表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
3-お兄様と遊ぼうー
68/118

66

 あれから三週間...


 今日は後宮の私室に引越しの日。

 曾おじい様と森の妖精王が鉢合わせたあの日に私室の内装や家具のイメージが直ぐに固まりアピス達がすぐに手配して大工さんが大いに張り切ってくださったらしく三週間という短さで4階の改装が終了した。もっと時間かかると思っていたのに...速いよねー。

 内装はファンタジーの定番!ドワーフの大工さんがやってくれたらしい。らしいっていうのは工事現場は危険という理由で立ち入り禁止だったから私はまだ、自分の私室なのにどうなっているのか知らないの。

 でも、みんなが言うに私らしい落ち着く空間に仕上がっているんだってさ。


 それから手の火傷はあれだけ大騒ぎしたのに3日で治った。

 二日目の夜包帯を外した時見てみたらうっすらと火傷の跡が残ってたくらいで翌朝起きたら消えていた。

 治るのも速いよね。それとも私の痛がり方が大袈裟だったのかな?

 まぁ、治って良かった。


「アーピース。用意で来たー?お部屋行こうー!!」

 最初は治療の為、それからも何だかんだと理由をつけられて後宮には行っていないし、お兄様にもずっと会っていない。時々、お兄様から手紙が届くからお返事をしてるくらいだ。

 後宮に行ったら延び延び(のびのび)になっていた森の妖精王にお菓子作ろう。

 それからホットケーキも!バターと蜂蜜かジャムたっぷりでね。

 後宮に行ったらやりたいことを頭の中で考えているとアピスがやってきた。

「申し訳ございません。お待たせいたしました。」

「用意できた?」

「はい。では、抱き上げさせていただきます。」

「早く行こう!!」

 ...毎日、抱き上げられているから慣れてきたな。慣れって怖い...

 後宮に行ったら自分で出来るだけ歩こう。

 あっ!一つ忘れてた。

「アピス!一つ忘れてた。一回降ろして。」

 アピスに床に降ろしてもらって、みんなを部屋から出して入り口に立って中を見る。

 そういえばこの部屋に一月以上いたんだね。長いような短いような...

「お世話になりました。」

 そう言って礼して部屋から出た。

「じゃ。行こう!!」

 廊下に出て待っていた皆に声を掛けて歩き出した。

「殿下!そちらではございません。」

 ありゃ?





 後宮に着いて3階まで抱っこされて進むとこの間との違いに気が付いた。

「ねぇなんで近衛騎士だっけ?多くなっているの?」

 ここに来るまで要所要所で警備で立つ騎士が前より確実に多かった。

「殿下がこちらにお住まいになられる事になったからです。」

「えっなんで?私が住むと?お兄様達はここに住んでいるんでしょ?」

「...あぁ。後宮のこの中央棟にお住まいになられるのは殿下のみです。

 御夫君様と王子殿下はこの後宮の裏手にある離宮がお住まいでございます。」

 ...まだ奥があるだと!?後宮...どこまで広いの?

「...ねぇ。王宮の近くに森があるよね?そこはさすがに王宮内じゃないよね?」

「王宮内でございます。」

 まさかと思って聞いたらまさかだった...

 王宮ひろー。広さが分かんないくらい広い!

 4階への階段に着くとここにも近衛騎士が四人もいた。

 ...どれだけいるのさ。

 私達を見つけると一斉に騎士の礼っていうの?胸に手を当てるやつ。をしてくれてちょっとビビった。私が驚いたことに気が付いたアピスがちょっと笑ったし...襟足引っ張ってやる。


 四階に上がると私のイメージ通りに優しい色合いの木目調の床が出迎えた。

「殿下。申し訳ございませんが。

 お部屋を見て回るのは明日にして頂けませんでしょうか?」

 周りを見渡していると私を抱き上げたままのアピスに提案された。

「なんで?夕食会は行かなくていいんでしょ?まだ夕方にもなってないし見て回っちゃダメなの?」

 不思議な提案にアピスを見つめ理由を聞く。

「まず、これより応接室で後宮の召使い長、近衛騎士隊長の挨拶を受けて頂かねばなりません。

 その後...」

「その後...?」

「...クロノ殿下がお呼びです。」

「クロノ殿下...?なんかあったけ?確か第三王子だよね?

 接点などいままでない人の名前が出てきて思い出そうとするが全く思い出せない。

 たしかアポロさんの左隣に座っている美人さんだよね?

