番外 夏の休日②
寝室の窓から外を見ると今日は夏晴れって感じのいいー天気。
暑くなりそうだし、こんな日はやっぱり冷たい物が美味しいよね。
何作ろうかなー?あっ。でもその前に!
「アピスは氷って出せる?」
「氷ですか?申し訳ございません。私は雪属性の適性がございませんので氷は出せません。
フォルカーならば出せますが...いかがなさいました?」
「今日は暑くなりそうだから氷菓子でも作ろうかなって思ったの。」
「かしこまりました。では、フォルカーを呼んでまいります。」
「うん。よろしく。」
さて、何作ろうかな?果物はメロンとスイカがまだあったよね。クリムの実でアイス?
んーでも、今はアイスよりシャーベット、かき氷の気分だし...メロンにスイカのシャーベット?...いいんでないの?メロンとか贅沢じゃん!何なら果物を器にしちゃうか!
「さて、それではパン作りを始めましょう。」
王族全員が厨房に入れないため急遽、となりの食堂をお借りして始める事となった。
なんと王族一人に料理人が付きっきりで指導というおまけ付きだ。お父様達とお兄様達がお手数を掛けますがよろしくお願いします。
まぁ、もう生地は出来ているし、中に入れる具材も用意してあるから大丈夫でしょう。
さて、私は私でシャーベットを作ろう。
取り出したるは料理人がスプーンでくり抜き潰してくれた物が入っている二つの鍋。
果汁100パーセント!!!
その言葉だけで美味しそう。前に生で食べても美味しかったから絶対に美味しいよ。
器の方は冷蔵庫で出番を待っているからね。早く合体させてあげなきゃね。
「というわけで、フォルカー手伝って。」
「かしこまりました。
ですが殿下。本来魔法とはこのような使い方をしない事を重々ご承知ください。」
「はいはい。朝からもう何回も聞いたよ。
それよりも、これ!軽く凍らせて。混ぜるから凍らせ過ぎないでね。」
フォルカーが首を振りながら鍋の上に手をかざすと...
「分かりました。
っと。これくらいでよろしいですか?」
「えっ?わぁ!!一気に凍ってる!!そしたらスプーンで...
ガツッ!...ガッガッ!
「固い。」
スプーンでかき混ぜようとしてもスプーンが中に入らない。固すぎる。
「失礼いたします。」
アピスが鍋をのぞく私の上から腕を出しスプーンで一撃で氷を割った。
あれれー?...これは...単純に力の差かな?
それにしても二人とも作業が素早い。炭しか作れないリカとはちょっと違うね。
ちなみにリカはもう戦力外を通告されていて他の仕事をしているらしい。
私がボケーっと二人の作業を見ている間にアピスがメロンをフォルカーがスイカをスプーンで綺麗にかき混ぜ終わってから私に新しいスプーンを差し出して一言。
「殿下。お待たせいたしました。これで殿下もかき混ぜられると思います。」
...いや。もうかき混ぜる必要ないから。溶けるだけだから。
後の工程も二人にやってもらおう。そっちの方が早いし。
「フォルカー。もう一度凍らせて。」
「かき混ぜなくてよろしいのですか?」
「えっ?別にいいよ。
私はかき混ぜたいわけじゃなくて氷菓子が食べたいだけだから。私が作るより早いだろうからフォルカーとアピスが作ってよ。」
「...かしこまりました。」
何か言いたそうなアピスは気にしないでおこう。
「それよりもフォルカー早く。」
「はい。かしこまりました。」
またフォルカーが二つの鍋に手をかざせば...一気に凍った。
おぉ!!原理がさっぱり分かんないから見ていておもしろっ。マジックみたいだよね。
それに夏にいくらでも冷やせるって最高だね!!
今度お庭で足湯やる時はお湯じゃなくて氷出して貰って水風呂にしようかな?
涼しそうだよね。
「何をしているんだ?」
「クロノお兄様!グレイシアお兄様!みんなで後で氷菓子を食べようと思って二人に作ってもらってます。お兄様達はもうパンは作り終わったのですか?」
「終わったよ。あとは料理人に任せてきた。ところで...氷菓子、俺も分もある?」
「えぇ。ありますよ。味はメロンとスイカの2種類です。」
「アピスの方が少し溶け始めていますね。」
はい。今日初のクロノお兄様のお声です。...って溶けてる!?
急いでアピスの鍋を見れば確かに少し柔らかくなりだしていた。
「アッ!本当だ!!フォ・・・」
「凍らせればいいのか?」
クロノお兄様がアピスの持ってる鍋に手をかざすと予想しない冷たい冷気が一気に私の方まで流れてきた。
「サムっ!」
「クロノお兄様!!やり過ぎです。リリアナまで凍ってしまいます。」
「...ん?すまない。大丈夫か?」
「はっ、はい。」
驚いた。冷房より寒かった。...当たり前か。
「本当か?」
クロノお兄様の手が確かめる様に私の頬にそっと触れた。
「大丈夫ですよ。それにしてもクロノお兄様の手は冷たくて気持ちがいいですね。」
「体温が低くてな。リリアナの頬は温かいな。」
その体制のままクロノお兄様としばらく笑い合っているとグレイシアお兄様が焦れた様に声を掛けてきた。
「何やってるの?クロノお兄様いい加減にリリアナから手を放しなよ。
ほら、リリアナ。アピス達が困ってるよ。」
はっ!!そうだ!お兄様と遊んでる場合じゃなかった。
クロノお兄様から離れて急いで鍋の中を見せてもらえばすでにシャーベットになっていた。
あっ。マジで私なにもしてないや。
「殿下。これでよろしいでしょうか?」
「うん。大丈夫。あとは器に盛りつければ完成だよ。
お父様達終わったかな?」
顔を上げて食堂を見回すとまだ終わっていないユリウスお兄様とお兄様の周りに皆で集まっていた。
「お兄様。もう終わるようですから皆でお茶にしませんか?場所は
...どこにしましょうか?」
聞いてみるとグレイシアお兄様に希望があったようで真っ先に言われた。
「俺、リリアナの庭園がいい。」
...私の?
「私は構いませんよ。クロノお兄様はよろしいですか?」
「あぁ。いいよ。」
あの後、空中庭園の芝生でお茶会となった。
作ったシャーベットは大好評だったけど、雪属性の魔法が使える人がいないと作れないという話をしたらユーノお父様が何故か魔法についてを語りだした。なんでもユーノお父様は魔導団の研究室長という役職らしく魔法が大好き。ということをアザリーお父様に教えてもらった。
魔法だと私は使えないのだけど...
それから遅めの昼食としてお父様達の形成したパンを出して貰えば青空の下でいつも以上に賑やかな食事だった。
誰が決めた訳ではないのに、今日お仕事のアポロ兄様の為に皆が一つずつ作成したらしくアポロ兄様の分のパンが積み上がったのが面白かった。午後は皆で鬼ごっこをしました。




