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森の妖精王の要求は審議を通リ現在、休憩時間なんだけどもの凄く居心地が悪い。
「しかし、大変申し訳ございませんでした。曾孫を思うあまり森の妖精王様にあのような口を利くなどと。」
「気に病むな。妖精王である俺の考えを人ごときが分かるはずがない。
それにリリアナはそなた達と顔を合わせることなどなかったというからな。
当然のことだ。」
「そう言われると私もその子の親として安堵するばかりです。
ですが、やはり妖精様の域に人の子は立ち入れない御様子。その子にも妖精様の事はよく言い聞かせましょう。」
上から曾おじい様、森の妖精王、首相さん。
首相さんも曾おじい様も森の妖精王も顔はにこやかに笑っているのに目が一切、笑ってない。
怖い。
うん。無理。やっぱり私には無理。
...森の妖精王は話に夢中みたいだし果物でも食べようかな。
何にしようかな?今日の気分は...オレンジかな?ドレスもオレンジだしね。
ローテーブルに置いたままになっていたカゴを二つ持って、部屋の隅で待機しているアピスさん達の元に歩いていく。
「いかがなさいましたか?」
アピスさんがすぐに気づき声を掛けてきた。
「森の妖精王からこれを頂きました。果物を剥きたいのでナイフはありますか?」
「かしこまりました。ではすぐにご用意してお持ちいたします。」
あれれー?話が微妙につながってないぞ?しかも追い払われているような?
...食べられるならいっか。
「じゃあ、オレンジをお願いします。あっ!ジュースだけは先に欲しいです。」
そう言ってアピスさんに渡したカゴから花のジュースを取り出した。
「私も頂きたいです。」
私の上から聞こえた声は誰?
上を見上げるとテンション高めエルフさんとすぐ側に男の人にしては小柄で可愛い人がいた。
「ユーノ。毒見もしていないものを飲むな。」
「森の妖精王様が毒を入れる必要などないではないですか。ここにいる者達などすぐにひねり殺せるお方ですよ。」
テンション高めエルフさんはユーノさんって言うのか。
ユーノさんはそこまで背は高くはないが、刺繍を刺した真っ白な厚手のローブを羽織っていて、輝く様な銀色の髪を緩く三つ編みにしていても床に着くほど長く、透き通る緑の瞳と美しい顔立ちをしていた。
美人さんだね。男の人に美人という表現が正しいのか分からないけど非常に美人だ。
もう一人は小柄でフワフワの茶色のくせ毛のショートで可愛い顔立ちをしているが、軽量化した鎧みたいなのを着て腰に剣を差している男の人だ。この人あれだ。あれに似てる。
大きな赤茶色の瞳とフワフワの髪の毛でラブラドールに似てるんだ。可愛い。
「リリアナ。私達にもその花のジュースを頂いてよろしいですか?」
ユーノさんがわざわざ膝をついて私の目を見て聞いてきた。
「どうぞ。」
いきなりだったから声が小さくなっちゃったけど手に持っていたジュースの花の蕾をユーノさんに差し出した。
パシン!
?...えっと。なぜにラブラドールさんはユーノさんを叩いたの?
渡しちゃダメだった?
どうすればいいのか分からずに視線がユーノさんとラブラドールさんを何度も行ったり来たりする。
「痛いですね。何をするのですか。」
「先に挨拶をしろ。リリアナはお前が誰か分からないだろうが。ったく。
リリアナ。起きている時に会うのは初めてだな。俺は、アザリー。
ツヴァイの第二夫君だ。君の義理の父になる。よろしくな。」
...義理の父??私、結婚してないよ?
第二フクンってもしかして、夫君って書くの?男同士で結婚してるの?
「そういえばそうでしたね。申し遅れました。
私はユーノ。第四夫君になります。これからよろしくお願いしますね。」
第四夫君...夫が四人!?えー!首相さんってそういう人なの?
三年間生きていて驚愕の事実!!それが普通の世界なの!?
「おーい。リリアナ。大丈夫か?」
はっ。驚きすぎてどっかに飛んでた。
「だ、大丈夫です。あっジュースですよね。はい、どうぞ。」
アピスさんが持っているカゴから花のジュースを取り出してアザリーさんにも蕾を手渡した。
「ありがとう。...これどう飲むんだ?」
「あっ。えっと。そのまま少し持っていてください。花が開きますから。」
「このま...」
蕾が開き始め少しだけ開いたグラスの様な形で固まった。
「開きましたね。どうぞ。お召し上がりください。」
驚いた様子のアザリーさんに声を掛けて勧めてみる。本当に美味しい物は人に勧めたくなるんだよね。
「ああ。頂こう。」
アザリーさんがゆっくりグラスに口を付けた。
「これ、美味しいですよね。このような植物見たことありませんが一体どこで栽培されているのでしょう?リリアナは知っていますか?」
アザリーさんが飲んでる時にユーノさんから話しかけられた。
「ああ。美味いな。こんなジュースは初めて飲んだ。」
「えっと、前に森の妖精王のお城でしか咲かない珍しい花だって言ってました。」
「「妖精王の城!?」」
ハモった。この間の私とうっきー君レベルじゃないくらいにキレイなハモリだよ。
そんなに驚くことなの!?
「わっ私なんというものを口に...神の食べ物を口にするなどという...」
「困難に立ち向かいし者のみが登城を許されるという...あの伝説の城!」
えっどうしよう?二人とも自分の世界に入ったようでアザリーさんは暑苦しく燃えてるし、ユーノさんは落ち込んでるのかな?妖精王の城がそんなにショックなの?森の妖精王だってお家ないと困るでしょうよ。...ホームレス妖精王。
だめだ。これ想像しちゃいけないやつだ。...ぷっ。
「リリアナ!さっさと戻ってこい!!」
ソファから森の妖精王が私を呼んでる。
ヤバっ!バレたかな?
「ようやく戻ってきたか。何してたんだ?」
「うん?果物を剥いてもらってた。」
良かった。バレてない。
「...そうか。座るだろ?」
当然のように聞いてきたが。
「座らない。そこ座ると食べづらい。」
とはいっても立ち食いはマズいかな?と考えている最中に森の妖精王に抱き上げられて膝に座らせられた。
「ちょっと!」
「食わせてやるよ。なに気にするな。
城がなくてもリリアナくらいは遊んでやれる。」
やっぱり聞いてた!!抗議もむなしくアピスさんから切った果物が乗っているお皿を受け取った森の妖精王はオレンジをフォークで私の口元まで運んできた。
「一人で食べられるのに...」
一言言ってから口を開けてオレンジを大人しく頬張った。
うっうぅぅ。恥ずかしい。なんでこんな人前で...
ジューシーで甘いし程よい酸味があって美味しい。一粒一粒もしっかりしてるから口の中ではじけて楽しいや。これで作ったゼリーとか超美味しそう。
でも、やっぱり恥ずかしい。
ふと、顔を上げると首相さん達にジッと見られていた。
恥ずかしいんだから見ないでよ!!
...もしかして...食べたいのかな?
「果物、たべますか?」
聞いたみた。
「いや。いい。...話を始めてもいいか?」
首相さんが落ち込んだ様子で再開を告げた。




