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22.5話➂ 決戦のあと《リアムの苦悩…その➀》

「さて、どうしたものか…」


俺は部屋でひとり、思わずつぶやいた。


ルーナの話によれば、俺はレヴィアタンを倒した直後に魔力の使い過ぎで倒れ、2日間寝続けていたらしい。


ふと、窓の外に目をやる。さっきまで町に出ていたが、今は宿のベッドの上。

ルーナとアイラは用事があるのか、外に行ってしまった。

急にひとりにされると寂しいものだな。


だが、本題はそれではない、魔力を使いすぎて気を失ったことが問題だ。

俺はソフィリアに力をもらうことで、自身の力を過信していたのではないか。

そうだ、うぬぼれていたのだ。


まずは今までの情報を整理しよう。


ルーナの話では、俺の通常魔力総量値は未知数。

ルーナは、自分の鑑定眼が未熟だからではないかと言っていたが、魔力自動回復量がSランクと見抜いたということは、ルーナはすでにSランクまでは判別できるということ。

この時点で、俺の通常魔力総量が未知数であるならSSランク以上ということになるが、はたして本当にそうなのか?


そもそも魔力量には2種類ある。通常魔力総量と最大魔力総量だ。

一般的に魔力量というと通常魔力総量を指すことが多い。

というのも、最大魔力総量というのは、感情の高ぶりだったり、アイテムや魔法により魔力が一時的に増大した時の上限値のため、どんなに優れた鑑定眼所有者でも、正確に鑑定することができないからだ。


まあいい。

仮に魔王が魔力値SSランクだとして、俺も同じSSランクならば、そもそもソフィリアにかけられた呪いを解けたはずだ。

だが、実際に試してみたが呪いを解くことはできなかった。

俺が生物には魔法がかけられないというのが関係している可能性はあるが。


ふむ…少しずつではあるが整理できてきた気がした。

俺はゆっくりと息を吐き、そのまま考察を続ける。


そもそも、俺の魔力値が低い可能性も考えられる。

ただ、タイダルウェーブは上級魔法のはずだ、使用できれば魔力総量Aランク以上の魔導士となる。

となると、俺の魔力総量はA~SSランクの間ということか?


