039_シオンの理
がら空きになった方向を背にしたシオンは、目前まで来ていた樹木達を迎え撃つ態勢をとる。
「ふふふ」
最初にたどり着いたのは複数の枝を動かす細長い樹木だった。
同時に振り下ろされた樹木の枝をシオンは搔い潜り、懐に入り込むと掴みかかった。
その瞬間、樹木は光の粒子へと分解され、シオンの腕へと吸収されていく。
全ての粒子を吸収しきったとき、シオンの両脇から迫っていた2本の樹木が枝を鞭のようにしならせて挟撃する。
しゃがんで容易く回避すると、片方の樹木に対してシオンは握りしめた拳で殴り掛かった。
樹皮に深くめり込み、後方でひしめいていた樹木諸共押し返す。
そして、逆側の樹木の顔らしき部位に飛び掛かると、膝蹴りを入れてバラバラに砕いた。
「あはははは!」
そこから先は美しくも恐ろしい光景が繰り広げられた。
次々と襲い掛かる樹木に対し、最小の動作で回避して反撃する姿は舞姫のようで、嬉々として破壊する姿は鬼人のようだった。
殴りと蹴りを巧みに組み合わせ、それでも対処が間に合わないときは掴んで光の粒子へと分解する。
僅か数分の間に、活動を停止した樹木の亡骸が積みあがっていく。
いつしか密集していた樹木の間に隙間ができるようになっていた。
森の至る所で生み出され成長する樹木。
その成長速度を上回る速さでシオンは破壊していたのだ。
一本の枝をへし折ると、フィオラへ向けて全力で投げつける。
樹木すら簡単に投げ飛ばせるシオンの怪力により、人の動体視力では到底追うことのできない速度で枝は飛ぶ。
フィオラに届く直前、バチンという音が鳴り枝は地面に叩き落された。
「随分と器用なことができるじゃない」
シオンの漆黒の瞳は、フィオラを守護する蔦の姿を捉える。
森全体の樹木を操りながら蔦をも操り、さらに魔法陣展開するフィオラの集中力は常軌を逸していた。
「全てはあなたを超えるため」
「素晴らしい努力だわ。でもね――」
シオンは樹木の隙間を縫うように走り、フィオラとの距離を詰める。
投擲が無意味なら直接叩こうという魂胆か。
シオンが樹木の集団を抜けたとき、予め待ち構えていた蔦が襲い掛かるが手ではじかれてしまう。
「この程度じゃ無理よ!」
2人を遮る者はいなくなり、シオンの腕は周囲の空間を歪曲させながらフィオラへ伸びる。
脅威がすぐそこまで迫っているフィオラ。
しかし、焦ることなくゆっくりと開かれた彼女の瞳は琥珀色に輝いていた。
「無理かどうかは……私が決める!」




