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84話 魔道具発見

海底迷宮の最深部、玉座の前にある地下へと通じる通路から、そいつは姿を現した。

巨大な体にコウモリのような翼と無数の触手を持った悪魔。


「あれは、ロードクラーケン」


ソフィリアがつぶやいた。


「ソフィリア、知っているのか?」


「はい、ロードクラーケンは陸海空の全てに対応したクラーケン。

つまり、海にいるクラーケンの上位種と言えます」


「ロードクラーケンなら、僕も聞いたことがあります。

その昔、種族間戦争があった際に魔族が率いた戦団の中にロードクラーケンはいました。

やつらはその圧倒的な機動力と再生能力、攻撃性から多くの人間に被害を与えたと言われています」


ソフィリアに続き、アルクも口を開いた。

なるほど、種族間戦争の頃からいた魔物というわけか。

見た目だけでいえばブルーシーリザードのほうが強敵に見えなくもないが…。


「やつは本当にブルーシーリザードよりも強いのか…」


そうこぼした俺の言葉に、すかさずアルクが反応した。


「やつの特徴は、固い外皮と再生能力です。

おそらくブルーシーリザードでは、やつを倒すことは難しいでしょう」


「そうか、アルクいけるか?」


「もちろん、僕一人でも問題ないですよ」


そう言いながら、アルクは自分の胸を叩いた。

頼もしい、この様子ならば問題はなさそうだ。

しかし、仮にもやつはこの迷宮の最終ボスのようなもの、確実に倒すためには先手必勝だ。


「いくぞ、アルク!」


俺とアルクは剣を手に同時に走り出した。



「リアムさん、キリがありませんね。

このままでは消耗する一方ですよ!」


俺たちが戦闘を開始して数分、時間にしては短いが、戦闘での数分というのは長いものだ。

ロードクラーケンは外皮が硬く、容易には切断できない。

例え切断できても、すぐに再生するため、倒すまでには至らない。


「アルク、時間を稼げるか?

