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117話 激闘!元勇者と大賢者

「お前は、アルク…………なのか?」


俺の問いに目の前の金髪の青年は、笑顔で振り返る。


「僕がアルクかって?そうですよ、正真正銘、アルク・レインジークです。

リアムさん、ただいま戻りました」


まだ幼さを残す、その笑顔。人懐っこく笑うその顔は、まぎれもなく俺の知るアルクのものだった。

胸の奥底から、様々な感情がわいてくる。

怒りや悲しみとは別の息苦しさを感じて、言葉が出てこない。


「あっ、その剣、まだ持っていてくれたんですね。

僕の家にある一番高価な剣なんですよ、黙って持ってきた僕の愛剣です。

でも少し、見た目が変わってますね」


「アルク、どうしてここに?お前は、あの時……」


なんとか絞り出し、アルクに問いかけた。

アルクは笑顔のまま正面に向き直る。


「リアムさん、話はあとです。まずは、エルジェイドさんを解放してあげないと。

これはかなり強力な、魔法というよりも呪法に近い。

おそらく術者を倒す以外に方法はないでしょう。

エルジェイドさんは僕が引き受けますので、リアムさんは蛇王様の加勢に行ってください!」


大丈夫なのか、とは聞かなかった。

アルクはエルジェイドの槍を受け止めている。

あの未熟だったアルクが、歴戦の戦士であるエルジェイドの槍をだ。


俺の知らないところで、アルクはかなり強くなったのだろう。

彼の背中がやけに頼もしく見えた。

今のアルクになら、この場を任せることができるだろう。


俺はもう一度、ルーナ達の方へ視線を移した。

彼女たちも必死に戦ってくれている。

劣勢だった状況が、アイラの加勢もあり優勢に傾きつつある。

アイラもしばらく見ない間にずいぶん強くなったように思える。


「リアムさん、早く!」


「ああ、この場はアルク、お前に任せる!」


俺は、その場をあとにし蛇王とジルガのもとへ向かうのだった。



「七大強王といっても、この程度か?所詮、俺さまの敵じゃなかったな」


ジルガはそう言うと邪悪な笑みを浮かべつつ、自身の持つ魔剣を振り上げる。

蛇王ナーガラスは、その光景を見上げることしかできない。


前回、戦った時は自分は全力ではなかった。今回は初めから全力で戦えば苦戦することなどありえないと考えていたが、結果はそうはならなかった。

七大強王の中でも戦闘力が高い自分の全力が、この男には全く通用しなかった。

それどころか、相手は余裕すら感じさせていた。

その様子に絶望し、抵抗する気力すら奪われていたのだ。


「なんだよ、もう終わりなのか?じゃあ、死ね!」


刹那、ジルガは振り下ろそうとしていた剣を横に薙ぎ払った。

ギャリン、と鈍い音を立てて何かを切り裂く。

そしてゆっくりと視線を蛇王から外し、視線の先にいる男に向かって叫ぶ。


「リアム!!!」



久しぶりにジルガを見たが、以前とは比べ物にならないくらい強くなっているのが分かる。

七大強王の中でもトップクラスの実力を持つ蛇王を圧倒し、余裕すら感じさせるとは俺の想像以上だ。

これが魔道具の力というわけか。


「待ってたぜ、この時をよぉ。俺さまはてめえに復讐するためだけに生きてきたんだ。

てめえがいなくなってからの俺さまたちの苦労が、てめえには分かるか?」


俺がいなくなってからといっても、その原因はジルガ本人にあるはずだ。

だが、復讐心にかられ、そのことは頭から消えているんだろう、逆恨みもいいところだ。

俺はお前のもとで、精一杯やっていたというのに、文句を言えるとしたら、それは俺の方なんだがな。


「勇者だなんだと、もてはやされていた俺さまたちが、今や魔王軍だ。

それもこれも全部てめえのせいだリアム!殺してやるからかかってこい!」


まあ、追い出されたおかげで、いろんな仲間に出会えたし、強くもなった。

俺は感謝すらしているほどだ。

だが、魔神を復活させ、人々に、なにより俺の仲間たちに危害を加えるというのなら、俺は迷わずお前を斬ろう。


俺はゆっくりと剣を抜いた、法剣・風流と黒狼を。


「いくぞ、ジルガ、手加減はなしだ」


俺はその場で2本の剣を振るった。

同時にその場から高速で移動する、用いる移動法は天脚のみ。

全力、全速力でジルガを倒す。


「はっ、斬撃を飛ばすか、面白れぇ。前より剣術の腕が上がったなぁ、リアム。

だが、それじゃ俺さまは倒せねえ」


ジルガには俺の飛天の太刀が見えている。余裕の笑みを浮かべ、迎撃態勢を取るジルガ。

しかし、彼はその余裕からか、俺への注意が散漫だ。


「その程度で倒せるほど、お前が甘くないことは分かっているさ。

鋭刃流奥義・飛天の太刀・乱」


天脚でジルガの上を取り、上空からも無数の飛天の太刀を放つ。


ジルガは一瞬、自分の頭上に視線を向け、舌打ちをひとつ、回避行動を取ろうとしている。


だが、逃がさない。


天脚にてジルガの背後に回りこみ、さらに飛天の太刀を放つ。


これでジルガの退路を封じた、いける!


轟音とともに無数の斬撃がジルガを襲い、土煙が舞い上がる。


どうだ、ジルガにダメージを与えることができたのだろうか。

これくらいで倒せるなら蛇王が苦戦するはずもない。

せめて、いくらかのダメージを受けてくれているといいんだが。


そう思いながら、土煙が晴れるのを見守る。

中からジルガが姿を見せることはない。

まさか、今ので倒せたのか……。


そう思った瞬間、土煙の中に人影が見えた。


「くっくっくっくっくっ、ふふふ、あーはっはっはっ。

これがお前の全力か、リアム・ロックハート!

なかなかの威力だ、ここまでの痛みを覚えたのは久しぶりだぞ!

そこに転がっている蛇王とかいうカスより、お前の方が強いかもなぁ!!」


土煙が晴れ、中から姿を現したのは全身血まみれで、片腕を失ったジルガだった。


やつの口ぶりから全て防がれたと思っていたが、そうではなかったようだ。

俺の飛天の太刀は命中していたのか……いや、しかし、ジルガのあの余裕はなんだ?

全身に斬撃を受け、片腕まで失ったというのに。


いぶかしむ俺をよそにジルガは恍惚とした笑みを浮かべ、天を仰いだ。

次の瞬間、やつの全身の出血は止まり、傷は回復し、斬り飛ばした腕まで再生を始めた。


回復魔法、いや再生魔法か。

いや、しかし……まさかあれは自己再生か。魔道具の影響か、それとも人間ですらなくなったということか……。


「堕ちたな、ジルガ」


俺の言葉にジルガは剣を抜き、俺の方へ向き直る。

その表情は恍惚としたものから、邪悪な笑みへと変化していた。


「ああ、何とでも言え。俺さまはお前を殺すためだけに力を得た。

俺さまの力の根源は、お前への憎しみだ。

せいぜい足掻いてくれよ、リアム・ロックハート。

簡単に死なれちゃつまらねえからなあ!!!」

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