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081_叫び続ける男


「くっ、ははは……その様子なら、もって数分といったところか。終わりだな」


 高笑いしていた男はフィオラが姿勢を低くして何かを備えていることに気付く。


「……あぁ?」


 よく見ると、残された左足でばねのように力を溜めていた。


 男は肩の力を抜き、溜息をつく。


「やめておけ。俺を殺したところで時は巻き戻らん。その足もだ」


 そんな男の忠告を無視して、フィオラは渾身の力で大地を蹴った。


 大地すれすれの高さを高速で飛び、男に近付く。


「全く。話を聞かない奴だな」


 男はフィオラに向かって稲妻を放つ。


 しかし、そのうちの大半は大地へと吸われていった。


 フィオラの考えを理解した男は眉を上げる。


「……だが全ては避けれまい」


 稲妻を放ち続ける男。


 そのうちの数本がフィオラへ向かう。


 勝利を確信した男はにやけたとき、フィオラは左手で稲妻を受け止めた。


「捨て身か!」


 瞬時に灰と化し崩れ落ちるフィオラの左腕。


 右足と左腕を失いまとも終わりを迎えようとしている彼女の身体。


 しかし、そのような状態でも、フィオラの瞳の色は褪せていない。


 男の足元に潜り込むと右手で大地を掴む。


 そして、腕一本で大地を押し返し、盛大に男の顎を蹴り上げた。


「がぁっ……!」


 砕けた歯が飛び散り、男の身体は空高く飛び上がる。


 宙を漂いながら空を見つめ続け、静かに、不気味に笑う。


「果たした。驚かされた場面はあったが、勝者はこの俺だ」


 笑みの奥では綺麗な歯が生えそろっていた。


 男が声を出して笑い始めたとき、突如として男の視界は黒で染め上げられた。


 光も、音も届かないその空間は、世界と隔絶されているようだ。


「……何が起こった。身体が動かん」


 全身ががっちりと固定され、身動きが全く取れない。


 その硬度は石を彷彿とさせる。


 だが、石とは異なり仄かな温もりを男は感じた。


 数秒考えた男はある結論を導く。


「俺は……樹木の中にいるのか?」


 動揺は消え、再び笑みが戻ってくる。


「無駄な足掻きだ。さっさと抜け出すとしよう」


 男の左手を中心に周囲の空間が捻じ曲がる。


 時は進み、樹木は枯れ果てる――はずだった。


「どういうことだ?」


 信じられない様子の男は『理』によって時間を加速させ続けるが、それでも状況は変わらない。


 樹木は強固なままであり、男も身動きが取れないままだ。


 次第に男は焦り出す。


 額を流れた汗が樹木に吸収されていった。


「早くここから出なければ。小娘が灰と化して消えてしまう前に……!」


 なりふり構わず稲妻も発生させてみる。


 空間の捻じ曲がり方も強くなり、より一層時間の進みが早くなっていく。


「あぁ! くそっ!! ここまで追い詰めたというのに!!」


 樹木の中で動けなくなった男が出来ること。


 それは、ただ叫び声を上げ続けることだけだった。


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