017_異界の魔法使い
出会った当初から気になっていた疑問だ。
散策がしたかっただけ、というわけではないだろう。
フィオラほどの魔法使いが派遣されるということは、それだけ深刻な事態が発生しているということである。
地元住民のブレッグも気づいていない何かがこの山に起こっているのかと思うと不安になる。
今は正常でも未来で事件が起こる可能性だってある。今回の魔物がその序章だって可能性も。
思い詰めてしまったブレッグは、テーブルの上で手を組み考え込む。
そんな深刻そうにしているブレッグとは対照に、フィオラは頬に人差し指を当てながら軽く話す。
「うーん、教えても全然問題ないのだけど。逆に聞いてみてもいい? どんな理由があって私がこの山に来たと思う?」
「え?」
突然始まったクイズ大会に戸惑いながらも、それらしい答えをひねり出す。
「例えば……国からの極秘の依頼とか? そうだな、それこそ重犯罪者がこの山に逃げ込んで、そいつをフィオラが探しているとか」
一番可能性が高そうな答えを導き出せたブレッグはフィオラの反応を伺う。
「ん~。まぁ、そんな感じよ」
なんとも曖昧な返答が返ってきた。
そして、気が張り詰めていないフィオラの様子から、危険なことは起こっていないのだと察する。
「人を探しているという一点に関しては正解かな。今日はある人に会いに来たの」
「ある人?」
目的が人探しであるということはわかったが、次はその人が何者か興味が沸く。
フィオラが直接足を運ぶほどの人物とは誰か。
そんな人物がこんな田舎で生活しているとは思えず、全く見当もつかないでいた。
「どこから話始めたらいいかしら」
フィオラは窓越しに緑で溢れる外の世界を眺める。
そして、風に吹かれて揺れる木々を琥珀色の瞳で捉えながら話始める。
「ねぇ、異界と交信できる魔法使いの噂は知ってるわよね」
「異界……悪いけど知らないかな。世間とは関りが少なくて」
山から出ようとしないブレッグにとって、世間の情報を仕入れる機会は非常に限られている。
最後に人と会ったのも1か月以上前であり、噂や流行といった話には疎かった。
「え? そうなの?」
窓を見つめていたフィオラは急にブレッグの方を向き、目を丸くしながら確かめる。
そして、ブレッグが2回小さく頷くと、フィオラはぼそっと呟く。
「……おかしいわね」
そんなフィオラの態度に、ブレッグはある違和感を覚えた。
――噂話を知らないくらいでそんなに驚くのか?
確かにブレッグは世間知らずであることを認めるが、こんな山奥で暮らしている人間なら知らなくて当然ともいえよう。
洞察力の高いフィオラならそのくらいの事は気付けるはずだ。
「あ、話を中断してしまってごめんなさい。……ちゃんと最後まで話しを続けるわ」
「お願いします」
魔法使いの端くれとはいえ、異界に関連する魔法使いという未知の存在にブレッグは興味を持っていた。




