65-ルーク視点ー
ブクマ・評価ありがとうございます。
第三章もこれを入れてあと3話です。
もうしばらくのお付き合いをお願いいたします。
あの日晩餐室に着いた時、医務室に行くために足早に立ち去るアピスの後ろ姿が見えた。
レオナルド兄様は側にいた者達に何があったのか怖い顔をして聞いている。
話を聞き終わったのか召使い達とユリウスお兄様の側仕えを厳しい目で見てから口を開いた。
「状況は分かった。まず、今回の件に思い当たる事がある者はすぐに名乗り出ろ。そして後で行き過ぎた発言のあった者は罰を下す。
それから、ユリウス。」
「はっ。はい。」
「ケガはないか?」
少しだけ優しくなった口調で話したお兄様を気遣った。
「ありません。あの、お兄様!僕は...」
「それはあとでよく聞く事としよう。だが一つ。暴力はいけない。
それはわかるな?」
「...はい。」
「お前の側仕え達に話を聞きたいからしばらく俺の側仕えをつける。終わるまで晩餐室で大人しくして待っていなさい。」
「はい。分かりました。」
お兄様は肩を落としトボトボと晩餐室に向かった。
レオナルドお兄様はそこで僕が来たことに気が付いたらしく僕を手招きをした。
「ん?ルークもう来ていたのか。...あっ!ユーノ父上!よろしいですか?」
「あの。お兄様何があったのですか?」
「これは?何の騒ぎですか?」
「ルーク。後で説明はしてやる。今はユリウスの側についていろ。」
「えっ?はっはい。分かりました。」
「レオナルド?...それにこの魔力残滓は火魔法ですか?」
「ご説明をします...」
お兄様に言われた通りユリウスお兄様の側に行ってたけどずっと何かを考えているみたいでいつもみたいにお話をしてくれなかった。翌日の昼頃ようやく何があったのか教えてもらえた。
お兄様はあれから時間があればユーノお父様とお話をして、それ以外は自室から出てこない。
リリアナのお見舞いに行こうとしても、アピス達やお父様や曾おじい様にいい顔はされなくて行けなくて、しばらくは我慢をしていたんだけど僕の側仕えのエルフさんがポツリと漏らしたんだ。
「御可哀想にリリアナ殿下は今年も生まれた日を祝われないのですね。」
そういえば、リリアナは3歳になるのに僕は祝った事がない。リリアナの誕生日っていつだろう?お兄様なら知っているかな?
普段お兄様やお父様たちは晩餐室で食事をとった後、談話室でお酒かゲームをして遊んでいるんだよね。僕やリリアナは子供だからって帰されちゃうけど。
...ずるいよね。
今日だけは我儘を言わせてもらおう。いっぱい我慢したし少しくらいならいいよね?
「お兄様!」
「...ルーク!?帰ったんじゃないのか?どうした談話室に来るなんて珍しいな。」
「あん?ルーク?...お前も酒飲むか?」
「子供に酒を勧めないでください。脳みそまで筋肉なんですか?」
「よぉ。久々にゲームするか?遊んでやるぞ!」
上からレオナルドお兄様、アポロ兄様、クロノ兄様、ダグラスお兄様が談話室でお酒を嗜んでいた。
「今日は聞きたいことがあって!リリアナの誕生日はいつですか?」
「...俺知らねぇ。」
アポロ兄様大丈夫です。期待してません。
「夏じゃなかったけ?」
ダグラス兄様もうちょっとないですか?
「...暑い夏の日の夜中に生まれたんですよね。」
クロノお兄様、時間じゃなくて日付が知りたいです。
「確か再来週の...」
「再来週!?」
「ど、どうしよう。...僕...ぼく...」
どうしようプレゼントもまだ何にも考えていないのに...
「おっ落ち着け。ルーク。リリアナの誕生日がどうした?」
「レオナルドお兄様
...僕、今まで一度もリリアナの誕生日を祝った事がないんです。今年こそ祝おうと思ったのにこんなに近いなんて...どうしよう。」
「...ねぇ。もしかして今まで誰も祝ったことないんじゃないの?リリアナって。」
「あるわけありませんね。」
「あー。かんっぜんに忘れてたな。どうするアニキ?あと三週間か?間に合うか?」
「間に合わせるしかないだろう。
だが、参ったな。今回の事で召使い達は入れ替えるから人数が足りるか?」
「...父様方の実家に手助けを頼みましょう。それなら間に合うでしょう。」
クロノ兄様がレオナルドお兄様の問題の解決案をすぐに出してくれた。
「...よし!席を外す。父上は書斎で仕事中だったな。相談してくる。
ルーク。お前はリリアナへのプレゼントを考えとくんだぞ。」
「レオナルドお兄様!!はい!分かりました!」
僕の返事を聞くとレオナルドお兄様は頭を撫でてから出て行った。
「ルーク。張り切ってんなー。」
「アポロ兄様当然です!リリアナの初めての誕生日会ですよ!
それに僕がお兄様なんですから!リリアナの世話を焼くのは僕の役目です!」
「...ふっは。そうか。そうだったな!!ルークがアニキだな。」
「アポロ兄様なに当然のこと言っているんですか?」
「クロノ兄さんここはルークの成長を喜びましょうよ。
あっでも、身長は成長するなよ。クロノ兄さんにグレイシアが怒るから。」
「ダグラス。私より身長が高いからっていい気にならないでください。
あと、別に怒ってませんから。まったく。
...ルークはいつまでも可愛いままでいてくれればいいのですよ。」
「えー!!僕は可愛くありませんよ。それに僕は男の子なんですから僕はカッコいいんです。
それから!可愛いのはリリアナです。」
「リリアナねぇ。俺、まだ話したことないんだよね。
アポロ兄さん話したことあったでしょ?どうだった?怖い?」
「ダグラス。3歳のガキに怖いってどうなんだ?
ん?なんだよ。お前まで。」
クロノ兄様がアポロ兄様に視線を向けて続きを促していた。
「私も話したことありませんから。」
「まずお前は口の悪さを直せ。」
「アポロ兄様には言われたくありませんね。そんなことよりリリアナはどんな子なんですか?」
「どうって...フツーだぞ?表情が豊かで考えてることが顔に出る。この間なんてダリオの親父と表情だけで会話してたぞ。あとは、前世の記憶があるせいか子供だと思っていると妙な感心するな。それからまだ、文字が読めないらしいぞ。」
「...3歳で文字が読めないのは普通では?」
「リリアナと話しているとガキだと思えねぇんだよ。」
「とにかく!リリアナは可愛いんです!!
お兄様方はプレゼント何がいいと思いますか?」
「...俺に聞くな。」
「アポロ兄様には聞いてません。」
「私に聞かれても...」
「クロノ兄様そこをなんとか!」
「したことがないので知りません。」
「んー?女の子へのプレゼントって花とかお菓子でしょ?それか宝石かドレスか」
まったく期待をしていなかったダグラス兄様が言った。
「あー。宝石とドレスはやめておけ。」
「何で?アポロ兄さん。」
「この間、不敬なデザイナーと服飾ギルド長が追い返されただろ。それにリリアナの好みがわかるのか?」
「となると、お花かお菓子...」
「まぁそこからは自分で考えるんだね。俺も何にしようかな?好みが分かんないから無難な物になるかなー?」
「...ダグラスも用意するんですか?もしかして私も?」
「クロノ、グレイシアにも伝えておけよ。...あー剣とかダメだよな?」
「「「ダメに決まってます。」」」
「いい鍛冶屋なら知っているんだが...どうすっかな?」




