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20話 シーティア防衛戦《決着》

「お前、なにを…」


バルスは前を歩く俺の背中に問いかける。

バルスの問いかけを無視すると同時に俺は大津波の範囲を確認する。

津波の範囲が目視できるレベルで良かった。

目視できない範囲であれば、さすがに俺も防ぎようがない。


だが、目視で範囲がわかれば防げる。

もちろん以前の俺であれば不可能だった、道具に魔法を流し込むことしかできなかった自分では。

そんな俺が、今の危機的状況に恐怖も焦りもなく立ち向かえるのは、ソフィリアに力をもらったおかげか、もしくはルーナやアイラが俺を信じてくれているからか、はたまたジルガたちへの反骨精神か…。


「空間魔法範囲拡大展開、タイダルビッグウェーブ!」


ズザザザザー、ザッバァァ


俺の魔法でレヴィアタンと同等範囲の津波を起こす。

しかし、範囲は同じでも威力が足りない、明らかに高さで負けている。

このままでは俺のタイダルウェーブは飲みこまれてしまうだろう。

まだだ、もっと集中しろ。魔力を込めるんだ、もっと、もっとだ。


徐々に俺の起こした津波が大きくになっていく、さらに大きく、もっと大きく。


「お前はいったい、何者なんだ…」


バルスの声は聞こえているが、答える余裕はない。

目の前の強大な敵の巨大な攻撃に集中する。


ドザッバーーーン!!!


巨大な津波がぶつかり合う。

はるか遠い海上での衝突にもかかわらず、水しぶきが町全体に雨のように降り注ぐ。

なんとかレヴィアタンの津波を相殺することができた。

間髪入れずにレヴィアタンに攻撃を仕掛ける。


「空間魔法展開、トールハンマー!」


レヴィアタンの頭上から雷の鉄槌が振り下ろされる。

レヴィアタンに直撃、海上ということもあり威力は倍増しているはず。…やったか?


「グゴガァァァァ」


しかし、レヴィアタンは頭を左右に降るとともに雄たけびをあげる。

効果はあったようだが、決定打にはならない。

さすが神とまで言われる相手だ、簡単には勝たせてくれそうにない。

かといって、また、さっきの広範囲の津波を連発されたら、さすがに俺も魔力が枯渇する。

勝負は今、一気にカタをつける。


レヴィアタンは再び体をクネらせ水中に潜ろうとしている。

そうはさせない。


「全魔力一点集中…空間魔法展開、サンダーボルト!!!」


………ズッガァァーーーーン!!!!!!


一瞬、目の前が真っ白になり、雷鳴が数秒後に響き渡る。

かつて見たこともないほどの巨大な落雷がレヴィアタンを襲う。

あまりの衝撃にレヴィアタンは海上天高くまで、垂直にその巨体を持ち上げる。

数秒後、黒こげの巨体は、力なく水面に叩きつけられた。

どうやらレヴィアタンは力尽きたようだ。


「やった……のか?」


バルスが不思議そうに歩み寄る。

俺は振り返るが、力なく後ろに倒れる。

どうやら、魔力を使いすぎたようだ。


「さすがに疲れた。バルス、ルーナとアイラを呼んでくれ。俺は…少し……寝る……」


俺はバルスにそれだけ伝えると静かに目を閉じた。


のちに、この戦いは長く語り継がれることになるのだが、それを俺が知るのは遠い未来の話である。


《この地にいにしえの海神の怒りあり、魔物とともに現れん。かの者、冥界より狂乱なる獣を従え、この地に降り立つ。その者、雷を降らせ、大地を焼き、海を支配し、海神の怒りを鎮め、魔物をせん滅す。かくして、この地は、かの者により守られん》




(やわらかい、あたたかい、背中のほうはフワフワしている、俺は死んだのか?いや、この感触は知っている…ソフィリア!?)


