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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
4-後宮で遊ぼうー
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 談話室は広く、色々な遊び道具やお酒が置いてある大人の雰囲気の部屋だった。

「なにで遊ぼうか?」

「グレイシアお兄様。私は遊び方を知らないので最初は見てます。」

「ボードゲームはどうですか?それなら二人組で出来ますからリリアナも混ざれますよ。」

 ユリウスお兄様...いい子。マジでいい子。

「じゃあ!僕がリリアナと組む。」

「分かったよルーク。リリアナもいいね。」

「はい。お兄様、遊び方教えてくださいね。」


「...ユリウスお兄様。そんなの酷いです。」

「ルーク。すまないな。こうするしかなかったんだ。

 ...俺とお前は兄弟でも今は敵同士。

 決して手加減はしない。

 ...それにルーク。兄に逆らうことの意味を教えてやる。」

「ルーク。

 泣き言を言うな。自分で選んだ道だろう?

 ほら、お姫様の前で俺達に勝ってみせなよ。」

 お兄様を嘲笑う(あざわら)かのようにお兄様の騎士を取り上げるグレイシアお兄様。

 ...うん。お兄様達もっっの凄く緊迫した雰囲気出してるけど。

 これボードゲーム。

 こっちは7歳と3歳コンビだよ!?もうちょっと手を抜いてよ。

 ほら、お兄様まだ我慢してるけど今にも泣きそうだよ。

「グレイシアお兄様。確か今、14歳ですよね。弟を泣かせて楽しいですか?」

 思わず冷めた目で聞いてみた。

「そうだな。......すっごく楽しい。」

 心から楽しそうに笑いながら言わないでください。ドエスめ。


「そういえばさ、リリアナ。」

 周りを伺いながらグレイシアお兄様が声を落として身を乗り出して話し出したので必然的に私達は小さく丸くなって内緒話を始めた。

「見た?」

「何をですか?」

 訳が分からずに尋ねるとニヤリと笑いながら一言。

「幽霊。」

「えっ?グレイシアお兄様あの噂は本当なんですか!?」

「ユリウス。声が大きい。」

「噂って何ですか?」

 脅えた様子のお兄様が聞くといっそう声を落とし...

「なんでも後宮、特に4階は悪夢の女王に殺された人達が悪霊となり夜な夜な女王への恨みを晴らすべく出没するんだと。

 で、リリアナはもう見た?」

「何ですかそれ。...見てませんし、初めてその噂も聞きました。」

 私の答えに満足したのかグレイシアお兄様が身を起こし普通に言った。

「なーんだいないのか。残念。」

「ですが、昔から伝わる噂では?」

「そうだよね。リっリリアナ。幽霊なんているわけないよね。」

「見たことがないですから何とも...」

 それに由緒正しい場所ならそんな噂の一つや二つ位出てくると思うんだけど。

 ...幽霊ねぇ。


「お待たせいたしました。昼食のご用意が出来ました。」

「お兄様!ご飯です!昼食です。早く行きましょう。」

 誰かの側仕えが告げたので、すぐに立ち上がってお兄様の手を引き私は戦線離脱した。

 勇気ある撤退と言ってほしいね。

 お兄様が本当に泣きそうなんだから!

「リリアナ。勝てなかったよ。ごめんね。」

「気になさらないでください。それよりも昼食です。

 先程、料理人に伝えたレシピですから暖かいうちに食べましょう。」

「へ―。そうなんだ。今日はどんな料理なの?」

 あとから急ぎ足で追ってきたグレイシアお兄様達が一緒に並んで歩き出した。

「今日はホットケーキです。デザートに果物もお願いしました。」

「「もしかして森の妖精王様からの!?」」

 エルフ組、目を輝かせない。...無理な話か。

「はっ早く食べましょう。」

「そうだな。急ごう。」

 そう言いだしたお兄様達に手を引かれ...引きずられて晩餐室に向かった。

 昼食のホットケーキにお兄様達とハリさんは大喜びで競うように気持ちのいい食べっぷりを披露してくれた。それから森の妖精王から頂いた果物を食べる私達を羨ましそうに側仕えのエルフ組が見てたからユーノお父様経由で果物を渡してもらおうと思いアピスに手配してもらった。




 お兄様達は午後のお勉強の為にお勉強部屋に向かい。私はアピスと一緒に厨房に向かっている。さてさて、厨房はどうなっているかな?

 厨房に近づいて行くと甘い匂いが廊下まで漂ってきた。

「殿下。お待ちしておりました。

 キッシュを除いてすべて焼き上がっております。」

 厨房の前で待っていたデュークに連れられて召使用の食堂に入れば中央のテーブルに綺麗に盛り付けられた大量のシフォンケーキとクッキーが置いてあった。

 流石!!私じゃこんなに上手に作れないよ。いい匂いしてるし、美味しそー。

 夕食時に焼いてもらうキッシュはいいとして。

「はい。きれいに焼けていますね。味見をしてもいいですか?」

「はい。こちらでございます。」

 デュークが手で指し示す方にはテーブルセットに用意された一口ずつのお菓子があった。そこでようやく、室内にお菓子を作ってくれた料理人達が並んでいることに気が付いた。

 あっ。お手数おかけします。わざわざテーブルまで用意してくれたんだ。

「ありがとう。

 アピスも食べて。いろんな意見が聞きたいから。」

「ありがとうございます。では、ありがたく頂戴いたします。」

 ご飯食べたばっかりだけど...いっただきまーす。

 クッキーはサクサクほろほろとプレーンとジャムとローズマリーの3種。

 シフォンケーキはフワフワでこちらもプレーンとジャムとバナナの3種。

「うん。全部よく出来てる!とても美味しいです。これなら森の妖精王に渡しても大丈夫だと思います。アピスはどう?」

「はい。大変、美味しゅうございます。

 それにいろんな味があるのでお楽しみ頂けるかと思います。」

私には見えない位置で食べたらしいアピスからも美味しいもらいました。

よし、これでラッピングだね。

「...リリアナ殿下。誠にありがとうございます。

 我ら料理人一同にご教授頂き深く深く御礼申し上げます。またこのような機会を頂けたことは料理人人生において僥倖たる出来事でございます。

 料理人一同、重ねて御礼申し上げます。」

 デュークのその言葉で食堂にいた料理人が一斉に頭を下げた。

「頭を上げてください。

 私こそありがとうございます。貴方方の素晴らしい手腕でこんなに美味しい物が作れました。本当にありがとうございます。

 その。また作りたくなったら来てもいいですか?」

 今ここで聞くのは卑怯だと知っていても厨房の出入り許可は欲しかった。

「はい。料理人一同その時を心待ちにお待ちしております。」


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