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070_見覚えのある顔


「なぁ、俺たちはいつまでこうしていればいいんだ?」


 膝を抱えて体育座りをした騎士Aが呟くと、同じ格好をした騎士Bが答える。


「人手が必要になって呼ばれるまでじゃないか?」


「いやいや、あの状況で人手が足りないことなんでないだろ」


 つっこみを入れた騎士Aは、せっせと働く樹木達を指さす。


 軽く数えても二十本はある樹木達が、互いに連携しながら死者の埋葬を進めていいた。


 ある者はスコップと器用に操って墓を掘り、またある者は棺桶を運び、さらにある者は棺桶の材料となるため切り出されやすいように寝転がっている。


 肝心のフィオラはというと、樹木の枝――肩のような場所に座り監督をしていた。


 呆然としている騎士と同じく、樹木達の作業風景を見つめていたブレッグは背後から声を掛けられる。


「凄まじいな。フィオライン様は」


 重低音でありながら若さの残っている声はダールのものである。


「本気の彼女はもっと凄かったよ」


「……想像もつかんな。今でさえ、騎士数十人分の作業をたった一人でこなしてしまっているのに」


「俺もそう思う」


「一番凄かった魔法を聞いてもいいか?」


 樹木達の作業を見つめながら、少し考える。


「それは、クリスタの召喚かな」


 『ほぅ』と呟いたダールは眉を上げた。


「俺もクリスタについてはよく知らないんだけど、龍というか、魔物というか。とにかく大きくて力強い生き物なんだ」


「あの樹木達よりもか?」


 ブレッグはこくりと頷く。


「クリスタはあれよりもっと太い樹木を根元から圧し折って、軽々しくぶん投げてたよ」


「どんな戦闘なんだ……」


「シオンとフィオラの殺し合いを言い表すなら『苛烈』って感じだった。規格外の力で互いの命を奪い合うんだ。本当に、恐ろしかったよ」


 その話を聞いたダールは顎に手を添えて何かを考える。


「この村を訪れたとき、粉々になった民家があったが、あれは戦闘の形跡たっだということか。やはり……我々の隊がシオンと出会わずに済んだことは幸運だった」


 シオンと騎士隊が衝突していたら、さらなる犠牲者を出していたことだろう。


 そう考えれば、ブレッグが負った重傷も安いものかもしれない。


「うーむ。聞けば聞くほど疑問になるんだが、ブレッグとフィオライン様はどういった関係なんだ?」


 ダールの問いかけにブレッグは即答できなかった。


 少し悩んでから答えを出す。


「……友達?」


「――なぜ俺に聞き返す」


「フィオラが俺のことをどう思っているかわからないからさ。俺は友達だと思ってるけど、向こうからしたらただの知り合いかも」


「そんなことはないだろ。俺から見ても、二人は恋人同士ではないかと思っていたくらいなんだ」


「茶化さないでくれよ」


「そうか? 俺たちみたいないつ死んでもおかしくない人間は、いつでも自分に正直に生きているんだ。ブレッグもそうなれと言いたいわけではないが、後悔はするなよ」


 褪色者であるフィオラは短命であることを暗示しているのだ。


 しかし、だからといって、恋人になりたいというと微妙なところだった。


 今はまだ答えを出すことの出来ないブレッグだが、ダールの親切心は素直に受け止めることにする。


「わかったよ。ところで、やけにフィオラのことを詳しく聞きたがるけど、何か理由でも?」


「あー、なんだ」


 最初は口籠るダールだったが、やがて開き直る。


「実は、どこかでフィオライン様の名前を聞いたことがある気がしてな。かなり昔な気がするんだが」


「へぇ、それなら直接聞いてみたらいいじゃないか」


「いやいや、恐れ多いことを言うな」


 表情に焦りが現れているダールにブレッグは笑う。


「大丈夫だって。昔の話を聞いたくらいで怒ったりなんかしないから」


 二人が騒がしくしたせいか、樹木の肩に座っていたフィオラは振り向き、ブレッグと目が合う。


「フィオラー! ちょっといいか?」


「あ、おい!」


 小声で叫んでいる騎士を無視して、ブレッグは手を大きく振る。


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