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018_噂話の真相を確かめに


「私も色んな人から教えてもらったんだけどね、その魔法使いは異界にいる人間と話をさせてくれるらしいの。それも、身体的特徴を伝えるだけで誰でも呼び出してもらえるみたい」


「そんなことが可能なのか?」


 至極当然な質問を口にする。


 『異界と交信する魔法なんて可能なのか』という疑問もあるが、ブレッグが一番気になったのは特定の人間を探し出す方だ。


 ブレッグが生活しているこの国だけでも数えきれないほどの人間がいる。


 異界にどれだけの人間がいるのか知らないが、身体的特徴だけでその人物を探し出すことは不可能に近いだろう。


「さあ。私も噂の内容を全て信じているわけではないわ。口頭で広がった情報なのだから正確性に欠けているはずよ」


「確かに」


 フィオラが話していたから簡単に信じていたが、これはただの噂話に過ぎないのだと自覚する。


 偽りは含まれている方が自然であり、そもそも異界と交信できる魔法が存在しなかったとしても驚くべきことではない。


「それでね。ここまで話せばわかるかもしれないけど、噂の魔法使いを探して辿り着いたのがこの地よ」


「なるほど。だから俺が噂を知らないことをそんなに驚いていたのか」


「ええ。地元住民なら何か知っているかもって期待していたから」


 話し終えたフィオラは可愛らしい外見にそぐわず深いため息をつく。


「はぁ。結構大変だったのよ。噂が爆発的に広まったせいで発生源を見つけるのに苦労したから」


 ブレッグはフィオラの心境に強く共感する。


 努力と結果が釣り合わないことなど往々にしてあることだが、ここまで大きく空振りをしたら愚痴だって言いたくなる。


「それは……お疲れ様です」


 まるで仕事終わりの先輩に労をねぎらうかのように接する。


 ブレッグにとってのフィオラは年下でもあり、先輩でもあり、友人でもある複雑な間柄になっていた。


「というか、噂が広まったのはそんなに早いのか?」


「たった数週間で大陸全土よ。今では知らない人の方が少ないと思うけど」


 ――大陸全土。規模が大きすぎて把握しにくい。


 人口も大陸の広さも雰囲気でしか理解していないブレッグには、正確にとらえることはできなかった。


「きっとこの世界では死が身近にあるのが一因ね。事故や事件で突然亡くなってしまった人に対して、伝えきれなかった言葉がたくさんあるのよ」


 大切な人を失った経験は幸いなことにまだないが、見たり聞いたことなら何度かあった。


 それに、この日だってフィオラに助けてもらえなければ、あっけなく死んでいたことだろう。


「つまり、大陸中の人間がその魔法使いを探していて、最初に辿り着いたのがフィオラってことか」


「私の予想が合っていればだけどね」


 弱弱しく笑うフィオラはその自信があまりないようだった。


 しかし、フィオラとは異なり、この時のブレッグには自信で満ちていた。


「絶対に合っているよ。フィオラはいままで俺が出会った中で最高の魔法使いだから」


「……ふふ、なにそれ。でも、ありがとね」


 冗談と思われていたかもしれない。


 しかし、大した根拠のない励ましでもフィオラに届いていたことは確かなようで、声色が少し明るくなっていた。


「そうだわ。最近変わったこととか、どんな情報でもいいから教えてもらえないかしら」


 フィオラはテーブルの上に身を乗り出してブレッグに質問する。


 突然距離が縮まったことに驚いたブレッグは反射的に後ろのめりとなるが、何もなかったかのように平然と顎に手を添えて考え出す。


「えっと、変わったこと……ね」


 思い当たる節はない。


 強いて挙げるなら、異常なまでに巨大な魔物と遭遇したことくらいだが、これはつい先ほどの出来事であり除外する。


 フィオラの証言では数週間で噂が広まっており、逆算すると少なくとも1ヶ月以上前には『何か』が起こっているはずなのだから。


「特に思いつかないかな。……あ、そういえば、ガフナス村の人たちからはもう話を聞いた?」


「村人がいるの? ここに来てから初めて出会ったのがブレッグだったから、その村の人たちには会ってないわね」


「なるほど」


 現在食事を取っている山小屋から1時間ほど歩いたところに、ガフナス村という小さな集落が存在する。


 彼らは街へ行って食材や資材を調達しているため、ブレッグよりも多くの情報を持っているはずだ。


 ――村長に話を聞いてみればわかることもあるかもな。


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