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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
1ー誕生、そしてー
9/118

9ーツヴァイ視点1ー

「失礼いたします!急ぎご報告がございます。

 本日未明よりリリアナ様が行方不明となっております。」


 侍従の一人が慌ただしく執務室に入室したと同時に報告したのは昨日の離宮破壊事件の報告を私、第一夫君で補佐官のダリオ、親友のイジワール宰相、アビゲイル騎士団長、ロペス副騎士団長の五人で聞いていた時だった。

 私は侍従に詳しい説明を促した。

「詳しく報告を」

「はい。本日早朝リリアナ様の元に召使いが向かいましたところ、部屋には誰も居りませんでした。

 現在、召使いなどを動員してお探ししております。」

「確か。あの子の部屋の近くに見張りを配置していたな?

 その者たちからの報告は上がっていないか?」

 私はそう騎士団長に問いかけた。

「はっ。廊下側に二人。庭に一人。騎士を配置いたしました。

 朝の報告では異常は上がってはおりませんでしたが、もう一度確認をいたします。」

「あぁ。頼んだぞ。

 あの子はまだ3歳だ。一人で外に出られるとは思わん。」

「と、すると...誘拐ですか?可能性はなくはないでしょうがあまり高いとも思えませんね。」

「ですが騎士が3人も見張っていた部屋から消えたのです。

 何らかの事件に巻き込まれたと考えるのがよろしいのでは?」

 ダリオとイジワールが議論を始めるが、今はそれより。

「結論を急ぐな。

 イジワール宰相は信用のおける者たちだけで王宮内の捜索を。

 騎士団長達は王都内の捜索の準備と何か残っているかもしれん。部屋を調べろ。

 それから軍部に通達をして城門の兵達に出門検査を厳重にさせろ。

 召使いたちは通常業務に戻して構わん。ただし王宮外への出入りは禁止する。」

「「「はっ。」」」

 三人が礼をとり急ぎ部屋から出ていった。


「あの子は無事だろうか?」

 昨日初めて見た我が子の顔が頭にチラついた。

 私に似てたれ目だが王家の証である紫の瞳を有した可愛い黒髪の息子。

 会うのが夜遅くになってしまったため寝てしまい未だ抱き上げてもいないのに。

 一体どこの誰が?何の目的で?あのような子供を...

「王族となるのですからそれを知るものは危害は加えようとはしないはずです。

 ...ところで。

 あのフィリップと言った男もいないのでしょうか?」

「あっ...。」

 しまった。そういえばあの子がくっついていた平民の男が一人いたな。

 ダリオが隠す気もなくため息を吐いた。

「ツヴァイ。あなたはやはりどこか抜けていますね。」

 首相たる私に対してここまで言えるのは家族の中でもダリオだけだろう。

「あなたが家族思いで子煩悩なのは知っていますが、あの子は今まであの毒花の庭で育てられたのですよ。我が子だとて油断はしないことです。

 それにフィリップ。彼は何者ですか?

 イジワール宰相の話だとそのような人間を雇った記録も記憶もないそうです。」

 ガタッ!!

 私はダリオのその話に驚いて椅子から立ち上がった。

「なんだと!それを早く言え!!あの男が連れ去ったのか?」

「落ち着きなさい。まだわかりません。

 しかし、デイジーの居室で大切に育てられていた。ということですが、少々痩せていたようにも見受けられましたし、あの子の着ていたものはずいぶんと質の悪い着古した大人用のシャツでした。

 到底、可愛がられていた。とは思えませんね。」

 何事もなかったかのように話を続けるダリオ。

 少し寂しくなりながらも私は椅子を直して座りなおした。

 確かにそうなんだ。

 それにあの女が私の子供を産んでいたならあの子を盾にしていろいろ要求が増えそうだが・・・

「確かに。...調べられるか?」

「我が子達のためにも調べますよ。レオナルドを使っても?」

「愛しい我が子だからと言って酷使するんじゃないぞ。

 可哀想に。この間誰かに押し付けられた仕事でクマを作っていたぞ。」

「おやおや。誰に言われた仕事でしょうね。

 まぁ息子が優秀だということですよ。」

 そう言い残してまったく嫌みの効かない手厳しい補佐官殿は出ていった。

 今度レオナルドに酒でも買ってやるか。スパルタな父を持つと息子も大変だな。





 あれから数時間が経過したが、未だにあの子は発見できていないため、宰相や騎士団長が首相執務室に情報の整理をするために集った。

「では、イジワール宰相は王宮内にあの子はいないと言うのか?」

「はい。くまなく王宮内を捜索したところ発見には至りませんでした。おそらくもうすでに王宮の外に出てしまわれているのではないかと。愚考いたします。」

「うむ。分かった。次は騎士団長。

 些末(さまつ)なことでもいい。何か分かったか?」

「はっ。部屋の捜索の結果ですが。

 部屋は一見何事もなかったかのように見えましたが、いくつかの備品が紛失・破損が見受けられました。

 内容は置物の像が破損。ペーパーナイフ、燭台の紛失。シーツとタオルもありませんでした。

 そして、夜間見張りを行っていた者たちにもう一度聞き取りをしたところ、庭の警備に付いていた者が夜間、水音を聞いたと証言いたしました。」

「水音?どんな水音だ?」

「一度だけ水玉がはじけた音だったそうです。」

「そうか。ご苦労だったな。」

 ...いくつかの紛失物と水音。

 あの子が誘拐されたのか、どうやって消えたのか。あの男の目的も。何も分からん。急がなければ最悪の事態を招きかねんのに。

「それから、未確認情報が一つございます。」

「なんだ。」

「リリアナ様とは関係がないかもしれませんが、第三区画にある商店より王宮の備品を売りに来た子供連れの男がいたとの通報が警邏隊より入っております。」

 子供連れの男!!あの男か!?

「現在、通報された商店に騎士を向かわせております。確認ができるまでもうしばらくお待ちください。」

「それが本当ならばあの子の手掛かりになるやもしれん。捜索の準備はどうだ?」

「現在、副騎士団長を筆頭に捜索隊の編成を急いでいます。

 準備が出来次第、王都内の捜索にあたります。」

 

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