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033_上擦った声


 反応を見せない2人に対して呆れたのか、小さくため息をついたシオンは数歩後ずさる。


「どう? これでいいかしら?」


 その瞬間、姿勢を低くしてフィオラはブレッグの前に素早く飛び出す。


 まるで親猫が子供を守るかのように、ブレッグのことを小さい背中で隠す。


「そこまで警戒しなくていいのに。それに、フィオラが守らなければいけないほどブレッグは弱くないと思うわよ」


「……煩い」


 シオンの言葉に初めて反応を見せたフィオラ。


 フィオラはシオンのことを恨み憎しみ嫌っていることは誰が見ても明らかだったが、当の本人は嬉しそうに微笑む。


「あぁ、やっと口を利いてもらえたわ。久しぶり再開だというのにずっと無視されて辛かったのよ」


「……だからなに?」


「なにってこともないけれど……」


 フィオラの厳しい態度にシオンは目を伏せると、両者の間に沈黙が流れる。


 しばらくして、何か思い出した様子のシオンは顔を上げた。


「あ! そういえばね、フィオラと会えたらお話したいことが沢山あったのよ」


「私とあなたが何を話せばいいの? 今更話しをしたところで変わることは何もないわ」


 苛ついている様子のフィオラは語尾が強まる。


 何かの拍子に手を出すんじゃないかと思うほど緊張感は高まっており、まさに一触即発の状況だった。


 しかし、それでもシオンは明るい表情で話を続けようとする。


「色んな場所を旅してきたのよ。面白いことも辛いことも悲しいこともあったの。それをフィオラに伝えようと思って……」


 フィオラに対して話しかけているにも拘わらず、聞き手のフィオラを無視しているシオンの態度は常軌を逸しているといえた。


「そうだわ。昔みたいに『お姉ちゃん』って呼んで欲しいな……なんて」


「――やめて!!!」


 耳をつんざくような大声にブレッグは鼓膜を痛める。


「どうして? 昔は仲よく一緒に過ごしたじゃない。私のことを本物の姉のように慕ってくれて……嬉しかったわ」


 空を見上げながら思い出を懐かしむようにシオンは笑みを浮かべる。


 次の瞬間、目で追えないほどの素早さで走り出したフィオラは、シオンに強烈な後ろ蹴りを入れた。


 それは、ブレッグが素人目に見てもわかるほど完璧な蹴りであり、上体を反らしてまっすぐ伸びた脚は体重が綺麗に乗っていることを意味した。


 当然、目を逸らしていたシオンは回避することもできず、凄まじい速度で吹き飛ばされる。


 地面と水平に吹き飛ぶシオンだったが、即座に左手で地面を掴み受け身を取りフィオラを睨みつけ一言。


「……姉に向かってなんてことをするの?」


 凄みの利いた低い声に、ブレッグは思わずたじろいでしまう。


 自分が睨まれているわけではないことを理解していても、本能的に恐怖を感じるのだった。


 シオンに対して堂々と向かい合っているフィオラに怯えている様子などは微塵もなく、眉間に皺を寄せて睨み返している。


「私は全ての責任を取ってあなたを殺すわ。あなたが私の姉だというのなら、これが妹の最後の務めよ」


「殺す? フィオラが私を? ……うふふ。あははは!」


 突然大声で笑い出したシオン。


 呼吸が乱れるほど大笑いし、左手で腹を抱えながらも笑い続ける。


 そんな彼女の様子を見ていたブレッグは一つの言葉が脳裏を過る。


 ――気が狂っている。


 身を捩って笑うシオンはあふれ出た涙をそっと拭った。


「ははは……さっきの言葉は、ふふ……冗談よね? フィオラが私のことを殺そうとするはずがないもの」


 笑い終わると深呼吸し、上擦った声でフィオラに問いかける。


「それに、私の知っているフィオラはもう少し賢かったはずよ。それとも、私が機関を離れている間に強くなったとでも言いたいのかしら?」


「さあね。でも、例え刺し違えることになったとしても、その覚悟はできているわ」


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