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060_テーブルに置かれた写真立て


 蜘蛛の巣のかかった天井。陽の光によって窓際だけカサカサになった床。テーブルに置かれたランプと写真立て。


 生活感の溢れる小さな小屋は、今やすし詰め状態となっており、せめてもの換気としてドアと窓を開け放っていた。


 小屋の入り口を挟むように武装した二名の騎士が見張り、不審な人物が近づいて来ないか目を光らせる。


 小屋を入ると十名ばかしの軽装の騎士が立ち並び、指示を聞き逃さないように聞き耳を立てている。


 そして、小屋の奥へと入っていくと簡素なベッドにフィオラが横たわり、ブレッグ、ダール、デルセクタの三名が彼女を囲んでいた。


「本当に魔力の消耗が原因なのか?」


 デルセクタの渋くて男らしい声と、蒼くて鋭い視線が向けられる。


「はい。本人はそう言ってました」


「そうか。普通の人間なら魔力を使いすぎても、最悪は気絶する程度なのだが……」


「褪色者は違うんですよね」


「……褪色者は自身の魔力や能力に比べて肉体の組成が脆弱だからな。褪色者でも若いうちは問題ないが……残念ながらフィオライン様は若いとは言えない」


「つまり……」


「二度と目を覚まさない可能性も考え得る」


 突きつけられた現実に空気が重くなった。


 フィオラのためなら何でもする覚悟はあるのに、何もできない自分をブレッグはもどかしく思う。


 死んでいるかのように眠っているフィオラの顔を覗き込む。


 ――俺がもっと強ければ、フィオラの魔力を限界まで消耗させなくてすんだかもしれない。


 冒険者という業種から身を引いて以来、魔法の練習を怠っていたことを後悔する。


 もし、怠慢が理由で大切な人を失うことになったら、一生後悔するだけでは済まないだろう。


 呆然と見つめていると、力が抜けた肩にデルセクタのごつくて大きな手のひらが触れた。


「兎に角、レームが到着したら診断してもらう。それまで私たちに出来ることは何もない」


「……はい」


 デルセクタの手は熱量を持っており、触れられている箇所が暖かくなると同時に力を分け与えられているようだった。


「お主はよくやった」


「そうでしょうか」


「あぁ、私が保証する。それから、お主も疲れただろう。椅子にでも座って休むとよい」


 誰よりも早くダールがテーブルに近付き、一脚の椅子を持ち上げるとブレッグの真後ろまで運んだ。


 入り口付近で立っている騎士たちも動こうとするが、彼らが一歩を踏み出す時には運び終わっていた。


「さぁ。遠慮せず」


 ダールから椅子に座るようにとジェスチャーされる。


「……では」


 腰を下ろしたブレッグは一息つく。


 そして、レームという名の人物が到着するのを無言で待ち続ける。


 男ばかり――いや、屈強な男ばかりいる部屋の温度と湿度は異様なほど高く、額から流れ出た汗をブレッグが拭ったとき、入口の方から涼しげな女性の声が聞こえてきた。


「すみませーん! 入りまーす!」


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