表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中  作者: 四馬㋟
女だけが暮らす奇妙な村で犯人探し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/59

50



 イケメンたちの正体はBランクのドラゴンハンターで「ドラゴンの翼」というパーティ名で活動しているらしい。何度か町で耳にしたことがあるので、そこそこ知名度は高いようだ。女性に人気の三人組らしく、とある有閑マダムが資金提供しているだけあって、三人の装備は上位ハンターに引けを取らないほど、高価なものだった。


「この辺りは危険なので、近くの村まで送ります」


 リーダー格のハンターに爽やかな笑顔を向けられて、アネーシャは頬を染めつつうなずいた。


「助けていただいた御恩は一生忘れませんわ」

『アネーシャったら……キャラ変わりすぎよ』

「そんなことないわ。わたくしはいつもこんな感じですわよ」

『ボロが出る前にやめときなさいって』


 落下地点は深い森の中で、正確なところはわからないが、ルギスからかなり離れた場所にいるのは確かだった。けれど森を抜けた先に小さな村があると教えられ、ほっと胸をなで下ろす。荷物袋は失ってしまったものの、貴重品は肌身離さず身につけているので、とりあえず何とかなるだろう。


「ちなみに皆さんはどちらへ?」

「ルギスへ行く予定です」

「そこにドラゴンスレイヤーがいるって聞いてな」

「英雄の戦いぶりを実際にこの目で見たくて……」


 なるほど、これは好都合だ。


「でしたら、わたくしもご一緒させていただた……っつ噛んじゃった」

『ほらボロが出た』


 気を取り直して、イケメン三人に囲まれながら村へ向かう。


 これぞ逆ハーレムだとコヤもテンション高めで、和気あいあいとした雰囲気が漂っていたのだが、


「あそこに見えるのが村みたいですね」


 村に入った途端、イケメンたちの関心が自分から離れていくのをアネーシャは感じた。

 なぜなら、 


「あら、旅のお方」

「こんな田舎の村に何の御用?」

「村長の家まで案内しましょうか」


 出迎えてくれた村人たちが皆、美女ぞろいだったからだ。


 鼻の下を伸ばして美女たちのあとに付いていく三人を見、アネーシャはため息をつく。


「……短い春だったな」

『アネーシャを悲しませてっ、この泥棒猫どもがっ』


 何だかんだで皆の後ろをついて歩きながら、気づいたことがある。

 

 村の通りに、男の姿がないのだ。単に家の中にいるだけかもしれないが、普通、よそ者を出迎えるような場面では、女ではなく男が出てくるものではないだろうか。


 そのことにイケメンハンターも気づいたようで、女性に質問していた。


「村の男たちは今どこに?」

「農作業に出ているだけです。夕方には戻ってきますわ」


 大きな館の前で足を止めると、村人の一人が呼び鈴を鳴らした。


「村長、お客様をお連れしました」


 するとすぐさま扉が開いて、村長と思しき人物が出てくる。


 てっきりカークのような老人が現れるかと思いきや、


「コヤ様、あれは男なの? それとも女?」

『しっ、アネーシャ。本人に聞こえてるわよ』


 小声で「あれ」呼ばわりされた村長は寛容な笑みを浮かべると、



「ようこそいらっしゃいました。旅のお方」



 野太い声を発しながら、女性らしいお辞儀をする。

 濃い顔立ちとがっしりした体型は男性のものだが、着ている服は明らかに女性もののワンピース。


 首にショールが巻かれているので、喉仏の有無はわからない。


「この村で村長をしております、リリアン・モンローと申します」


「顔と名前がぜんぜん合ってない」

『アネーシャっ、しっ』


 さすがのイケメン三人も、迫力満点の村長を前にして、ややたじろいでいる様子。


「私たちはルギスへ向かう途中で、ここに立ち寄った者です。よければ一夜の宿をお借りしたいのですが」

「何なら厩や物置でも構わないぜ」

「お邪魔でなければ」


「まあ、そんな……どうぞ我が家へお泊りください。部屋はいくらでも空いてますから」


 喜ぶ三人とは裏腹に、アネーシャの関心事は別にあった。


「……不躾ですが、ご主人は? ご結婚はされているんですか?」


 皆が聞きたくても聞けないようなことを、アネーシャは訊いた。

 

 一瞬、辺りの空気が凍りついたものの、


「主人は一昨年、流行病で亡くなりました。ご覧の通り、未亡人です」


 だから黒い服を着ているのかと納得する。

 それでも、村長が女装した男ではないかという疑惑は拭いきれなかった。


『村長の性別なんて、この際どうでもいいでしょうが』


 どうでも良くないとアネーシャは言い張る。


「だって気になるし」

『そんなことより、これからはもっと慎重に行動するのよ。いいわね』

「はいはい」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