理「E=mc^2」でも有名だ。例えば、熱い状態の物体は冷たい状態の物体よりも重さが増す。エネルギーを獲得して励起状態にある原子核は、基底状態にある原子核よりも微小ながら質量が増加する。


 逆に、エネルギーを失った物体は質量が欠損する。有名な事例としては、原子核の質量欠損が挙げられる。陽子と中性子の質量は原子核を形成する前後で顕著に質量欠損することが知られている。当該現象は、結合によって自由度が制限された素粒子の基底状態が変化することで、運動エネルギーの開放が起こることに起因しているが、同じことが原子核同士の結合、つまり核融合反応でも起こる。核融合反応により放出される膨大な熱量は、核融合に伴い原子核が欠損した質量に起因している。


 質量という性質を体現する情報は、物体の動かしにくさに関する性質「慣性」や、重さに関する性質「重力相互作用」にも影響を与える。


 慣性の影響はヒッグスボソンが媒介し、重力相互作用は未だ発見されていない幻の素粒子である重力子 (グラビトン)が媒介するとされている。だが現状、質量の発生メカニズムや重力の発生メカニズムはほとんど解明されていない。


 重力相互作用は、質量を持つ全ての物体を互いに引き合わせる力(万有引力)で、4種類の基本相互作用の中では最弱の力に位置付けられている。


 例えば、地球という超巨大な質量を持つ物体が地上の小さな人や物を引きつける力を想像してみて欲しい。抵抗できないようなレベルの強力な重力は掛かっていないことが経験的・感覚的に分かると思う。その理由は、単位質量あたりに発生する重力が圧倒的に弱いからだ。その程度の力で地球はどうやってここまで巨大化できたのか疑問に思うかもしれないが、その辺りは星形成のメカニズムで後々整理することになるだろう。


 重力の荷量は質量とされており、対象間の距離が離れるほど引力は弱まり、距離が近づくほど引力は強くなる。身近な例で言えば「潮汐現象」が挙げられる。月に近い海では月の万有引力で海水がもり上がり満ち潮となる。


 重力相互作用が他の相互作用に比べて圧倒的に弱い理由としては、重力子が空間単位に束縛されないタイプの超ひもから顕現しているためとする理論が有力視されている。


 先に述べてきたとおり、人間にとって既知の素粒子は、10次元以上の方向に折り曲げられた空間単位の折り紙の膜に末端が固定された超ひもが固有の振動パターンを獲得することで顕現するものとされている。一方、重力子については、空間単位に固定化されるための末端が存在しないリング状の超ひもから顕現されていると仮説される。この場合、重力子は空間単位を自由に出入りできるようになるため、空間単位の外部に拡散する分、空間内の重力子の密度は他の素粒子と比べて薄くなる。これにより、影響力の伝達効率が大幅に削がれ、他の相互作用よりも弱くなるものと理論付けされる。


 なお、現在まで重力子が発見されていない理由についても重力子の存在密度の薄さ、空間にトラップされない性質が主な原因として考えられている。ひも状か、リング状か。そもそもの問題として「ひも」じゃなかったらどうするのだろうという心配はさておき、そのくらいの構造差であれば許容し得るだろうか…。


 重力相互作用の事例を挙げればキリがないが、重力に起因する代表的な自然現象としては、ニュートンの万有引力の法則、重力レンズ効果、重力波、ブラックホール、ダークマターの万有引力による星形成等が挙げられる。


 ニュートンの万有引力の法則で有名なのは、空気抵抗が同じ物体同士は質量に関係なく同じ速度で落下するという「ガリレオの落下法則」だろう。木製の玉と鉄製の玉を高所から同時に落下させると、地面に同時に着地するというアレだ。


 通常であれば、鉄製の玉の方が質量が大きいため、木製の玉より強い重力で地球に引かれて早く着地することが予想されるが、実際にはそうはならない。その理由は慣性の大きさの違いにある。鉄製の玉は木製の玉より慣性が大きい。つまり、外力に対して速度変化しにくい。当該現象は、重力に関する質量差の影響を慣性が綺麗さっぱり打ち消すことで起こっている。偶然の一致というやつだろうか…。


 重力レンズ効果は、遠くにある天体の像が手前にある天体の重力によって歪んで見える現象だ。当該現象は、遠くにある天体から発せられた光が、手前の天体の重力によって歪められた空間を通過することで起こる。


 ちなみに、手前の天体がダークマターでも同様の現象が起こるため、重力レンズ効果を応用してダークマターの宇宙における分布と質量を推定する試みもなされている。


 重力波も似たような原理で、巨大な重力を帯びたブラックホール同士が互いに衝突すると、周囲の空間が波打つように歪められる。実際、そのような経緯で発生した重力波が地球に到達した事例も存在する。

 

 ダークマターの重力による自然現象は後々言及することになるだろうが、最も代表的な現象として星形成が挙げられる。星の形成にはダークマターハローと呼ばれる大きな重力を発生させるダークマターの塊が関与している。星形成の初期では、ダークマターハローの重力にガスや塵が引き付けられ、とある境界を越えた段階で自己重力による凝縮反応が起こり始める。その後、大体百万年から一千万年程の時を経てゆっくり巨大な星へと至る。


 宇宙には水素やヘリウムが膨大に存在しているため巨大な恒星が生じやすい。恒星が太陽の30倍以上の質量を獲得すると、中心部の圧力が限界を迎えて重力崩壊し、超新星爆発後にブラックホールと呼ばれる重力現象を引き起こす天体が残骸として残る。物理法則上、星は無限に巨大化することはできないということだ。


