062_引き攣った顔
「食べました……というか、フィオラにも食べさせました」
素直に自白した。
嘘をついて黙っていたばかりに、フィオラが命の危機に晒されてしまっては最悪だ。
深刻な面持ちのブレッグに対し、レームは怒るでも問い詰めるでもなく、ただ真っ直ぐ見つめていた。
「臓器は食べさせてないんでしょ?」
「それは……はい」
「なら大丈夫。肉を食べただけなら大した影響はないわ。仮に影響があったとしても、身体がぽかぽかする程度。むしろ――」
レームは手を動かしながら話を続ける。
すり鉢状の器に入れられた素材たちは粉になっていたが、されに細かく磨り潰され続ける。
「今回は食べていてよかったわ。魔物の肉には魔素が含まれているから、魔力を使う前や使った後に食べると身体にいいの。グッジョブよ」
「……そっか」
レームの言葉にブレッグは救われる。
それと同時に、無知というのは恐ろしいものでもあると実感し、これからは軽はずみな行動は慎もうと心の中で誓う。
そのとき、巨大な水瓶を両手で抱えたダールが小屋に戻ってきた。
「遅くなりました!」
そんなに大量の水をフィオラが飲むとは思えないが、ダールの誠実さが水瓶に現れたのだろう。
デルセクタは額を手で押さえて溜息をつくが、レームはにっこりと笑って迎え入れた。
「ありがとう。重そうだからここまで持ってきて」
「もちろん」
ドスンという重い音と共に水瓶が下ろされる。
これだけ水があれば暫くは水に困らないだろう。
レームは鞄から取り出した新しい器を柄杓代わりにして、なみなみに注がれた新鮮な水を汲み取る。
そして、磨り潰し終わった粉と水を混ぜ合わせ、眠ったまま動かないフィオラの口に少しずつ流し込んだ。
「よし、あとは様子をみましょう。そうだ、あなたも怪我をしているところがあれば診るけど」
フィオラの治療が終わったレームは振り返り、ブレッグに話しかける。
この小屋には光源がランプ一つしかなく、怪我をした腕は影になっていてレームから見えにくくなっていた。
自分の怪我は命に別条がないからブレッグは黙っていたが、痛み止めの薬を貰うだけでもいいから治療して欲しかった。
「それなら……この腕と胸の怪我を診て欲しいんだけど」
火傷と骨折でぐちゃぐちゃになった腕を見たレームは顔が引き攣る。




