夢を描く
くるくる。
くるくるくる。
真っ白な空間に、一人たたずんでいる。
目の前には、真っ白なキャンバス。
なかなか筆が進まない。
作業している時間より、考え込む時間の方が長い。
真っ白なキャンバスに、ほんの薄く絵の具を引いたあと、いつも止まってしまう。
少しため息をついたあと、いつも恩師の言葉を反芻する。
マーケティング部署は、ほとんどが社内仕事だ。
もともと営業入社だったため、閉塞感もあり、息が詰まる。
終わらない仕事がどんどん増えて、帰宅時間も遅くなっていく日々。
そんな中でも、いかにして早く帰ろうかを考えるのが、唯一楽しい。
マーケティングと聞くと、何となく良さそうなイメージがありそうだが、そんなことはない。
いつも、地味。
データ。
分析。
常に、地味。
データ。
比較。
日頃、地味。
データ。
プレゼン。
ときどき、地味。
僕の会社では、どちらかというとゴミ箱のような感じで、色々な人から面倒事を依頼される。
新商品を検討しても、様々な部署の言い分、更には社長の言い分があり、すんなりまとまらない。
自分で時間をかけて考えた案が、ひどい言われようだと少しへこむ。
真っ白な空間に、一人たたずんでいる。
目の前には、真っ黒なキャンバス。
僕は、今日も一人ため息をついて、真っ白なキャンバスに交換する。
深呼吸をしたあと、いつも恩師のシンプルな言葉を反芻する。
マーケティングは、夢を描くのが仕事です。
何度も心に刻み込んだあと、平常心を取り戻す。
目の前には、真っ白なキャンバス。
そして、またゆっくり筆を執る。