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ジャノヒゲ女王国  作者: くまごん
3-お兄様と遊ぼうー
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 昨夜、後宮でグラッドさんに言われた様に朝からデザイナーが王宮へ登城した。

 前回と同じ王宮の応接室で会うことになったので身支度が終わりアピスに抱き上げられて向かうところ、デザイナーについて聞いてみた。

「グラッド様のお話では、デザイナーの名前はノア・ブライド。男爵家出身のデザイナーです。家を継げぬためにデザイナーを(こころざ)し入った商会がグラッド様の御実家と縁のある商会だったそうです。その御縁で今回グラッド様よりの御紹介を頂くことになりました。」

「そっかー。兄弟がいたら家を継げるのは一人だけだもんね。ちなみに長子相続?」

「はい。我が国では一般的には長子があとを継ぎます。」

「という事は...王族ならレオナルドさんだね。」

「残念ですが、それは分かりません。まだ正式な決定をしておりませんので。」

「えっ?そうなの?なんで?」

「殿下。このお話はまた後日にいたしましょう。着きましたので。」

「あっ。ここか。あとで説明してよ。」

「かしこまりました。」

 アピスが目で合図すると扉の前に立つ騎士がノックをして私の訪問を告げた。

「失礼いたします。リリアナ第一王女殿下がご到着です。」


 応接室に入り奥の席に座った私の前に跪くのは少し長い銀髪を一つにまとめたまだ幼い顔立ちが残る青年だった。

「リリアナ殿下の御尊顔に拝する栄誉を頂きました事を心より感謝申し上げます。

 私ノア・ブライドは恐れ多くも爵位を賜る家の出ですが、殿下の御衣裳のご提案が出来ましたらと思いまして本日は馳せ参じた次第でございます。まだ駆け出しの身ではございますがどうかご覧くださいませ。」

 ...私、答えなくていいって言われてて良かった!!こんな丁寧な言葉、前世でも今でも使ったことないからなんて返せばいいのか分かんないよ!

「歓迎いたします。ノア・ブライド。

 殿下は貴殿のデザインをいたく気に入られた御様子です。本日はデザイン画をお持ちですか?」

「はい。勿論ございます。こちらでございます。」

 そう言ってノアさんが出した羊皮紙をフォルカーが受け取りリカが広げ私に一枚ずつ見せてくれた。

 どれも素敵なドレスだね。私をターゲットにしているから子供服だけど。

 少し可愛いすぎる気がしなくもないけど...でもそれ以上に、私が欲しいのはもっとラフな服が欲しいんだよね。

 デニムと足出しはアピスに却下されたけどズボンは作っていいっていうからズボンとスカートとシャツとワンピ!それも夏用の薄い奴!!あとできればサンダル。

「いかがでしょうか?」

 欲しいものを再確認したところでリカが持つ羊皮紙をすべて見終わったのでアピスに声を掛けられた。

 いちいちアピスを呼ぶのめんどくさいなー。数回の我慢っていうけどさ...

「凄く素敵なドレスだと思うけど、やっぱり欲しいのは前に行っていたモノかな?」

「かしこまりました。」

 アピスはノアさんに向き合うと私の要望を話し出した。

「本日、殿下はもっと気軽な服装をお望みの様です。他にデザインはございますか?」

「気軽でございますか?数枚ならばございますが...

 もしよろしければこの場で殿下の御要望に合わせてデザインをさせて頂きますが?」

 ...私の要望に合わせてって超高級店みたいに!?マジか!?

「いいでしょう。何か必要な物はございますか?」

「私のバッグをお返し頂いてもよろしいでしょうか?仕事道具が入っておりますので。」

「分かりました。すぐに持って来させます。」

 え?バッグ持ち込めないの!?なんで?

「ねぇ、何でノアさんバッグ持って来れなかったの?」

 不思議に思い少し後ろに立つ二人に小声で聞いてみた。

「警護の為です。万が一でも殿下に危険のある物を近づけないためです。」

「へぇー。危険ねぇ。」

 フォルカーの言葉に頷きながらも私自身、狙われることをした覚えがないため疑問に思いつつもこれが王族の普通なのかと無理矢理、自分を納得させた。

 しばらくして召使いによって運ばれたバッグから羊皮紙と羽ペンとインクを取り出すとノアさんはあっという間に10枚ほどのラフ画を描いてしまった。

 アピスに見せてもらうと可愛らしいのもから大人っぽいものまでいろいろなコーデが描かれていた。凄いね。このデザイン画通り買って着れば毎日の着替えに困らないよ!

 何枚か見た時にジャケットが目に映った。

「あっ。」

 思わず声を上げるとアピスが直ぐに近づいてきた。

「あのさ、タオルの生地でフード付きのカーディガンみたいなの作れないかな?」

 そうだよ!寝間着がスケスケとは言わないけど何故か薄目のデザインしかなかったんだ。誰が見るわけじゃないから気にしなかったけど少し肌寒い時あるからさっと羽織れるものかいいよね。

「このような形でしょうか?」

 すぐにラフ画にされて私に見せにきた。

 ナイス!それです。...でもなぜ、フードに猫耳をつけたの?

 まぁいいや。可愛いし。

「うん。それ。黒猫でお願い。

 ...ねぇ、アピス。人形が欲しいって言ったら怒る?」

 猫耳フードを見ていたら前世の部屋に置いてあったクマさんを思い出してしまった。少し大きめのクマさんは、ある時は抱き枕の代わりに、またある時はサンドバックになったからとても便利だった。

 私は今世でも君の事を忘れない。作れないかな?

「えっ?人形ですか?」

「そう。タオルの生地で中にワタ詰めてさ。ダメかな?」

「...作れるか聞いてみます。」

 そう言ってアピスがノアさんに聞いてくれた答えを耳を澄ませて待っていると、今までにない素っ頓狂な声が部屋に響いた。

「えっ!?人形ですか!?人形は木や紙で作るものでは?」

「そんなことないですよ。」

 思わず声を上げ言い返してしまった。

 やっちまったぜ!!でも、言っちゃたなら仕方ない。最後まで言わせてもらおう。

「私の様な幼子には柔らかな素材で作った物の方が木や紙で作られた物よりも安心できます。それに人形と言っても人型の物を欲しているわけではありません。可愛く作られたクマさんが欲しいです。」

 ...何言っての私?欲しいのは本当だけど服のデザイナーに力説することじゃないでしょ。

 あー。でも、作るには縫製技術が必要だよね。

「作れませんか?」

 言っちゃったものは仕方ない。ダメって言われたら諦めよう。

「しっ失礼いたしました。リリアナ王女殿下。」

 私が出ちゃたからノアさん平伏しちゃった。アピスは大袈裟にため息ついてるし。

 ...ごめんなさい。

「かしこまりました。

 殿下のお心に沿うようなものが出来るかは分かりませんが、精一杯やらせて頂きます。」

 うぅぅ。無理を言ってごめんなさい。だからそんなに畏まらないでください。

「無理を言っているのは承知しておりますが、どうかお願いします。」

 ...頭を下げられないって辛いな。


「私は『なにもなさらないで下さい』とあれ程お願い申し上げましたが、殿下のお心には届かなかった様ですね。」

 ノアさんとの面会が終わり私が使っている客室に戻ったら待っていたのはアピスのお説教だった。

「すみません。」

「殿下。謝罪などしてはなりません。そもそも殿下は...」

 何を言っても倍で返ってくるのでその日の午後はほとんどアピスのお説教だった。


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