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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
3-お兄様と遊ぼうー
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 もうすぐ夕暮れという頃に外出をしていたスイキンとうっきー君が戻ってきた。うっきー君はまだしもスイキンが出掛けるなんて珍しいね。いつも寝てるのに。

 それに二人でお出掛けってのは初めての事じゃない?

「おかえりなさい。珍しいね。どうしたの二人揃って?」

「ただいまっす。

 ちょっと気になることがあって見に行ったんすけど...

 あっ。あ茶が飲みたいっす。」

「ただいまもどりました。

 王宮内で火の精霊の気配がするのですよ。

 私にも頂けますか?」

 二人は私が座っているソファの前のローテーブルに乗って流れる様に側仕えにお茶を要求した。

 ...いや。いいけどさ。

 声を掛けようと後ろを向くともうすでにフォルカーがお茶を淹れに歩き出した後だった。

「火の精霊?どういうこと?」

「そうですね。まず、リリアナはこの国の建国の話を知っていますか?」

 スイキンに問われたが全く聞いたことがないので、後ろに立つアピスに目を向けた。

「太陽神のお話でございますか?」

「そうっす。それっす。」

「昔話です。確か地上の娘に恋い焦がれた太陽神がこの地の争いを鎮めこの国を作ったと。」

 アピスの昔話にもならない説明に何も言葉が見つからずに二人に先に促した。

「それがどうしたの?」

「それが実話なんです。

 昔に太陽の精霊が恋に落ちて人と子を成したのがこの国の始まりなんです。」

「ほぇー。そうなんだ。」

「「「はっ!?」」」

 スイキンの答えにお茶を持って来たフォルカーを含め側仕え3人が声を揃えて驚愕した。

「いやいや。何を仰るのですか?あれは御伽噺では?」

「そうなると王家の伝承も...」

「えっ?えっ?実話?ホントに?」

 三者三様の驚き方をしていて見ていてとても面白い。けど。

「フォルカー。お茶、気を付けて。火傷するよ。」

 スイキンとうっきー君のお茶を持ったまま驚いているんだもん。危ないよ。

「なのでこの場所は太陽の精霊の力が特に強いのですがここ数日、強くなっている気がして森のと王宮を見て回っていたのですけど...」

「んにゃーん。」

「ん?猫ちゃんどうしたの?お膝来る?」

 スイキンが真面目に話をしている最中にお昼寝から起きた子猫が私の膝の上に乗ってきたので軽く撫でているとスイキンとうっきー君が子猫を見て叫んだ。

「「いたーー!!!!!」」

「えっ?なっなに?何が?いたの?」

 いきなり叫ばれ何のことか分からずに周りを見渡す。

「リリアナの膝にいるのが火の精霊の子供っす。」

「なぜ火の精霊の子供がリリアナの膝に乗っているのですか!?」

「なぜ?...この子猫?の事?昨日拾ったから?」

 ????どういうこと?????

「あーつまりっす。その子猫、火の精霊の子供がいたから王宮の太陽の精霊の力がいきなり強くなったってことっす。」

「んん?なんで火の精霊の子供がいると太陽の精霊の加護が強くなるの?」

「それはですね。

 これは昔話の続きですが、精霊の中では人と子を成すという事は禁忌とされていいて、戻った太陽の精霊は格を下げられて火の精霊になったのです。」

「...つまり、この子猫の祖先は火の精霊であり、元太陽の精霊でご先祖様って事?」

「少し違いますがそんなところです。

 それにしてもその子供はずいぶんリリアナに懐いていますね。何があったのですか?」

 スイキンが私の膝の上でくつろぐ子猫を剣呑な目で見ながら聞いてきた。

「なーんもないよ。馬車に戻ったらこの子が寝てただけ。」

「親はいなかったんすか?」

「いないよ。この子だけ。」

「珍しい事もあるっすね。精霊の子供は狙われやすいから親がずっと見ているはずなのに。

 もしかして迷子っすか?どれくらいここにいるんっすか?」

「見つけたのが昨日の夕方だから丸一日くらいだね。

 親猫。じゃない。火の精霊にどうやったら連絡できるのか知ってる?」

「連絡をするつもりですが?」

「勿論。こんなに小さいんだよ。親猫はきっと心配してるでしょ。」

「...森の妖精王に聞いてみるっす。」

「それがいいですね。森のよろしくお願いします。」

「ありがとう。うっきー君。悪いけどお願いね。

 それにしても良かったー。子猫の親が見つかりそうでホントに良かった。」

 ......あっ。昨日、お兄様と一緒に世話する約束しちゃったよ。あー。お兄様に事情を話しすしかないよね。子猫を飼えないのはちょっと残念だけど...

「でも、ま。お家に帰れそうで良かったね。」

 そう子猫に話し掛けながらもう一撫で毛並みを堪能しておいた。

 モフモフ最高!!

「アピスー。今日は早めに夕食会に行けるかな?お兄様にこの子の事をお話したいの。」

「かしこまりました。」

 そう言って私の身支度をするためにリカと共に衣裳部屋に向かった。

「...そう言えばスイキンは妖精なのに精霊のこと詳しいんだね。」

 スイキンっていつも寝ているのにいろいろ知っているんだよね。

「詳しくはありませんよ。ただ、この国の事はよく知っています。」

「えっ?この国の事?なんで?」

「...この国が出来る前の事です。この場所は大きな湖でした。

 ワタクシはそこで生まれました。この国ができ、随分と時が経ち、湖がなくなっても離れがたくてずっとこの場所を漂っていたのです。ですから、この場所の事ならばほとんどの事を知っています。」

 スイキンがなんだかとても寂しそうに見えて急いで話題を探した。

「スイキン!...ここ湖だったんだ!」

 話なにも変わってないよ!!

「はい。とても広く大きかったです。」

「今度でいいからさ。その湖の話を聞きたいな。」

「昔の話ですよ。」

「それでもさ、聞きたい。スイキンの事だしね。」

 そう話すとスイキンがとても穏やかに笑って頷いてくれた。



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