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058_赤髪の騎士


「はぁ……はぁ……もう、無理……」


 フィオラを背負いながら山を駆け降りる。


 炎の幻影からは既に抜け出しており、継ぎ接ぎ男に追いつかれないよう速度を落とすことなく走り続けていた。


 月明かりは街の街灯のように明るく、二人の足元に小さな影を作るほどだ。


 青年から見れば小さくて軽い少女ではあるものの、激戦を繰り広げた後の体力では容易ではなかった。


「フィオラ……生きてるか……?」


 返事はないが死んでいるわけでもなさそうだ。


 気絶しているのかもしれないし、眠ってしまっただけなのかもしれない。


 何れにしても、フィオラが休める場所を確保する必要があった。


「まずは……村へ行って……毛布を貰おう。それから、どこかで……野宿だ」


 本当ならベッドに寝かせてあげたいという気持ちも当然あるが、それがどれだけ危険な行為なのか理解している。


 寒くて地面が硬い場所で夜を明かすことになったとしても、継ぎ接ぎ男から絶対に見つからない場所が最低条件である。


 これからの行動を脳内で整理していると、いつの間にか山の出口まで来ていた。


「つ、ついた……!」


 後は適当な民家から毛布を拝借するだけだと浮かれていたブレッグに怒声が響く。


「そこの男! 止まれ!」


「……え?」


 村に辿り着いた二人を待ち構えていたのは、甲冑を着込んだ騎士の集団だった。


 二十人ほどはいるだろうか。


 屈強な男たちは剣や槍の切っ先をブレッグに向け、男たちの背後に控えている飛竜は牙を剝き出しにして威嚇している。


「次から次へと……なんなんだよ」


 挟み撃ちにあったブレッグは行き場を失い、ぼそっと呟く。


 周囲をざっと見渡すと村の至る所に騎士の姿が見え、さらには村と山の境界にも点々と騎士が配置されている。


 少なく見積もっても百は超えているだろう。


 ここまで圧倒的な戦力を見せられると諦めもつくというもの。


 騎士の集団と睨み合いを続けていると、先頭に立っていた赤髪の騎士が一歩前へ出る。


 騎士の中でも一回り体格が大きく、短く切り揃えられた赤髪は清潔感を感じさせた。


 そして、眉間に力が入っており、彫りの深い顔立ちは厳しい表情を見せる。


「名を名乗れ! ここで何をしている!」


「一度にいくつも聞かないでくれよ」


 目を伏せて誰にも聞こえないくらい小さな声で反論する。


 これが今のブレッグに出来るささやかな反抗だった。 


「貴様……聞いているのか!!」


「聞こえている……ブレッグだ。それで、こっちがフィオラ」


 両手が塞がれているため顎でフィオラを指すと、赤髪の騎士は槍の切っ先を下した。


「一応、指定されていた人物ではないか。それにしても、フィオラ……どこかで聞き覚えのある名だ」


「ダール隊長、総帥を呼んでまいりますか?」


「あぁ、頼む。俺だけでは判断できん」


 取り巻きの中にいた一人の兵士はさっと剣を鞘に納めると走り出す。


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