俺が直接、やつの頭に魔法を叩きこんでやる!」


「了解!」


アルクは、ロードクラーケンの触手を躱しつつ、距離を取りながら、やつの注意を引きつける。

やつの意識が完全にアルクに向いた瞬間、俺はクラーケンの頭部に自分の剣を突き立てた。

ズブリという感触とともに深く突き刺さる剣に魔力を込める。


俺の剣から電撃が走り、その電撃がクラーケンを貫くと、やつはビクビクと痙攣しながら、やがてその動きを止めた。


「やりましたね、リアムさん」


笑顔で駆け寄るアルク。


「ああ、なかなかに手強い相手だった……だが、本当にこれで終わりなのか……」


俺はクラーケンにいぶかしげな視線を向けつつも、ピクリとも動かないことを確認し視線を外した。

そして視線を目の前に移す。

やつが出てきた地下への入り口と、階段を上った先にある玉座、果たしてどちらを調べるべきか。


「アルク、ソフィリアとともに玉座の方を調べてくれ。

俺は、地下に続く通路の先を確かめてくる」


「1人で大丈夫ですか?みんなで一緒に行った方が…」


不安げにそう言ったのはソフィリアだった。


しかし、この先に魔物の気配は感じない。

もし、ロードクラーケンがこの迷宮のボス的な存在であるなら、そいつを倒した今、この迷宮に危険はないはずだ。


「大丈夫だ、ソフィリア。危険を感じたらすぐに戻ってくる。

2人も何かあれば、すぐに俺に知らせてくれ」


俺の言葉にアルクとソフィリアはうなずいた。


地下へと続く道は暗く、カビ臭い湿った空気がまとわりつく。

俺は自分の剣に魔力を流し込み、辺りを照らしながら先に進む。

やがて通路は行き止まり、1つの王冠が目に入った。


その王冠は、ところどころが欠けているが、怪しい輝きを放っていた。

この雰囲気、間違いない…ジルガと戦ったときに見た魔剣と雰囲気が似ている。

これが、魔道具のひとつだろう。

俺はその王冠に手をかけた…瞬間、頭の中に声が流れ込んできた。


『ようやくか…待ちわびたぞ、このときを…。

きさまの中にある我が力によって、我を開放しろ。

殺せ…お前の障害となる者どもを…人間を亡ぼせ……』


なんだ、この声は…誰だ。

殺す…誰を?開放する……俺の中の力を使って…。

俺は両手に魔力を集中した。

その瞬間、誰かに強く呼びかけられた気がした。


「リアム…リアム!」


ソフィリアの声にハッと我に返る。

同時に両手に集中させていた魔力は霧散する。


「ソフィリア、俺…。そうだ、魔道具を見つけたんだ…」


そう言って、王冠を持っていた手を見たが、その手に王冠はない。

不思議そうに自分の手を眺める俺を、ソフィリアはいぶかしげな表情で見た。


「その魔道具って、もしかして…」


ソフィリアの視線の先は俺の頭上に向けられている。

そこに手を伸ばすと、確かにそこに王冠はあった。

いつの間にか王冠は、俺の頭の上に乗せられていた。


「なぜ……俺の頭に?」


不思議そうに王冠を眺める俺からソフィリアは王冠を奪い取ると、何やら呪文を唱え始めた。

そして、なにか結界のようなもので王冠を包み込んだ。


「この王冠に結界魔法を施しました。これが魔道具ならば、私が持ち運びます」


呆然としている俺にソフィリアは強く申し出た。

なにがなんだかわからない俺は、ソフィリアの申し出を受け入れた。


「戻りましょう、アルクさんが心配です」


その言葉に俺は我に返った気がした。

そうだ、ソフィリアがここにいるということはアルクが1人だということ。

やつのことだ、1人にしておくと何か良からぬ失敗をしかねない。

急ぎ、通路を引き返した先にアルクはいた。どうやら、俺の杞憂だったようだ。


「あ、リアムさん、ソフィリアさん。

この玉座の上の装置ですけど、転送装置みたいです」


玉座の上には、魔法陣が書かれた床と少し離れたところに置かれた魔石。

アルクの話では、この装置は転送装置で、あの魔石に魔力を流し込むことで魔法陣の上にあるものすべてをどこかへ転送させられるという。


これで脱出できる、そう思い、みんなが玉座の方へ意識を向けた瞬間、ドスッという音が俺の耳に届いた。

音の先に視線を移すと、先ほど倒したはずのロードクラーケンの触手がアルクの背中に突き刺さっている。


口から血を流し、地面に膝をつくアルク。

俺は瞬間的にその触手を切り落とした。同時にクラーケン本体に向けて走り出す。


「ソフィリア、アルクのことを頼む。

アルクはエリクサーを持っていたはずだ、すぐに飲ませてくれ!」


そう叫びながらクラーケンとの距離を詰める。

仕留め切れていなかったのか、それともあの状態から再生しただと…いずれにしろ油断した、俺のミスだ。


クラーケンの頭はまだ再生していない、しかし、肉は盛り上がり再生しようとしているのが分かる。

細胞の動きをすべて止めるほどの強い魔力、フローズンエラのさらに上、最上級の氷魔法でやつを倒す。


「空間魔法展開…アブソリュート・ゼロ!」


俺の魔法がロードクラーケンとその周囲のすべてを凍らせる。

全てを凍り付かせる魔法、目の前には白い世界が広がる。

目の前の白い世界は、氷により全ての動きを止め、無音の世界を作り出す。

その無音の白い世界で、クラーケンの再生もその動きを止めた。


それを確認した後、俺はすぐさま振り返る。

そこには、ソフィリアに支えられながら立っているアルクの姿があった。

読者の皆様、数ある小説の中から私の作品を読んでいただき、ありがとうございます。


体調不良により、投稿をお休みさせていただいていましたが、本日より投稿を再開させていただきます。


お休みのご報告が遅くなり、申し訳ありませんでした。


引き続き、お付き合いいただけたら幸いです。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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