 ブラックホールの正体は中心部にある天体 (特異点)で、その大きさは多種多様だが、いずれも重力崩壊によって密度無限大レベルで圧縮され続けており、周囲の空間単位を強烈に引きつけ続けるほどの強大な重力を発生させている。


 重力は特異点に近づくほど強くなり、ある境界線を超えると光すらも脱出できなくなる。この境界線は「事象の地平面」と呼ばれる。ちなみに、光子には質量が無いため重力の影響は直接的には受けないが、空間単位を媒介に顕現しているために重力の影響を間接的に被っている。


 リサ曰く、空間単位の密度変化は、空間単位を媒介にして顕現し移動する素粒子の移動速度にも影響を与えるのだという。つまり、空間の歪み具合いに応じて自然現象全般の速度が場によって変化し、時間の流れが変わる。ブラックホールの事例で言えば、内側ほど空間単位の密度が濃くなり時間の流れが地上よりも遅延する。ちなみに、光速を超える乗り物を作ればタイムトラベルができるという話があるが、光速系においても単位時間当たりに通過する空間単位の量が劇的に増加するため、同様の理屈で地上よりも時間の流れが遅延するのだという。


 その理屈で考えると、タイムマシーンは未来を待つことはできても過去には遡れないのではないかと思ったりもするが…気のせいだろうか。


 あらゆるものを強烈に引き寄せ続けるブラックホールには、物理学的に様々な問題が提起されている。有名なのは「ブラックホールの情報パラドックス問題」だろう。


 ブラックホールが引き寄せる物質もとい素粒子は、「固有のエネルギー」すなわち「情報」を有している。先にも述べたが、通常、エネルギーを持った素粒子を圧縮し、運動エネルギーを抑圧した場合、原子核の核子間相互作用と同様の理屈で基底状態が変化し、余剰のエネルギーの開放が起こる。


 だが、ブラックホールの場合においては、理論上、開放されたエネルギーすらエントロピー増大の法則に従ってブラックホール内部から外部へと逃れることはできない。ブラックホールが水爆的に爆発して蓄積された膨大なエネルギーの開放が起こるようなストーリーも考えられるが、蒸発して消えることはあっても爆発的に消滅することはないため説明がつかない。加えて、ブラックホールの想定寿命は非常に長く、その間に全くエネルギーの開放が起こらないというのは物理的に考え難い。


 結局、ブラックホールに飲み込まれた情報・エネルギーは実質的に宇宙から失われるものと考えられていた時代があった。これを「情報喪失問題」という。当該仮説が事実である場合、ブラックホールはエネルギー保存則・熱力学第二法則を破る例外的な事象となり、物理学者は宇宙の根底を成す法則を見直す必要に迫られ困ったことになる。


 だが近年、ブラックホール内部に蓄積されたエネルギーはブラックホール外部へと「ホーキング輻射」等の現象によって徐々に解放されることが明らかになっている。強大な重力の影響を逃れてエネルギーを外部へと開放するその仕組みは、案の定、かなりぶっ飛んでいる。


 先に述べたとおり、ブラックホールの重力に囚われた素粒子は事象の地平面を通過する前後で外部に這出ることができなくなる。この場合、事象の地平面の内側に囚われた素粒子は事象の地平面近傍の空間単位・超ひもに量子もつれ的情報伝達機構を介して自らのエネルギーに関する情報を受け渡す。


 情報を受理した空間単位・超ひもはエネルギーを獲得し、超ひもが振動して粒子・反粒子のペアとして物質世界に顕現する。反粒子はブラックホールの内側に飲み込まれて特異点に収束された粒子と結合することで対消滅し、一方の粒子はブラックホールの外部に輻射される。これにより、ブラックホールはエネルギー保存則を遵守し、膨大な時間をかけて徐々に蒸発していく。


 当該理論には相互作用の媒介を必要としない量子もつれ現象のデジタルチックな原理が贅沢に取り入れられているが、実際、この見立ては正しいらしい。極論かもしれないが、このような仕組みを導入しなければ、ブラックホールの重力に抗うことは不可能ということだ。


 重力が原因で生じる大規模な現象を一通り挙げてきたが、それらの共通点として、重力は空間と相互作用するという性質が見て取れる。アインシュタインの相対性理論においては、量子力学の立場とは異なり、質量情報で生じる空間の歪みが重力源となっているという見解が示されているが、具体的な重力の物理的発生機序について十分な説明がなされていない。


 リサ曰く、重力子はエネルギー情報を持つ空間単位・超ひもの全てと相互作用する性質を持っていて、これにより空間の歪みが起こるらしい。例えば、真空エネルギーを持ちながら素粒子としては顕現していない状態の空間単位・超ひも (仮想粒子状態の空間単位・超ひも)とも相互作用する。実際、粒として顕現できなくても波として顕現する空間単位・超ひもが存在するように、この世界には粒化・波化にすら至らない潜在的素粒子で満ちている。そのような真空の状態は「ディラックの海」と表現される。

 

 難しい話になってしまったが、僕達が有する肉体アバターはエネルギーもとい情報の一形態であるということが何となくふわっと感じられた気がする…。とりあえず、重力については尋常でないという点だけ押さえて大体分かったことにしておこう…。


 最後に、ダークマターとダークエネルギーについて補足整理していく。


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