「…ソフィリア」


同時にゆっくり目を開ける。

目の前が暗い、なにかが俺の顔を包み込んでいる。苦しい。

ムニュン…ムニュムニュ。

俺の顔を包み込んでいるものは、どうやら、やわらかいもののようだ。


それにしても…ムニュン?

俺はそのやわらかい感触から、ゆっくり顔を離していく。

張りのある、やわらかい、見事なふたつの果実がその全貌をあらわにする。

どうやら、ルーナの胸に顔を埋めていたようだ。


同時に背筋が凍った。

それもそのはず、美女の胸に顔を押し当てながら別の美女の名前を呼ぶなど、誰がどう考えても、その後に待つものは地獄そのもの。

あのレヴィアタンですら、真っ先に海底に避難するだろう。

しかし、実際は何も起きなかった。どうやらルーナも眠りについているようだ。


俺はどうにか寝返りを試みてみる。

しかし、背中側には別のあたたかく、フワフワの感覚がある。

これは、もしかしなくてもアイラのものだろう。

なんとかして首をまわして後ろを確認する。

やはり、アイラだ。俺の背中に身を寄せるように眠っている。


俺はレヴィアタン討伐後、魔力を使いすぎて気を失った。そこまでは覚えている。

しかし、今、俺たちをあたたかく包み込んでいるベッドには記憶がない。

きっと、バルスかジェイドあたりが用意し、アイラが運んでくれたんだろう。


ふと、俺は自分の体に目をやる。

良かった、服は着ている。

どうやら、寝ぼけて、この年頃の美女と美少女にやらかしてはいなさそうだ。

いや、やられてはいないと言ったほうが正しいか。


「ふふ」


そんなことを考えていると自然と笑みがこぼれた。同時に目の前のあたたかい感触が離れていく。


「リアム様!良かった、ご無事で!」


同時に、あたたかく、やわらかい感触が、勢いよく俺の顔を強く締めつける。


「ル、ルーナ…苦しい」


「す、すみません。嬉しくて、つい…」


ルーナは恥ずかしそうに俺から離れていく。

気づくと背中のあたたかい感触も消えている。

後ろを振り向くと、まだ眠そうに目をこすっている少女がいた。

どうやらアイラは寝起きが悪いらしい。


「心配かけたようだな、もう大丈夫だ」


俺は体を起こし、ルーナの頭に手をやる。

少ししてからアイラのほうを向き微笑みかけた。

ふたりとも安心した様子で目に涙を浮かべていた。


「主さまにしては、めずらしく無理をしたのだな」


「あれから2日も寝続けていたんですよ、もう目が覚めないのかと…」


そんなにか、相当無理をしたんだな。

まあ、そうでもしなければレヴィアタンは倒せなかっただろうが。

俺はふと、外が騒がしいことに気づいた。


「なにやら騒がしいみたいだが、またなにか問題でも?」


「いや、あれ以来、シーティアの町は、ずっとお祭り騒ぎじゃ」


アイラは俺の問いに窓の外を確認してから、優しい笑顔で答えた。


「身体が落ち着いたら、行ってみますか?」


ルーナも優しく問いかける。

俺は2人とともに、外に出ることにした。

まだ昼前だというのに外では、人々がお祭り騒ぎで、どこからともなく陽気な音楽が聞こえ、屋台も多く立ち並んでいた。

ふと、ひとりの男が俺に気づいた。


「リアム様!もう大丈夫なんですか?おかげさまで町は救われました、ありがとうございます」


男は深々と頭を下げた。

シーティアの町長だろうか、俺には見覚えがない男だった。


「おーい!リアム様が目を覚ましたぞー!」

「ああ、救世主様…」

「リアム様ー!町を救ってくれてありがとう!」


どこからともなく声が上がる、次第に声は大きくなり、歓声がわき起こる。

どうやら俺は、この町を救った英雄ということになっているらしい。


「ほれ、手でもあげて歓声に応えんか!」


「こうか?」


アイラに言われるがまま、右手を挙げてみる。

歓声はより一層大きくなり、町全体に響き渡るのだった。

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