46
ブクマ、感想、評価ありがとうございます。
お待たせしました。3章が書き上がりましたので本日より毎日0時更新をさせて頂きます。
お楽しみいただければ幸いです。
前日の面会という名の話し合いで私は成人までここで暮らすこととなった。
「おはようございます。」
寝室のドアを開け応接室に出ればそこには側仕え三人組の内の二人がいた。
一人はリーダーのアピス・ラナンキュラス。
心の中で勝手につけたあだ名は完璧王子。キラキラスマイルが眩しい青年。
もう一人はフォルカー・ポトス。
この間、髪を梳かしてもらった時に不器用な人だってことに気が付いた。
残念ながらあだ名はまだない。
もう一人はリカ・グラジオラス。
いつもニコニコしていて私の服装とか身だしなみを整えてくれる人。
なんだけど今ここにはいないみたいだね。
私が寝室から出てきたことで、アピスさんとフォルカーさんが胸に手を当てて綺麗な礼をして迎えてくれた。
...ほわぁ。カッコいい。
二人とも所作が綺麗なんだよね。だからお辞儀一つでもここまで綺麗に決まってて格好いいんだと思う。
「おはようございます。リリアナ殿下。
朝食のご用意は出来ております。すぐにお召し上がりになりますか?」
「いただきます。」
私はお姫様なんだからお淑やかに、丁寧に!そう自分に言い聞かせながら笑顔で頷いた。
「では、こちらへどうぞ。」
...室内であっても絶対にエスコートしようとするよね。
エスコートの為に伸ばされたアピスの手をどうやって拒否しようかと悩んでいると脳内に声が響いた。
ーまーた、変な事をやっているっすか?-
うっきー君!おはよう。
ーおはようっす。-
うっきー君はリスザルの姿をしている森の妖精で私と契約をしている仲なんだよね。もう一人スイキンっていう海の妖精でパッションピンクなゾウさんも契約中なんだけどまだお休み中みたい。
室内を見回すとテーブルの上の鉢植えにもたれ掛かってくつろいでいるうっきー君がいた。
アピスさんに一言告げてから意識をして笑顔を作りうっきー君の側に近寄っていく。
「変な事ってなんのこと?」
なんで首をすくめて横に振るのさ!欧米人か!!
確かに私はお淑やかではないだろうけどさ。猫を被ったっていいじゃん!
心の中で言い返しているとうっきー君のもたれ掛かっていた鉢植えが目についた。
この花、何だろう?
小さい花びらが上に二つ、大きな花びらが下に三つある不思議な形の青紫色をした小さい花が沢山咲いているこんもりとした花が飾ってあった。
...見たことない花だよね?花びらが変な形してる。
「うっきー君、この花知ってる?」
「この花っすか?この花はロベリアって言うっす。」
「へー。ロベリアって言うんだ。可愛い花だね。」
「そうっすね。リリアナはこれから食事っすよね。俺、お茶が欲しいっす。」
「分かった。アピスさんに出してもらえるか聞いてみるね。」
そう言いながら手をうっきー君に差し出すと、うっきー君が私の手から腕を渡り肩に登ったけど今にも落ちそうで肩に爪が食い込むほど握ってくる。...痛い。
「リリアナは体が小さいっすから、乗りづらいっすね。」
「まだ3歳だからね。すぐに成長して大きくなるよ。」
「それは楽しみっすね。
...でもやっぱり乗りづらいんで歩くっす。」
そう言って肩から降りて食事が用意してあるテーブルの方へ歩き出した。
ちぇ。サルだけどナウシカごっこしようとしたのに...残念。
朝食を終えて応接室の大きなソファでお茶を飲みながらのんびりしていたらアピスさんに話しかけられた。ちなみにうっきー君は私が朝食を食べている時に自分のお茶を飲み終わったら何処かに出掛けてしまった。
「失礼いたします。
殿下のお召し物の作成の件ですか、デザイナーをこちらに呼んでもよろしいでしょうか?」
「...デザイナー?を呼ぶ?
首相さんはあの衣裳部屋の服は着なくてもいいって言っていたけど...?」
「あの衣装部屋の御衣装は無理にお召にならなくてもよろしいのですが、そうなりますとお召し物をお作りしなければ御衣裳が足りなくなります。」
?足りなくなる?あの衣裳部屋いっぱいの服が?
もしかして、衣裳部屋にある服すべてを着ないと思われてるんじゃない?
「えっと、あの衣裳部屋にある服すべてを着ないわけじゃなくて、着れる服をいくつか取り出せばそれで済みませんか?」
「いくつかでございますか?
失礼ですが、殿下。ワンシーズンの御衣裳はお召し替えも含めますと150着程が必要となりますが?」
ひゃっごじゅ!?150着!!何それ!?なんでそんなに必要なの?
この国は四季があるのは今までの経験上から知っているけど...
・・・まって、ワンシーズンって何日?
「あの、ワンシーズンって何日あるんですか?」
アピスさんが驚いた様子で瞬きを何度もしながら私を見つめてくる。
えっ。どうしよ。そんなに変な事を聞いたかな?
対処に困ってすぐそこにいたフォルカーさんに目を向けるとフォルカーさんが代わりに答えてくれた。
「90日にでございます。
失礼ですが、殿下はこの国の事をどれ程、御存じでございますか?」
「...この国の名前くらいしかまだ知らないです。」
少しだけ小さな声になりながらも答えた。
そうなんだよね。私は今まで生まれてから3年間、物置で生活をしていて世話をしてくれた人も文字の読み書きや計算のできない人だったし常識とかを聞く人も誰もいなかったんだよね。
前世の記憶の影響なのか会話とかでは不自由はしないんだけどね。
私の答えにアピスさんとフォルカーさんは顔を見合わせてからしばらくしてからアピスさんが質問を重ねてきた。
「世話をしていた者がいたと伺っておりますが、その者は殿下に何もお教えすることはなかったのですか?」
「...世話をしてくれていた人は文字の読み書きも計算も出来なくて、この国の事や私の事は外から聞こえてきた噂話でしか知りません。」
別に私が悪いわけではないのだけど話しているうちにドンドン目線が下がってうつ向いてしまう。
「大変申し訳ございません。
殿下は御聡明な為に私共の教えなど必要は思わず。」
アピスさんの謝罪の言葉に合わせてフォルカーさんも深い謝罪の為の礼をした。
...聡明?誰が?...自慢じゃないけど賢くはないよ。
いや。違う!!それよりも!
「かっ顔を上げてください!謝罪なんて必要ありません!
それに聡明なんかじゃありません!
ホントにお願いですから顔を上げてください。」
前世の一般市民に大の男二人が揃って平身低頭するのはきつい!!
焦って顔を上げる様に何度も言うが顔を上げてくれず、しばらくして気が済んだのかようやく二人が顔を上げてくれた。
あー。変な汗かいた。
「ありごとうございます。殿下。
では、本日はこの国や殿下の事をお話させて頂くというのはいかがでしょうか?」
アピスさん!GJ!!それは私が一番知りたかったことだよ!!
「よろしくお願いします。」
私は満面の笑みで大きく頷いた。




