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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
1ー誕生、そしてー
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8

 今、私が見上げているのは3階建ての薄いクリーム色の壁の建物。

 看板に書いてある文字は読めないや。従業員一人が外を掃除しているきれいなお店。

「ここで、換金ができます。本当に行くのですか?」

 フィリップが暗い口調で話しかけてくる。

 私はわざと明るく

「行くよ。早く換金しておいしいご飯食べよう。」


 わー。カンジわるっ!!従業員がチラ見して無視するよ。

 中に入ると左手に受付カウンター、中央には2階と地下に行くための階段、右側にいくつかの小部屋がある造りをしていた。

 フィリップがゆっくりとした足取りで受付まで歩いていく。

 受付に座るのは、厚い眼鏡をかけて気難しい顔をしたハゲた中年男性一人だけど、その後ろには板で出来た衝立が置かれていてその奥から複数の人の動く音がした。

 区切って事務所にでもしているのかな?音からして大勢いそう。


 緊張した様子のフィリップが声をかけた。

「すみません。」

「はい。ご用件はなんでしょうか。」

「換金したいのですが。」

「かしこまりました。では、品物をお出しください。」

 私は持っていた荷物から燭台と部屋にあった像を少し削って取り出した金をフィリップに渡した。

「...これは。

 失礼ですが、これらはどちらで手に入れたものでしょうか?」

 やっぱりこの質問が来た。先に打ち合わせしておいて良かった。

「勤めていた先の方に頂きました。」

「なぜこのようなものを頂けたのですか?」

「子供が生まれた為お暇を頂きまして、帰る旅費にあててほしいと渡されました。」

 受付のおじさんはそこで始めて背負われている私をみた。

「おとーさんとおとーさんのおうちにかえるのー。」

 行けるはず頑張れ私の女優魂!(そんなものあるか知らんけど)

 笑え!無邪気な子供のように!

「おや。かわいい子供だね。

 分ったよ。手続きしよう。それからすまないね、こんなこと聞いて。」

 一転、最初の気難しい顔はどこへやら人がよさそうに笑うおじさんがいた。

「いえ。気になさらないでください。」

 フィリップがあからさまに胸をなでおろしている。

「僕もこんなこと聞きたくはないんだけどね。

 ほら、お貴族様のお屋敷で悪さする人達がいるでしょ。そういう人達がここに換金しに来ないようにってわけ。」

 窃盗品の売却ねー。それはお店は警戒するよね。

 一度そういうことを受けちゃえば何度も来るだろうし。お店としても噂なんて広まったら目も当てられないよね。...うん。ごめんなさい。

「はい。お待ちどう様。

 それじゃあ、真鍮(しんちゅう)製の燭台と少しの金で銀貨9枚だね。

 内訳は真鍮(しんちゅう)製の燭台が銀貨6枚、金が少量だから銀貨3枚で合計銀貨9枚だね。」

「銀貨9枚!?そんなに!?」

「いい雇い主だね。」

「はっ、はい。とても。」

 あーあー。フィリップが青くなっちゃった。銀貨9枚かー。そんなものなのかな?

 まぁ、フィリップに聞いた話じゃ黒パンは一つ銅貨1枚。

 実家にいたときにフィリップの家族12人が一か月銀貨20枚あれば生活できたみたいだし。

 それを思うと大金だね。金の像の剣はしまっておこう。また足りなくなったら換金すればいいや。


「ありがとうございました。」

 ようやくお店から出れた。もうお昼近い時間かな?

「リっリリアナ様。よろしいのでしょうか?このようなことをしてしまって...」

「いいの!!

 それより、お腹が空いたからご飯を食べに行こう。」

「はっはい。危ないですからおんぶから抱っこに変えますよ。」

 じゃあ、背中で寝ているスイキンも抱っこにしよう。

 市場ってどんな感じなのかな?


 ほぇーーー。

 人多っ!!!もうお昼くらいだけどかなり人が多い。

 フィリップが危ないってこういうこと。人しかいないけど、これは3歳児が歩いていれば踏み潰されるね。

 ここは平民区の市場だけど道のいたるところにテントを張って、石畳の上の木箱に商品をおいて売り子さんが声を張り上げてる。すっごい活気!海外の市場みたい。

 うわー!あの店何売ってるのかな?あっちの店にはいろんな生地(きじ)が置いてある。なに?あの赤い液体。売り物みたいだけど・・あっちにはうわっ生肉!!骨付きで私より大きい!!なんのお肉だろう!?こっちは果物かな?甘いにおいがする。

「ブッ。くっ。あははは。

 リリアナ様、市場は逃げませんからゆっくり見て回りましょう。」

「ホント!?私あっち行きたい。」

「はい。分かりました。」




「さっきの子連れの客。

 どこまで帰るんだか知らないがあんな小さい子供連れて旅しようなんて無茶もいいところだな。」

「なんだ。聞いていたのか?」

「受付であれだけでかい声で話せば事務所中に聞こえるぞ。」

「それもそうか。まぁだからこそ雇い主が売れる物を渡したんだろう。」

「確かに。でいくらで買い取ったんだ?それが今売られたものか?」

「ああ。燭台と金で合わせて銀貨9枚だ。」

「ほぉー立派な燭台だな。だいぶぼったくったなこりゃ。」

「あぁ。かなりのものだな。どう考えたって金貨3枚以上の価値がある。見るか?」

「いいのか?...真鍮製ねぇ。...こりゃ貴族あたりが使うものじゃねぇか?

 ...こりゃあ。おい!裏返して見たか!?」

「裏?いや。見てないが?」

「馬鹿野郎!!裏に王家の印が入ってるぞ!!!これ王宮で使われていたものじゃねぇか?」

「まさか?見せてみろ!

 ...間違いない。王宮で使われている備品に押す印だ。」

「どうすんだ?」

「普通、王宮の備品は民には出回らない。盗まれた品物の可能性もある。

 今、騎士団や軍部に睨まれるのはマズイ。見られちゃマズイもんを隠せ!!!

 警邏隊に連絡するぞ。くそったれ!!」


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