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「デイジーなぜここに。」
「なにもたもたしてんのよ!アンタ達が遅いからアタシが来てやったんじゃない!
アタシの離宮を壊したやつがここにいるのよ。とっとと殺しなさいよ!
アタシへの殺害未遂でしょ!!
......いえ。やった事を後悔させてから殺しなさい!」
デイジーが鬼のような形相で首相さんに詰め寄っている。
怖。
リリアナはゆっくり音をたてないようにフィリップの背後に隠れた。
「落ち着きなさい。
彼に離宮の壁を壊すことは出来ないのだよ。」
「じゃあ誰がやったって言うのよ!
コイツがそこにいたんでしょう!なら、コイツがやったんでしょ!」
「それを知るために私、自らが取調べを行っているのだ。」
「ナニまどろっこしい事してんのよ!
殺せばいいでしょ!平民なんていくらでも代わりがいるんだから!」
ムカッ!
いくらでもいないから!フィリップは一人しかいないの!
平民だからって命はそんなに軽くないからね!!
「デイジー様。
本日は夜も深くなりましたので、後日まとめてご報告をあげさせて頂きます。」
「おお!そうだな。
デイジーあまり夜ふかしをするものではないぞ。そなたの体が一番大事だからな。」
「子供扱いしないでよ!
まぁ夜ふかしは美容に悪いから休んであげるけど...
いい!ソイツは必ず殺すのよ!!」
バン!!
...あ、嵐が去った。
いろんな意味で凄い人だね。母親だけど関わりたくないや。母親だけど...
確かもう夜中くらい?でしょ。私ももう眠いよ。フィリップの背中暖かい。
自覚したら一気に眠気が...きた...
ぐぅ。
パチリ。
ん?まだ夜か。いろいろあったから寝付きが浅かったのかな?
ここどこだろう?
なんか地面が柔らかい。あっベットか。
暗くてよく見えないけど広い部屋のベッドの上で寝てたみたいだね。
「フィリップ。どこー?」
リリアナの隣でぐっすり寝ているよ。
リリアナは本当にフィリップが大好きだね。私も大好きだけど。
...さて、これからの事を考えなくちゃ。
とりあえず今の気になることは
まず、リリアナはデイジーの前の恋人の子供ではなく、首相さんの子供で王族になるらしい。
3年も物置に閉じ込めておいて、あなたは私の子だから王族です。
なんてふざけてるよね。権力者ってそんなものなのかな?
あと、なぜ息子?私、女だよね?どういうこと?
2つ目、離宮破壊はちゃんと調べていた。
宰相さんの言い方だと犯人は海の妖精だけど。正確には海の妖精に依頼した私だね。
3つ目、デイジーのこと
デイジーに対する3人の対応は表面上は丁寧で穏やかだったけど、あれ本心から大切なんて思ってないね。むしろ嫌ってるよね。元日本人なめんなよ。
それから、なぜかフィリップを殺したがっていた気がしたんだよね?
フィリップとデイジーの間で何がかあったのかな?
ふわふわふわふわふわふわ
ん?いま何かが頭の上にいたような?
見上げるとそこにパッションピンクのゾウさんが空中を漂っていた。
「海の妖精さん!」
ん?話せる?
ーおや?...何かが変わったようですね?ー
「変わった?
...私、話せてる!手も動く。体も動く!...ヨッシャー!」
思わずガッツポーズとっちゃったよ。いやー体が思い通りに動くっていいね。
っとそれよりも。お礼をしなきゃ。
「妖精さん。さっきは助かりました。ありがとうございます。」
ーふふふっ。いえいえ。お役に立てたなら幸いです。ー
「あの、いくつか聞いてもいいですか?」
ーええ。かまいませんが、それよりも逃げたほうがいいかもしれませんよ。ー
「どういうことですか?」
ーこう言うことです。ー
妖精さんが鼻を上げるとそこに大きな水鏡が出現した。
そこに写っていたのは数人の男達が暗い中、話している姿。
おい。どうする?
デイジー様から言われただろう。あのフィリップっていう平民を殺すんだよ!
くそっ。なんで俺たちがこんな目に!
落ち着け。
あいつが余計なことを話す前に始末しなきゃ俺たちも終わりだぞ。
ああ。そうだな。
あいつはいまどこに?
王宮の一室で休んでいるらしい。平民の分際でいい気なもんだ。
よし。行くぞ。
えぇ。今からかよ。もう夜遅いぞ。
だからだよ。明日になったらあいつが余計なことを話すかも知れないからな。
映像はそこで切れた。
「妖精さんこれって。」
ー今、この者達が話していたことです。-
目の前っで流れた映像が映画のように見えた。
...違う。これは現実。...凄く怖い。
私の大切な人を傷つけようとしている人達がいる。
「すぐここにフィリップを殺しに来るってことだよね。」
時間がない。
リリアナ一人では無理だから。助けを呼ぼう。
....待って。...誰に助けを求めたらいいの?
首相さん?どこにいるのかわからない。
警備の人?今までフィリップが平民だって傷つける人ばかりだよ。
...いや。そもそも。
助けてもらえるの?
体中から血の気が引く音が聞こえた。
「.....妖精さん。力を貸してもらえませんか?」
ーどうしたいのです?ー
「フィリップに、彼に危険がないところに行きたいです。