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084_黒い瞳に映る姿


 ブレッグはフードを被った人物の後ろを歩いていた。


 警戒したところで意味はないと思いつつも、必要以上に大きく間隔を空けている。


 太陽は姿を消し、微かに照らす夕陽だけが頼りの状態で、山の中を突き進む。


 ――この人の目的はなんだ?


 山に入る前から思っていた疑問を改めて自問する。


 間もなく夜が訪れるというこの時刻に、山を歩こうとは普通の人間であれば考えない。


 ブレッグも山を熟知していなかったら早期の段階で引き返していたところだ。


 ――よほど、俺を連れていきたい場所があるってことだよな。それか罠か。


 罠だった場合には素直に降参しようと覚悟を決める。


 その時だった。


 突如として大地が揺れ、ブレッグはよろめく。


「うわ!?」


 近くに生えていた樹木に掴まり、ブレッグは堪える。


 山全体が揺れるという未知の体験に驚きながらも、事態を把握しようと周囲を見渡す。


 すると、以外にも揺れはすぐに収まり、静寂が訪れた。


「一体何が……もしかして……」


 普段から薄暗い雰囲気のこの場所では、暗すぎて遠くまでは見えない。


 唯一視界に入ったものといえば、膝を地面につけたフードの人物だ。


 その姿にブレッグは既視感を覚える。


 ――衰弱している? 


 想起したのは、シオンと戦闘した後のフィオラの姿。


 風に吹かれたら飛んで行ってしまいそうなほど、軽く、脆く、非力に見えた。


 弱弱しく立ち上がったその人にブレッグは近寄る。


「あの……大丈夫ですか」


 肩にそっと触れようとしたとき、歩き出して避けられてしまった。


 山を進み続ける目の前の人物の背中を、ブレッグは見つめる。


 ――この山で何かが起こっている。それに、胸騒ぎがする。


 急いでブレッグは後に続く。


 完全に日は落ち、樹木の隙間から差し込んだ月明かりを頼りに進む。


 フードを被った人物は何度か躓いて転びそうになるが、それでも足を止めることはなかった。


 しばらく歩いた後、立ち止まる。


「ん?」


 フードの人物は道の端により、身体を半分だけ振り返る。


 相変わらずフードを深く被っているせいで顔はよく見えない。


 そして、道の先を指さすと、ブレッグも視線をそちらへ向けた。


 跳ね上がった鼓動にブレッグは息苦しさを覚える。


 薄暗い夜道、遠くで倒れている少女の姿がブレッグの黒い瞳に映る。


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