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068_余生の過ごし方


 デルセクタを除いた四人は村の一角にある墓地を訪れていた。


 一つとして同じ墓標のない手作り感満載の墓が一行の視界に入る。


 そこら中に雑草が生えているが、道や墓標の周辺の雑草は刈り取られていることから、きちんと管理されていることが伺える。


「本当に手伝ってもらっていいんですか?」


 後方を歩いているフィオラに向かい合い、レームは問いかける。


「いいの。私も、何か役に立ちたいから。それに部屋の中でじっとしているのも苦手だし」


 デルセクタが小屋を出た数分後、ダールは部下に指示を出しに行こうとした。


 そのとき、フィオラが手伝いたいと申し出たのである。


 結果、人手はあるに越したことはなく、騎士は護衛対象の近くにいた方が良いという結論に至った。


「体調に異変を感じたらすぐに教えてくださいね。ブレッグも」


「もちろん、そうするよ」


 と返事をしたブレッグは、レームの視線が自分の傷へと移っていることに気付く。


「本当は、小屋で安静にしていた方が良かったんだけど」


「継ぎ接ぎ男がどこかに潜伏しているかもしれない以上、一緒に行動した方が安全だって話をしただろ」


 レームのぼやきをダールが窘めた。


「わかってる。さっきのは薬学師としてのただの意見よ」


 冷たく言い返してはいるが、仲が悪いわけでもなさそうだ。


 道を歩く二人の距離間は、少しだけ近いように見えた。


 墓地に入って少ししたところで、鎧を着込んだ騎士数名と、村人二人が話し合いをしている現場に遭遇する。


 両者とも睡眠をとっていないのか、目の下にくまを作りながらも話し合いを進めていた。


「少し話を聞いてきますので、ここでお待ちください」


 そう言ってダールが離れていくと、レームも彼の後ろをついて行った。


 フィオラとブレッグは取り残される。


 二人きりになってしまったブレッグは慌てて話題を考える。


 聞きたいことは山のように沢山あったが、まずはこれだ。


「フィオラは魔力を回復できたのか」


「うーん、まだ全回復って感じではないけど、だいぶ元気になったわ。心配しないで、墓石くらいなら持ち運べると思う」


「墓石か……」


 仮にブレッグが万全の状態だったとしても、持ち運べる自信はない。


 身体強化の魔法の偉大さを思い知る。


「俺も魔法で身体を強化出来たらなぁ」


「えっと、出来ないの? 魔法の中でも基本的な部類に含まれていると思うけど」


 ブレッグ目を閉じては首を横に振る。


「魔法は独学で覚えたから、知らないことだらけだよ」


 何が基本で、何が発展なのか。魔法使いとは何を学ぶべきで、何を成すべきなのか。


 師を持つことのなかったブレッグは何も知らない。


「それなら、今度教えてあげるわ。魔法の基礎知識」


「え?」


 フィオラの提案に驚愕し、思わず目を見張る。


 というのも――


「忙しいんじゃないのか? 確かそんな話をしてた気が」


「そうね。忙しかった。でも、私の役目はもう終わったから」


 シオンを止めることが出来た今、これから先の予定が全て空いたということをブレッグは察する。


「……いいのか?」


「ええ、もちろん。それに、これからはしばらく休むつもりだったのよ。時間はたっぶりあるから、ブレッグが知りたいことなら何でも教えてあげられるわ」


 ブレッグは嬉しさから鼓動が早まるも、フィオラの言葉に心がざわついた。


「それって……」


 思い浮かんだ単語は『余生』。


 死期を悟った老人が心の休まる場所でその時を迎えようとしているようだ。


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