もし、そうだとすると、自身の通常魔力総量より魔力自動回復量が上回っている…。

つまり使用した魔力以上に自動回復する魔力量が多すぎることで、常に通常魔力総量の上限を振りきっている状態に近く、正確な魔力量がわからないということか。


今回気絶した原因は、単純に広範囲上級魔法を乱発し、自動回復量を超え、俺の通常魔力総量を超えた魔力を使用したから。

それならば…まあ、納得できないこともない。少し無理やりな気もするが、俺は自分を納得させた。


ならば、今からでも魔力量が増えるように鍛えることと、魔法に頼りすぎないようにすることが今後の課題か。

俺はひとつの解決策を見出した。

しかし、実際はどうすればいいかについてはわからない。


しばらく考え、思いついた。

魔力に頼りすぎないようにするには剣の腕を磨けばいい。これはアイラに頼んでみよう。問題は魔力量の強化か…これは地道に魔力量を増やしていくしかない。


俺は魔力量を増やすためにはどうするべきか考えた…が、答えはひとつしか出なかった。それは魔法を使い、魔力を消費する機会を増やし通常魔力総量を底上げすること。

しかし、実際にはそれが可能かはわからない。

それで、魔力量が増えるかどうかは実証されていないのだ。


「まだ日が暮れるまでは時間があるな…よし、俺も外に出てみるか」


俺は町のはずれの草原に向かった。

草原であれば魔法を使用しても町に直接の被害は出にくい。

俺はまず初級魔法を試してみる。


「空間魔法展開、ウォーターボール!」

こぶし大の水弾ができる。さすがにまだ魔力が全快ではないため、疲労感がある。

次に中級魔法を試してみる。


「空間魔法展開、ウォータージェイル!」

巨大な水の檻が出現する。さらに疲労が蓄積する、さすがにこれ以上はマズい。

上級の魔法は使うことを諦め、初級魔法での実験を行っていく。

そこでわかったのは、同じ初級魔法でも威力やサイズを調節することで、魔力を余分に消費すること。


これならば、高範囲魔法を使わずとも、魔力を消耗することができ、結果として鍛錬につなげることができそうだ。

俺は一応の成果を得た。今の状態ならこれで十分だ。


俺はひとまず宿に戻る。


アイラの話では、すぐに王都に帰還しなくても良いとの話だ。

休めば徐々にではあるが魔力は回復する。今までよりも回復量が少ないが、魔法を乱発し、魔力を使いすぎた反動ということだろう。


つまり、今の魔力回復量が通常状態の俺の魔力回復量というわけか。

そう考えると、ソフィリアの力の偉大さがわかる。

ソフィリアには感謝しかないな。

そんなことを思いながら、静かに眠りについた。


翌日、俺は、まだ暗いうちから草原に来ていた。

昨日よりは明らかに魔力が回復している。

しかし、全快にはほど遠い。だが、これでいい。

魔力が全快になる前に少しでも魔力を消費し負担をかけることで鍛錬していく必要がある。


「空間魔法展開、アイシクルゲイザー!」

俺は氷属性中級魔法で地面から巨大な氷柱を出現させる。

高さにして2階建ての民家ほどの高さ、太さはだいたい人が10人両手を広げて輪になれる程度の太さはある。


「空間魔法展開、ウォーターソード!」

さらに水属性初級魔法で水の剣を生成、サイズを調節し、自分の剣と同じ大きさにする。この剣で、氷柱を相手に剣術の稽古をすれば、魔力の消費と剣の稽古が両立できる。

我ながら良い考えだと自画自賛していた。


次の日から、日中は草原で魔力の消費と剣術の稽古をしていった。

稽古1日目、氷柱を完全に破壊するまで1日かかる。

体力と魔力の消耗により疲労感が強い。


稽古3日目、氷柱を相手にする前に、民家ほどのサイズに調節したウォーターボールを天に放ち、風魔法で雨粒ほどになるまで切り刻む訓練を取り入れることで魔力を余計に消費し、負荷をかけていった。


稽古5日目、はじめは出現させた氷柱を完全に破壊するまで、1日かかったが、今では1日に5本は破壊できるようになっていた。

剣の腕は上達しているかはわからないが、以前より早く剣を振れるようになった気はする。


それからさらに7日後。俺は、まだ薄暗い早朝から町のはずれの海岸へきていた。

ここでレヴィアタンを倒したときのように上級魔法を連続使用することで、実際に魔力量が増えたかどうか確認していく。

前日2日間は十分に休息を取っているため、魔力も全快している。


「空間魔法展開、フローズンエラ!」

まずは氷属性上級魔法で海面を凍らせる、範囲は狭く調節、家一軒分の範囲のみに絞る。代わりに凍らせる深さを調節することで、前回の戦闘時と同じ魔力消費量を再現する。


「空間魔法展開、ファイアメテオストライク!」

これもコインほどのサイズに調整し、複数回魔法を使用することで魔力消費量を再現。

それを凍らせた海に放ち、氷を解かす。


「空間魔法展開、メイルシュトローム!」

解けた氷塊を大渦が飲みこむ。

もっと大きく、もっと深く、もっと速く…。

徐々に大渦を大きく深く、速い回転の大渦へと変化させていく。

メイルシュトロームは発生させている時間分の魔力を消費する。

体感としては、このまま30分も維持できれば、前回の魔力量は超えたことになりそうだ。


そして実際に維持できた時間は、約45分。

限界ギリギリまで維持しようとすれば60分くらいはいけたかもしれない。

確実な成長だ、単純な体感だけでいえば前回の戦闘時の1.5倍近くの魔力を消費できることになる。

これなら、毎日少しづつ魔力を消費するようにすれば、まだまだ伸びるかもしれない。


「よし、成長している。これなら、まだまだ強くなれる。もう一つの課題は剣術か。アイラが師として素直に稽古してくれると良いのだが…」


俺はつぶやきながら天を仰いだ。

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