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092_シオンの意思


 血は繋がってなくても、本物の姉妹のように全てお見通しのシオン。


 そんな彼女だが、何を思ったか小さく溜息をついた。


「でも不思議。フィオラがあなたに心を開いている理由が私には理解できない」


「うーん。そうは言われても……」


 出会いの流れを振り返ってみると、思い当たる節は少しだけあった。


 それは、対等な関係を築いたということだ。


 上下の関係では友好関係へと発展することは難しいだろう。


 例えば、デルセクタとフィオラは面識があったが友人と呼べるような関係ではなかった。


 フィオラのことを『魔物に襲われている少女』としてブレッグが誤認したこと。


 それがきっかけで、二人は対等に意見を言い合える仲となった。


 だが、それ以上に――


「たぶん、俺も一人でいることが多かったから」


「あら、そうなの?」


「うん。一人で生活した方が他人に気を遣う必要がなくて楽だろ」


「だから仲良くなれたのかしら」


「どうだろうね」


 そのとき、布の擦れる音がして、ブレッグはベッドへと視線を下げる。


「う……ん……」


 フィオラが自分の胸のところらへんに手を置き、服を強く握っていた。


 悪夢にうなされているのか、顔を歪めて苦しそうにしている。


 しかし、意識の覚醒が近づいていることは確かであった。


「お……おい」


「えぇ。もうすぐ目が覚めそうね」


 自然と表情が和らいだブレッグに対して、シオンの表情は逆に厳しくなっていく。


「今のうちに言っておくけど、私の魂があなたの中にあることは誰にも言わず、秘密にした方がいいわよ」


「どうして? フィオラなら受け入れてくれると思ったけど」


「ほら、この子は責任感が強いでしょ。きっと自分を責めてしまうから」


 ブレッグは靄がかかったようにぼーっとした頭を動かして少し考える。


 思い浮かんだのは頭を深く下げて謝罪していたフィオラの姿。


 シオンを止められなかったことは自分の責任であると主張していた。


「それに、フィオラを生かそうとしたのは私とあなたの我が儘なのだから、あまりフィオラを巻き込みたくないの。もしも、私たちが世界から追われ、命を狙われることになったとしても、二人だけで戦いましょう」


 その言葉にはシオンの行動原理が含まれており、ブレッグは彼女のことが少しだけ理解できた気がした。


 彼女はたった一人でフィオラのために戦い続けてきたのだ。


 最終的にはフィオラすらも敵になり、誰一人として味方してくれる人がいない状況でも、決して信念を曲げることはなかった。


 それほど強いシオンの意思を、ブレッグは否定することことが出来ない。


「……わかったよ。これは二人だけの秘密にする。それに、誰かに打ち明けたところでなんの利益もないし」


「その通り。リスクを増やすだけ……」


 その時、シオンの横顔に緊張が走ったことをブレッグは気づく。


「なにかあった――」


「静かにして」


 ぴしゃりと言われてしまったブレッグは口を閉じた。


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