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100_悪魔的な笑み


 首を絞めていた男の腕が、女性のか細い手に掴まれる。


「な……に……」


 異様な雰囲気と尋常ではない握力。


 男の腕は血流が止まり、うっ血して赤く染まる。


「離せ!!」


 女性の手を引き剥がそうと空いていた左手で奮闘するが、まるで石像に掴まれたかのようにびくともしない。


 女性の握力はさらに強まっていき、ついには腕の骨が砕かれて潰された。


「ぐぁあ!!」


 痛みに悶えている余裕はない。


 すぐに次の行動へ移ろうと、男は反射的に瞑ってしまった目を開く。


 すると、男の瞳に映ったのは女性がなおも笑い続けている姿。


 悪意に満ちた表情は、人の苦痛を愉しんでいるようだ。


「ふざけるなよ……貴様!!」


 叫に近い声を上げながら、男は左手で女性の顔を殴りつけた。


 こめかみに命中した拳。


 だが、痛みで表情を歪めたのは男の方だった。


「いってぇ! くそが!」


 殴った拳から血が流れだす。


 全力で殴ったぶん、その衝撃が拳に跳ね返ったのだ。


「人の顔を殴っておきながら、その反応はどういうこと?」


 男は自分が煽られていることを理解する。


 本来であれば何か言い返す性格だが、そんなことよりもこの場を凌ぐ方法に思考を割いていた。


「遅くて脆くて、非力だわ」


「……言わせておけば!!」


 怒りに震えた男が女性の目を突こうとする。


 そのときだ。


 脇腹を蹴られたことで両者の距離が開き空振りとなった。


 女性は男の腕を掴んだまま、脇腹を押し出すように蹴り続ける。


「あああぁ!!」


 これでもかというくらいに男の腕は伸びる。


 肩の関節は外れ、それでも女性は無理やり腕を引っ張り続けた。


「待て! やめろ!! やめてくれ!!!」


 男の懇願を無視する女性。


 折れた腕を乱暴に引っ張り、骨折して鋭く尖った骨が周囲の神経や血管を傷つける。


 きっかけはその骨が皮を引搔いたことだった。


 ゴムが弾けるような強い音と共に、男の右手は千切れてしまった。


 反動で男の身体は後退し転びそうになるが、ぎりぎりで持ちこたえる。


「あなたの無様な姿を見ていると心が安らぐ」


「……返せ」


「どうしようかしら」


 女性は千切れた腕をお手玉のようにポンポンと投げて遊ぶ。


「ちっ」


 舌打ちして睨みつける男に対し、女性は静かな口調で語りだした。


「さっき、非力だと言ったらあなたは怒ったのだけれど……実はあれ、私の事なのよ」


「はぁ?」


「私のこの身体が脆くて貧弱だと言っているの。まぁ、宿主から勝手に身体を借りておいて、文句を言っては罰が当たりそうだけど」


「あれが非力だと? そんなわけがあるか! 人の腕を握り潰したんだぞ!」


「それくらいフィオラでも出来るでしょ。でも、そうね。願わくば、前の身体であなたと戦いたかった。そうすれば、もっといい顔が見られたはず」


 悔しそうな暗い表情を見て、嘘ではないことを理解した男は背筋が凍る。


 だが、自発的に行動しなくては現状を変えられない。


「ぁ、ぁああああ!!」


 己を奮い立たせようと、震える声で叫びながら走り出した。


 男の狙いは奪われた腕の奪還だ。


 取り返せれば『理』が使えるようになるため、遠距離から稲妻を使った攻撃が可能となる。


 女性は掴みかかってくる手を華麗に躱し、反撃としてみぞおちを蹴り上げる。


「かはっ……!」


 男は吹き飛ばされ、地面に転がる。


 一時的に呼吸が出来ず藻掻いていると、腹を踏みつけられた。


 肋骨が何本か折れる音がする。


「返さないわよ。これは私のもの」


 ぐりぐり腹を踏みながら、男の目の前で千切れた腕を見せびらかす。


 男が手を伸ばしたとき、その腕は光の粒子となって女性の身体に吸収されていった。


「きえ……た」


「魔力が底を尽きたから、あなたの腕を魔力に変換しちゃった」


「……なんだと?」


「残念ね。もう二度と、同じ『理』が使えることはないわ。あぁ、そうそう。あなたの左腕も地面に落ちていたんだけど……これ以上は言わなくてもわかるわね」


「……」


 絶句した男は、口を半開きにしたまま焦点の合っていない瞳で女性を見つめる。


「次はどの部位を分解しましょうか。脚もいいけど……頭を失ったらどうなるの? 再生するのかしら」


 悪魔的な笑みを浮かべた女性が男の頭を掴み持ち上げる。


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