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厨房に抱き上げられて戻れば洗って終わった様で中くらいの鍋二つに半分くらいずつ入ってた。それなりの量があるように見えるけど煮込むからかなり少なくなるんだよね。
「デューク。」
「リリアナ殿下!お待たせいたしました。すべて洗浄は終了いたしました。」
「ありがとう。では、続きを始めましょう。
まず粒を潰さない方の鍋は大体、今入れたブルーベリーの半分くらいの砂糖を入れるんだけど...」
「えぇ!!!この半分ですか!?」
「え?うん。そう。
ジャムは保存食だから大量の砂糖を入れるのが本来の作り方なんだけど...甘すぎるジャムはあまり好きじゃないから砂糖は減らして作ります。」
「あの...分量を減らしても作れるんですか?」
「作れるけど保存には向かないね。」
「...保存食ではないのですか?」
「...だってその方が好きだし、色々使えるし、こんなにたくさん果物あるから。」
デュークのもっともなご意見に目を逸らしながら答えた。
「...ではどれ程の砂糖を入れますか?」
「そうだね。通常の量の三割くらい。」
「三割!??それでもそんなに入れるのですか!!」
デュークが砂糖を取り出しブルーベリーの鍋に恐る恐る入れていく。
「えっ?えぇ。これでも少ないと思うのですが...
そうしたらブルーベリーと砂糖を軽く混ぜて少し置いておきます。その間にもう一つの鍋にさっきと同量の砂糖を入れてください。」
「失礼ですが、なぜ鍋を分けたのですか?」
「こちらは潰したものを作りたいんです。
さっきと同じように砂糖と混ぜながらブルーベリーを手で潰してください。」
「何が違うのですか?」
今まで黙ってた話を聞いていたリカが会話に入ってきた。
「食べた時の食感とか。潰した方は料理に混ぜて使えるし、潰さない方は飾りとして使えるから両方食べ比べても面白いかもよ。」
「そういうモノなのですか。」
「そういうものなのです。」
「確かにそういうモノですよね。」
リカに似せて答えた私にデュークも似せてきて何だか変な会話になった。
「リリアナ殿下。潰し終わりましたよ。」
「もう終わりました?では、もう一つも少しだけ潰します。」
「えっ?先程こちらは潰さないと仰いませんでした。」
「言いましたよ。少しだけ上から力を入れてキレイな形で潰すんです。そうすると煮込む時間が短くなります。いくら小さい粒でもこれだけあると時間がかかりますからね。」
「そんな方法があるのですか!?」
「あるんです。でもあまり強くやらないでくださいね。形が潰れたら潰した鍋と同じになってしまいますから。軽くです。」
「かしこまりました。」
先程とは違いデュークがゆっくり上から圧力をかけていく。
「終わりましたね。そうしたら鍋を火にかけてもらって、レモンを一つ絞りましょう。レモンは洗ってからお願いします。あっ!皮は捨てないでください。後で使います。
絞ったレモン汁を鍋に一匙ずつ入れてもらって焦げないように煮込みます。これで水分がなくなったら完成です。保存用の瓶はありますか?」
「少々お待ちください。
おーい。悪い!ビンをとってくれ。」
デューク。...慣れたね。フツーに会話しているし。
「ん?おい!これでいい...の...か?」
ビンを持って来てくれた人が私を見て止まった。
「あぁ。悪いな。
こちらでよろしいですか?」
そう言ってデュークは受け取った透明なガラス瓶を見せてきた。傷もなさそうだしフタも付いているから問題ないね。
...ところで止まっている人は放置でいいの?
「はい。問題ありません。これをいくつか用意してもらいたいのですが...」
そこまで言って止まっている人に目を向ければ再起動したらしく私の問いに答えた。
「それなら大量にありますから大丈夫です。」
「では、お湯を沸かしてください。大きい鍋でビンの煮沸消毒に使います。」
「「「煮沸消毒?」」」
「えーっと。目に見えない悪いモノをキレイに落とすことです。」
...細菌なんて詳しく説明のしようもないからね。
そうだ!厨房に入ってから気になってたこと聞いておこう。
「あの、あそこに山になっているのは野菜の切れ端ですよね。」
「はい。そうです。あれは今日出た廃棄予定のものです。」
...野菜コンソメ。
いいよね。予定変更で作っていいかな?
あーでも、今の気分は甘いものなんだよね。
レシピを教えるから今度スープ作ってくれないかな?都合良すぎてダメかな?
「...あれを使ってスープを作るので今度作ってくれませんか?」
「作るのはもちろん構いませんが...あれは野菜の端で食べられるものではないですよ。」
「出汁をとろうかと思いまして。」
「出汁?」
「ええ。ダメですかね?」
さすがに廃棄予定食材はダメかな?廃棄予定食材でもある程度は作れるから新鮮な食材を使いたくないんだけど...
デュークは困ってリカに目を向けたけどリカならきっと。
「殿下のお好きにどうぞ。」
「だよね。じゃあやろう。リカ。あっち行って。」
「おっ。お待ちを!
おい。鍋かき回すの変わってくれ!」
デュークが慌ててビンを持って来た人に声をかけて付いて来た。
「いっぱいあるねー。泥付きの野菜以外をとってください。量は鍋の半分くらいあれば十分です。」
そういうとデュークは小型のボウルに半分ほどの量を取り出した。
お試しだからそれくらいで十分だね。
「取り出した野菜くずは丁寧によく洗ってください。
ちょっと食材庫に行ってきます。」




