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四階に上がると太陽の光を受けて明るい色合いの床と壁が光を反射して暖かい雰囲気を醸し出していた。
「では、まず応接室から行きましょう」
お兄様達に声を掛けてから私を抱き上げていたアピスに降ろしてもらって廊下を真っ直ぐに進む。
この廊下の一番奥の部屋が私専用の応接室でここは私が立ち入りを許可した者か御用達の地位を築いた商人やデザイナーとの面会場所になる。
リカが扉を開けて中にはいると、廊下の床や壁よりも少し濃い色合いの室内には黒で統一された家具が置かれている。いたるところに差し色に金色が使われている為に全体的にカッコいい部屋に仕上がっている。
お兄様達は中に入ると室内を好きに見て回っていたので、入り口から見回していると壁際にある棚の上に青いサルビアの鉢植えを見つけた。
「あれっ?もう花飾ったの?」
私の独り言をアピスが聞いていたらしく答えてくれた。
「はい。殿下方がいらっしゃるとお聞きしましたので、すぐに手配いたしました。」
「...えっ?お兄様達がくるって決まったのさっきだよ。」
「はい。そうでございますね。」
ほんの少し前に晩餐室で伝えたんだよ。それからは私を抱き上げていたし...
「いつ手配したの?」
素直な疑問を聞いてみるとただ笑みを深めただけのキラキラ笑顔の答えが返ってきた。
...答える気ないね。
アピスがキラキラした笑顔を向けてくる時は作り笑いだという事に最近やっと気が付いた。『知る必要はない。』多分、この笑みにはそういう意味がこめられいる、と思う。
次の部屋に行こう。お兄様達の先生をお待たせしている訳だし。
「お兄様。そろそろ次の部屋へ進みませんか?」
室内に散らばるお兄様達に声を掛けて廊下に出れば大人しく付いてきた。
「ねぇ。リリアナ。この壁の模様は花なの?」
居間に向かうべく廊下を歩いているとお兄様に声を掛けられた。
「花もありますが、主に蔦や蔓を描いた唐草模様と言われるものです。」
明るい色合いの壁の下部にはラインの様に唐草模様と花と葉を組み合わせたモノが描かれている。この世界に唐草模様があるかは分からなかったけど、私のつたない説明を理解してデザイン画を起こした森の妖精王は確実に私の頭の中を覗いていたと思う。
...ありがとう!素敵なデザイン作ってくれて!!
「蔓や蔦ですか。...ユーノお父様が喜びそうだよね。」
「えぇ。俺もこのデザインは好きです。」
緊張をしていたのか4階に上がって初めてグレイシアお兄様とユリウスお兄様が口を開いた。
「森の妖精王がデザインを描いてくれたんです。」
「「森の妖精王!?」」
しまった。
エルフは森の妖精王を信仰してたんだった。
私の不用意な一言でお兄様二人と側仕えのエルフさん達...エルフ組の目が一斉に輝きだした。
ヤバイ!!長くて難しい話が始まる!早く先に進もう!!
お兄様の森の妖精王関係の話は長いし難しから眠くなるんだもん。
「そして、こちらが居間になります。」
少し走る様に居間への扉の前に行き、私の言葉を合図にフォルカーとリカが両開きの扉を同時に開けた。
扉を開けると、眩しいほどに明るく広々とした室内がそこにはあった。
「「「なんにもない。」」」
なんにもなくないもん。お兄様達三人で声を揃えなくてもいいじゃん。
「ここに上がるときは靴は脱いでくださいね。」
どうしても室内を靴で歩くっていうのが気になってね。床でゴロゴロ出来ないし。
この部屋は大工さんにお願いして一段高くしてもらったので扉を開けて直ぐに靴を脱ぐスペースがある。
床と壁は廊下よりも明るい乳白色の木で作られたため太陽の光を反射して眩しいくらいに明るい。ポイントとして黒色の木も組み合わせてデザインが埋め込まれているオシャレ仕様だ。
「ねぇ、なんで何も置かなかったの?」
今日、初めてグレイシアお兄様に声を掛けられた。
「なにもないという程ではないと思いますが...そんなに必要と思わなかったので。」
そういえば、この間までいた客室は所狭しと家具が置かれていたね。
そんな事を思い出しながら答えていると。ユリウスお兄様が会話に加わってきた。
「でも、これじゃあどこに座るんだ?端にあるカウチでは足りないだろ。」
「あそこの白いラグの所に座ります。」
そう言って部屋の一角にある白いラグとクッションが置かれている場所を指させば、一足先に室内を見て回っていたお兄様が声に反応した。
「ここ?座ってもいい?」
「もちろんです。」
そうだ!お兄様達にも掘り炬燵を体験してもらおう。そうした方が早いよね。
「お兄様方もどうぞお座りください。」
招き入れれば困惑しながらも付いてきてくれた。
「足を降ろせる仕様になっておりますので、普通にお座りいただけますよ。」
「えっ?足を降ろせるの?...あっ!本当だ!!」
「本当に床に座るのか?不思議な感じだな。」
「ユリウスお兄様!!」
グレイシアお兄様、ユリウスお兄様、は掘り炬燵への反応なんだけど...お兄様はどうしたの?何をそんなに驚いているの?
お兄様を見ればすでに掘り炬燵から飛び出して窓に張り付いてた。
「すごい!!外にお庭がありますよ!!」
「ルーク。ここは4階だぞ庭なんて...」
「凄いね。庭だ。」
...本当はね。『プランターで何か育てようかな。』くらいの話を森の妖精王にしたんだよね。そうしたら森の妖精王が張り切ってベランダをデザインした結果。なぜか空中庭園になったんだ。
そこでやめときゃいいのに日本庭園の話を始めた私も悪かったんだ。そしたら人の庭師では作れない庭になったから森の妖精王が造ったんだよね。
私もまだ見てないしお外でお兄様達にお茶をだそうかな。
「お兄様。ではお外に出てみましょうか。」
立ち上がり居間の出入口で靴を履き木製の扉をくぐるとそこは芝生の地面だった。




