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022_細い糸を手繰り寄せて


 ブレッグの人生の中で、そこまで一生懸命になれたことは一度もない。


 無駄なことは遠ざけてきたし、努力を積み重ねてきたことでも簡単に諦められた。


 諦めることができないほど強い願いを持っているフィオラのことが羨ましくもあり、妬ましくもある。


 そして、願いを持てない自分の代わりに、フィオラの願いを大切にしたいと思えた。


 だから、たとえ叶うことがなかったとしても――


「やれることは全部やってみた方がいいと思う」


 その瞬間、フィオラからは笑顔が消え、隠されていた本当の感情が露わになった。


「……どうして?」


 理由を聞かれたブレッグは何か良い建前を急いで考える。


 本音を打ち明けて本当の自分を曝け出したら拒絶されるのではないかという恐怖心があった。


「それは……」


「もう何年間も別の世界とコンタクトを取る方法を探してきたの。そして見つかった唯一の手掛かりが噂話よ」


 今までフィオラがしてきた努力はブレッグにはわからない。


 しかし、噂話という細すぎる糸を手繰って山奥に来てしまうくらいだ。きっと想像すら難しいだろう。


「ねぇ、ブレッグは異界の魔法使いが実在すると思う?」


 空気が重く感じる。


 フィオラから悪意を感じているというわけではない。


 ただ、この質問に対して安易な気持ちで答えてしまってはいけない気がするのだ。


「俺は……」


 唾を飲み込み、意を決する。


「実在すると思う。実在しなかったとしても、俺がその魔法使いの代わりになれるよう努力するよ」


 少しの沈黙の後、フィオラから笑いが漏れる。


「ふふ。そうなのね。それなら、私以上に凄い魔法使いにならないといけないわね」


 その笑顔は紛れもなく心の底から笑っているものだった。


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