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プロローグ 想い
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彼女は悪だった。
それは、疑うことのない事実だった。
彼女は、贖いきれぬほどの罪を犯し、多くの人を殺め、史上最悪のテロリストとなった。人々は、過去、現在、未来永劫、彼女のことを許すことはないだろう。
彼女は悪に取り憑かれ、焦がれ、宿命づけられていた。
僕はヒーローになりたかった。
人々を助け、悪と戦う正義の味方。漠然とそれに憧れ、目指し、追い求めた。
ただ、僕の力なんてほんのちっぽけなもので、彼女のような巨悪に対峙するには到底及ばない。
だから、僕は力が欲しい。
悪を倒せるほどの力を。
彼女の目を覚ますことができる力を。
力が……欲しい……
*