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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
3-お兄様と遊ぼうー
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 あれから身支度を整え、子猫を連れて後宮の晩餐室に入るとまだお兄様はいらしてなかった。

 他の人も来てないしさすがに早すぎたね。

 召使い達も準備で忙しいみたいだし邪魔にならない場所で待ってようか。確か廊下にイスがあったよね?そこにいようかな。

 晩餐室を出るとお兄様より少し大きい茶髪で遠目からでも仕立ての良い服を着た男の子が数人の側仕えを連れてこちらに向かって歩いてきてた。

 だれだっけ?でも、たぶん王族の誰かだよね?

 廊下の端によって道を開けながら誰か思い出そうとしているが名前が全然出てこない。

 アピスにマナー聞いておけばよかった。こんな時どうすればいいのかな?

「おい、貴様。」

 いろいろ必死に思い出そうとしていると名前の出てこない誰かさんから声をかけられた。

「またノコノコとやってきたのか?

 いい加減に身分というモノを理解したらどうだ?あのような下賤な女が生んだモノが高貴なる王家の者であるハズがないだろう。物乞いは物乞いらしくしていたらどうだ?」

 はっ?この子なに言ってんの?

 いきなりの侮辱に怒りよりも驚きが勝った。

「なんだ?俺が話している意味が分からないのか?やはり学のない者はダメだな。」

 いや。子供が3歳児に学のないとか意味分かって言ってる?

 それよりもこれ絶対にこの子の言葉じゃないね。

 この子は私を真っ直ぐに見てる。まるで親が言っていたからそれが正しい事だと信じている様に自慢げに話している。それに比べ周りの側仕え共は私への蔑みの瞳も嘲る口元も隠そうとしない卑劣な大人達だ。

 言い返しちゃお。

「失礼ですが。殿下。それはどなた様のお言葉ですか?

 卑劣な大人達の言葉を鵜呑みにすれば殿下の品位が疑われますよ。」

「なっ。なんだと!?本当の事だろう!?

 お父様方もお兄様方もお前に騙されているって皆が言っているぞ!!

 それに聞いたぞ!お前あの下賤な女に捨てられて、汚らわしい平民に育てられたそうじゃないか!!」

 フィリップまで馬鹿にしたな!

「皆が言えばそれが正しい事ですか?貴方は御自分の生活を支えてくださる方々も知らないようですね。

 いくら学を詰め込んでも大切な事を知らないのでは何の役にも立たない。

 それからフィリップは汚らわしくなんかありません。私を育ててくれたあの人は貴方の周りにいる方々と違い、そんな風に誰かを貶めることを良しとはしない心優しい人でした。」

「子供のくせに生意気な!!」

 ドン!!


「きゃあ!!」

 いっ。いったぁー。こいつ突き飛ばしたな!!

「リリアナ殿下!お怪我はございませんか!?」

 廊下での私達の騒ぎに気が付いたらしいフォルカーや召使い達が慌てて寄ってくるのが視界の端に辛うじて見えた。

「うぅっぅぅぅぅぅ!!シャー!!」

 私が突き飛ばされたことに怒ったのか子猫が私を庇う様に前に出て鳴いたら火を吐き出した。


 あっ。...あの子、危ない。


 その考えが浮かんだ瞬間、何も考えずにスライディングをするように子猫を後ろから掴み手で口をふさいだ。

「ふにぐっ。」

「あっ!ぐっ!」

 手の焼ける感覚と鋭い激痛が走った。

 私が掴んでいることにすぐに気がついた子猫は火を止めて私の手を心配そうに見ている。

 お願いだから今、舐めないでね。

 痛みに脂汗を流しながらもそんなことを思える自分に感心しながらも、顔を上げて子供の様子を見れば青ざめた顔をしながらも腰を抜かしたらしく床に座り込んでいた。ついでに側仕え共も腰抜かしてた。

 ...良かった。あの子は大丈夫みたいだね。

「リリアナ!どうしたのですか!?」

「なんかあったっすか!?」

 スイキンとうっきー君が私になにかあったことを察したらしく、目の前に現れすぐに私の焼けた手に気が付いた。スイキンが鼻を上げて小さな水玉を出現させて火傷した手に纏わりつかせる。

「大丈夫ですか?これで痛みが引くはずです。」

 スイキンの出した水でしばらくすると痛みが大分ひいたけど、手や指を動かせば激痛が走るので床に伏せたまま大人しくしていた。

「俺、森の妖精王に薬を貰ってくるっす!」

 私の様子を観察していたうっきー君はそう言い残し木の葉に包まれて消えた。

 その頃には周りが騒がしくなっていて、私を囲むようにアピス、フォルカー、リカが揃っていた。

「スイキン様。殿下をこのまま床に寝させておくわけにはまいりません。持ち上げてもこの魔法は問題ありませんか?」

「大丈夫です。この魔法は痛み止めですので、傷に触れないようにしてください。」

 アピスが私を持ち上げようと手を伸ばした時にレオナルドさんの声が聞こえた。

「これは?何事だい?...リリアナ!?なんで床で寝ているんだ?」

「レオナルド殿下。申し訳ございません。急ぎ殿下を医務室へお連れいたしますので。これにて失礼をさせて頂きます。」

 アピスはレオナルドさんにそう告げて、私をお姫様抱っこして急ぎ足で医務室に向かった。

 ...どうでもいい事なんだけど、私いま人生初のお姫様抱っこされてる。

 嬉し恥ずかしなんだろうけど火傷が痛すぎて騒ぐ気が全然、起きないね。


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