番外 森の妖精王の話
2章に入らなかった森の妖精王のお話です。
番外として置いておきます。
昔の話だ。
世界が生まれた時からこの世界を見てきた俺は刹那を懸命に生きる者達に興味を持った。
人が己と違うものを恐れるのはなんとなくわかっていた、だから、人に似ている姿をして人の住む場所に行ったんだ。妖精とは違い一日一日を懸命に生きる人々の中での生活は新鮮なものだった。
その生活の中で一人の少年と出会った。
優れた者ではなかった、むしろ要領の悪い少年だった。何度も話をし遊び俺達はいつかしか友人と呼べる存在になっていた。
ある時、少年は意識の中で冒険に憧れてる事を知った。
自慢ではないが俺の城は昔から御伽噺にされているからな。だがら、冒険ではないかもしれんが驚かせようと寝ている隙に連れて行ったんだ。
起きた少年に自分が妖精王である事と、俺の城、母なる大樹に連れてきたことを話したんだ。
喜ぶと思っていた。目を輝かせいつものように笑ってくれると。だが、
バケモノ!!僕を家に返してよ!!
僕はそんな事一度も望んでない!!
そう言ったきり意識の中は俺への罵倒で埋め尽くされただ泣き続けた。
何度も落ち着かせようといろいろ手を尽くしたが、俺にとってはほんの少しの間に少年は青年になり、そして気が付けば心を壊していた。
そんなことがあってからは人の生活をたまに覗くだけにしていた。
あの日もテキトーなところで覗こうとリラの木を通ったら騒がしい奴がいた。
言い方がまるで俺が見えているようで近づいたら目が合った上に会話が出来た。
こいつが森の妖精王がなんだか理解していないことはすぐに分かったんだか、人は普通、木から出てきた奴に遊べとは言わないだろ。いろいろ大丈夫かこいつ?
だが、久々に人の子に遊びに誘われて嬉しかったのも事実。あとで恐れられるとしても、少しの間だけでも遊べたら。そんな思いで母なる大樹に連れて行くために抱き上げて驚いた。
どういうことだ。人の子にもう一つの意識があるなんて聞いたことないぞ。
人の子にブンリダケを飲ませて別々に分けて検査をしてみれば。
騒がしい子は俺達が見えるし話せる珍しい者で、しかもブンリダケの副作用が全くでないで元気に遊戯室を遊び回っていた。
静かな子は俺達が見えないし話せない者だった。
これには俺も驚いた。まさか同じ体で同じ魂に入っている意識が見えるものが違うとはな。ただ、この子は意識はあってもベッドから体を動かせないほどに弱っていた。
随分と遊戯室で遊び回ったのだろう汗だくな人の子を休憩室に連れて行ったら突拍子もない事を言われた。忘れたって...今まで長い時の中で俺にそういう口の利き方をした人はいないし、意識が読めることを忘れてたやつもいない。あの時は、久々に腹を抱えて笑ったよ。
長く生きるものだな。また、こんな面白い奴に出会えるとはな。
そう思ってからは早かった。リリアナを助けるために森の妖精を動かしたり、魂の修復の準備をしたり、まぁ多少意識を読み取ってリリアナが悲しまないように嘘をついたが...
その甲斐あってか、リリアナは生きている。
魂の回復の為に城に連れて行けなかったりした問題は起きたが生きていればそれでいい。
リリアナにも指摘されるほど俺は機嫌が良かったらしいが、当然だ。
今度は助けられたんだからな。
久しぶりの友人だ。
今度、遊びに行くときはリリアナが気に入っていた金色の果実でも持っていくか。