「とにかく少し急ぎますのでご容赦ください。」

 その後、近衛騎士隊長と召使い長の挨拶を応接室で受けて残念ながらまた階段を降りるハメになった...別に抱き上げて移動させられてるからいいけどさ...ちぇ。


 クロノさんが呼んでるって言われたんだけど...このままじゃ後宮出ちゃうよ?

 不安になってきた私はアピスに聞いてみた。

「ねぇ。...アピスどこ行くの?」

「王宮の中庭です。」

「もう夕方なのに?」

 この世界に外灯みたいなものはないので、月が出ていない日の夜は深く暗い。だから夜は少し怖くて外に出ないようにしてたんだけど...

 えっー。夕方なのに庭に行くの?

「はい。殿下。怖がらなくても大丈夫です。」

 ...夜が嫌いな事バレてた。何とも言えない羞恥心を感じながら少しの強がりが口から出た。

「怖くないもん...ホントに行くの?」

「はい。」

 うぅぅ鬼―!!なんでいいキラキラ笑顔してるのさ!!前から思ってたけどアピスっていじめっ子だ!!私が嫌がるときほどいい笑顔するもん!!

 そんな私の思いも虚しく中庭に強制的に連れ出される。

 絶対に今度から自分で歩こう。

 薄暗くなり始めた頃に中庭のレンガ道を進むとその先には木の隙間を埋める様にピンク、白、黄色のユリの花が咲き誇る美しい庭園があった。

 ほーキレイ。これだけあるとやっぱりユリの香りが凄いね。酔いそうなくらいだ。

 残念な事はほとんど暗くなってしまったのでよく見えないってことかな?でも、いい場所見つけた。今度、昼間来よう。

 もうしばらく進むと木の隙間から灰色の石で出来た東屋が見えてきた。

 (おもむき)あるなー。木の隙間から見える灰色の東屋ってかっこよくない?霧が出てれば絶対雰囲気あるよね!!

 東屋にたどり着くとそこには王族の人達と曾おじい様が集まっていた。

 ?????????

 なにかあるの?あれ?アピスはクロノさんが呼んだって言ってなかった?

「おお。きたか。」

「遅くなり申し訳ございません。」

 アピスはそういうと私を降ろして側仕えの列に並んでしまった。

 ええ??なにがあるのかくらい説明してよ!!

「リリアナこっちです。」

 お兄様に呼ばれ何がなんだかわからずに側に行くと中央の席に座らせられた。

 ...お願い。誰か説明して。そんなことを思いながら周りを見渡していると準備が出来たのか首相さんに声を掛けられた。

「リリアナ。誕生日おめでとう。

 今日はいつもと趣向を替えて庭での食事にしてみた。存分に楽しみなさい。」

 ...誕生日?今日?...そうなの?

「リリアナ。誕生日おめでとうございます。今日は夕食はいつもより豪華なんですよ。」

「えっ?あっお兄様。ありがとうございます。」

 それから入れ代わり立ち代わり皆さんがお祝いの言葉と話したことがない人は自己紹介をしてくれた。

 残るは...

 少しやせたように見える第六王子のユリウス君だけだ。

 さっきから私の前に来て何かを話そうと口を開いては閉じるを繰り返してる。

 皆さんも見守っているし、何だか無性に頑張れと言いたくなるね。

「っごめん!」

 おぉぉ!!よく頑張ったね!!偉いぞ!曾おじい様の言う通り素直な子だねー。

「私もごめんなさい。言い過ぎました。

 でも、これだけは言わせてください。貴方が汚らわしい平民と呼んだその人は私にとってはとても大切な人です。それはどんなに生まれが悪くても、身分が低くてもこの先、変わることはありません。

 大切な人を侮辱されるのは、自分が蔑まれるより悲しい事です。」

「うん。分かった。二度としない。...本当にごめん。」

「もういいですよ。」

 そう言って笑顔を向けたら見守っていた周りの人達が一気に安堵した。

 ...わっかりやすいなー!!

「よかったですね。ユリウス。

 リリアナ。ユリウスの父として息子に許しを与えてくれてありがとうございます。」

 素早くユリウス君の側に寄ってきたユーノさんがにお礼を言われた。

 ...意外だね。初めて会って時はテンション高いエルフさんだったのにちゃんとお父さんだった。って言うとおかしいし失礼だけどなんか意外だ

「さぁ、ユリウスとリリアナの話も終わったことだ食事にしよう。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