第十六話「お婆さんの正体」
お婆さんの家の中は有り得ない広さだった。外見は小さな小屋だったのに中は
大きなお屋敷のような広さになっており、どうみても普通の家ではない。
「粗茶だよ」
「『ありがとうございます』」
粗茶といって出されたお茶はどうやら紅茶のようだ。この香りはアールグレイだろうか。せっかく出していただいたし一口飲んでみるか。
「!」
苦味が強いがその苦味の中に甘味があり、なおかつお互いに邪魔しあわず逆に良さを引き上げている。間違いなく最高級の茶葉だ。しかしどれだけ美味しい茶葉を使ったところで入れ方が悪ければ渋くなってしまう。だがこのお茶にはそれが全くない。本当にこのお婆さん何者なのだろうか。
「どうだい?」
「とても美味しいです」
「そうかい、それは良かっよ」
このお婆さんはやはりすごい。しかしどうも違和感がある。なんというか妙に若々しいような……。
少し鎌を掛けてみるか。
「あの、そろそろ本当の姿を見せてくださいませんか?」
「……へえ」
するとみるみるうちにお婆さんの姿形がかわっていき、気がつくと二十歳ほどの女性にかわっていた。
「どうしてわかったの?」
「いえその………髪質、肌艶、顔のシミやシワなどご老人にしては若々しすぎたのでもしや、と思い鎌を掛けさしていただきました」
「ふっ、あっははは!」
すると女性は腹を抱えて笑い出した。
「ふっ、ははっ、あなた最高よ!まさかそんなとこでばれるだなんて!気に入ったわ!」
「あ、ありがとうございます………?」
きっとこれは褒められているのだろう。多分。
「はー、久しぶりにこんな笑いました。あの蒼玉が加護を与えるのにもなっとくです。私はエメルディア。お礼に加護と、此処への転移石をあげます。いつでも遊びに来てくださいね」
〈称号【緑玉の玩具】を取得しました〉
「ありがとうございます。また遊びに来ますね。ユミィ、帰ります、よ………」
帰ろうと思い、ユミィのほうを向くとそかには口いっぱいに茶菓子を詰め込み、リスのようになったユミィの姿があった。全然しゃべらないとおもったらずっと食べてたのか。
『むぐむぐ……ゴクン。はい。お婆さん、じゃなくてエメルディアさん、ごちそうさまでした』
「なんか、うちの子がすいません……」
「いいですよ、気にしなくて。えーとユミィちゃん?にも転移石あげますね」
「いやほんとすいません」
「じゃあ次くるときなんか面白い話聞かせてくださいね。あとその転移石エメラルドの街にもつながってますからね~」
「あ、はいお邪魔しました」
『お邪魔しました』